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「世界」の小沢論文と国連の川端論文の背景2007年10月12日

小沢代表の「世界」11月号の論文が話題を集めています。

 

実は、このやり取りには、私もずっと関わってきましたので、その背景を披露させて頂きます。

 

これは、8月7日の小沢代表・シェーファー駐日アメリカ大使会談における国連決議に関するやりとりについて、私が意見を求めた国連の川端さんが、それを敷衍して小沢理論に対する国際社会の反応を予測して書いたのが「世界」10月号の論文です。民主党自身の安全保障政策と覚悟が必要だという意図であったが、小沢代表はそれに応えて、踏み込んだ提案を正面から盛り込んで書かれたのが、11月号の論文です。

 

国連の直接決議がないことは、この川端論文や他の国連関係者によって明らかです。(下のメモを参照下さい。)「国連の認知はあるが、mandate(授権)はない」ということです。

外務省内の良識派ですら批判的な国連決議への「謝意」の挿入

や、各国の駐日大使による記者会見などの「やらせ」や一種の世

論操作が行われているのです。「国連決議がないから反対」とい

う民主党の論拠を「袋小路」に仕立てての政府側からの反転攻勢

です。イラク作戦への給油転用が判明しても、米国政府などに手

を回し、責任回避と水掛け論で凌ぎ、憲法解釈や国連決議との関

係も内閣法制局を利用して、水掛け論で凌ぐ体制作りです。

 

この間、「給油停止は日本の国益に反する」というキャンペーンが繰り広げられてきましたが、ポイントは「アメリカによるアフガニスタン戦争とイラク戦争が一体化しているということで、そのアメリカによる戦争とは異なる国連の下での真のテロとの戦いや平和活動に積極的に参加すべきである」ということです。そして、アメリカ軍による給油転用疑惑は、その疑惑否定の立証責任が両国の政府にある、ということです。

 

もうひとつの誤解はアメリカによる「自由の不朽作戦(OEF)と多国籍軍(ISAF)はその構成や法的根拠が大きく異なるということです。

OEF:敵の殺害・拘束を目的とする米軍による「報復的、攻撃   

  的な軍事行動」。多くの市民が巻き添えで死亡。捕虜に対    

  する拷問も問題となっている。国連への報告もなし。

ISAF:アフガニスタンの和平と復興のための「国連警察的な治

  安維持部隊」。軍閥、麻薬組織、盗賊集団なども取り締まる「防衛的な治安活動」が中心で、国連にも定期的に報告している。スウェーデンなど、国連決議があるISAFには参加しているが、決議が無いOEFには参加していない国も多い。

 

 

「国連の認知はあるが、mandate(授権)はない」のは、以下の通りです。

 

1 シェーファー大使が、8月7日の会談でアフガニスタンでの対テロ戦争が「国連が認めている活動だ」と言及した安保理決議1746は、『米国の個別的自衛権の行使としての対テロ戦争』を認知しているのであって、『国連活動の一環としての戦争』として認めているわけではない。

 

安保理決議1746(2007年3月23日採択)

シェーファー大使はこの決議に言及して、アフガニスタンでの対テロ戦争が「国連が認めている活動だ」と述べた。しかし、この決議自体は、そもそも和平プロセスの結果生まれたカルザイ政権を支援するための決議で、対テロ戦争に直接関わるものではない。決議は本文の第25条項で対テロ戦争を遂行する「不朽の自由作戦Operation Enduring Peace coalition」に言及しているが、これはカルザイ政権の抵抗勢力としてのタリバンへの対応に関する文脈であって、対テロ戦争そのものへの協力要請とは言えない(同決議の前文9を参照)。正確にいうとこの決議は「米国の個別的自衛権の行使としての対テロ戦争」を認知しているのであって、「国連活動の一環としての戦争」として認めているわけではない。

 

2 小沢代表による「アメリカ中心の作戦は、直接、国連で認められたものではないという認識」の根拠としての国連安保理決議

 

安保理決議1368(2001年9月12日採択)

この決議は、9・11テロの翌日に米国の要請で採択された。決議は本文の第1条項で、9・11テロ事件を「国際の平和と安全に対する脅威」と認定したうえで、第3条項で全ての国家に対して「事件の実行者、首謀者と支援者」を一致協力して緊急に裁きの場に引き出すことを要請すると共に、第4条項で国際社会に対してテロ行為を防止しかつ抑圧(suppress)するために一層の努力を払うよう要求している。また、同決議は第5条項で、9・11テロを含むすべてのテロと闘うために、安保理が国連憲章に基づいてすべての手段をとる用意かあることを表明した。

パウエル米国務長官は当時、決議の趣旨が、国連憲章第51条が認める個別的自衛権の発動を公に認知することであると明言している。米国が湾岸戦争のときのような安保理が認可する多国籍軍の編成を求めなかったのは、多国籍軍の編成や運営にかかる時間と労力を省くためであったといわれる。(実際、米国は決議採択から一ヶ月足らずの間にタリバンへの攻撃を開始した。) これに対して、北大西洋条約機構(NATO)は発足以来はじめて、集団的自衛権を発動して米国主導の対テロ戦争に参加した。加盟国である米国への攻撃は、NATO全体への攻撃であるとして、域外での戦闘行為に加わった。

同決議はしかし、「国連による強制的措置を定める憲章第7章を発動していない。」アフガニスタンにおける対テロ戦争は、ボン和平合意の履行を支援する多国籍軍である国際治安支援部隊(ISAF)とは全く関係がない。

 

 

3 小沢代表が参加を示唆した国際治安支援部隊(ISAF)に関する決議

 

安保理決議1386(2001年12月20日採択

この決議は、同月5日のボン和平合意の締結を受けて、合意の履行を支援するための多国籍軍であるISAFを設立する目的で採択された。ISAFの展開は、ボン和平合意の付帯文書I(国際治安部隊)の中で合意の署名者によって要請されている。同決議は本文の第1条項で、和平合意に基づく国連活動とISAFの関係を明確に規定している。同決議は第2条項で、加盟国に対してISAFへ兵員や機材などを供給するよう要請した。安保理は憲章第7章を発動して、同決議を採択した。

 

 

 

 

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