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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2012年4月27日開催分)2012年06月04日
本議事要旨は、日本銀行法第2 0 条
第1項に定める「議事の概要を記載し
た書類」として、2012 年5月22、23
日開催の政策委員会・金融政策決定会
合で承認されたものである。
(開催要領)
1.開催日時:2012 年4月27 日(8:59~12:41)
2 . 場 所:日本銀行本店
3.出席委員:
議長 白川方明 (総 裁)
山口廣秀 (副 総 裁)
西村淸彦 ( 〃 )
宮尾龍蔵 (審議委員)
森本宜久 ( 〃 )
白井さゆり ( 〃 )
石田浩二 ( 〃 )
4.政府からの出席者:
財務省 三谷光男 財務大臣政務官
内閣府 大串博志 内閣府大臣政務官
(執行部からの報告者)
理事 山本謙三
理事 中曽 宏
理事 雨宮正佳
理事 木下信行
企画局長 門間一夫
企画局審議役 梅森 徹
企画局政策企画課長 神山一成
金融市場局長 青木周平
調査統計局長 前田栄治
調査統計局経済調査課長 関根敏隆
国際局長 大野英昭
(事務局)
政策委員会室長 飯野裕二
政策委員会室企画役 橘 朋廣
企画局企画調整課長 千田英継
企画局企画役 上口洋司
企画局企画役 峯岸 誠
Ⅰ.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要
1.最近の金融市場調節の運営実績
金融市場調節は、前回会合(4月9、10 日)で決定された方針1の
もとで、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を行い、
金融市場の安定確保に万全を期した。こうした中、無担保コールレー
ト(オーバーナイト物)は、0.06%台後半から0.08%台前半の間で
推移した。
オペ結果をみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、強い
資金余剰感が続いており、6か月物の固定金利オペで札割れが続いて
いるほか、国庫短期証券買入れでも札割れが生じている。
2.金融・為替市場動向
短期金融市場では、金利は、長めのゾーンを含め、低位で安定的に
推移している。GCレポレートは、0.1%程度で推移している。ター
ム物金利をみると、短国レートは、長めのゾーンを含め、0.1%程度
で安定的に推移している。長めのターム物の銀行間取引金利は、横ば
い圏内の動きとなっている。
長期金利は、米国経済指標の予想比下振れや、スペインやイタリア
の財政悪化への懸念、日本銀行の金融政策を巡る思惑などから、0.9%
程度まで低下している。日経平均株価は、やや神経質な動きとなって
いるものの、期間を通じてみれば、米国株価の底堅い動きに支えられ
るかたちで、9千円台半ばで横ばい圏内の動きとなっている。REI
T価格は、振れを伴いつつも、底堅く推移している。為替市場をみる
と、円の対米ドル相場は、一時80 円台半ばに上昇する動きがみられ
たものの、その後は戻しており、足もとは再び81 円を挟んだ狭い範
囲での動きとなっている。
3.海外金融経済情勢
世界経済は、全体としてなお減速した状態から脱していないが、改
善の動きもみられている。
米国経済は、緩やかな回復を続けている。雇用情勢の緩やかな改善
1 「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」を受けて、個人消費は増加しているが、バランスシート問題がなお重石となっていることもあって、その回復ペースは、基調として緩やかなものとなっている。住宅投資については、住宅価格が軟調に推移する中、なお低水準で推移している。一方、輸出は増勢を続け、設備投資は増加基調を維持している。物価面では、財市場や労働市場の緩和的な需給環境が引き続き物価押し下げ圧力として作用するもとで、前年にエネルギー価格が大幅に上昇した影響から、総合ベースの消費者物価の前年比はプラス幅が縮小している。一方、コアベースの消費者物価の前年比は、衣料品の価格上昇に一服感がみられるが、家賃・帰属家賃が引き続き緩やかに上昇していることから、2%台で横ばいとなっている。
欧州経済をみると、ユーロエリア経済は停滞感の強まりに歯止めが
かかっている。輸出は、米国や新興国向けを中心に持ち直しの動きが
みられている。民間設備投資は減速し、個人消費も、概ね横ばいとな
っている。家計や企業のマインドは、周縁国では悪化した状態が続い
ている一方、ドイツやフランスなどで持ち直しの動きもみられている。
こうしたもとで、生産は減少しているが、そのペースは幾分緩やかに
なっている。物価面をみると、緩和的な需給環境などが物価押し下げ
圧力として作用しているが、総合ベースの消費者物価の前年比は、こ
のところの原油価格の上昇もあって高めの水準で推移している。この
間、英国経済は、横ばい圏内の動きとなっている。
アジア経済をみると、中国経済は、幾分減速しつつも、高めの成長
を続けている。輸出が減速していることに加え、内需でも、耐久財消
費や民間不動産投資に減速感が窺われる。もっとも、良好な雇用・所
得環境を受けて、全体としてみれば、個人消費や固定資産投資は、高
めの伸びを続けている。こうしたもとで、生産の増加ペースは幾分鈍
化している。インド経済は、減速に歯止めがかかっている。NIEs、
ASEAN経済は、持ち直しつつある。内需は、設備投資に幾分減速
感が窺われる一方、個人消費はなお底堅く推移している。輸出や生産
は、先進国向けの輸出が下げ止まる中、タイの洪水からの復旧もあっ
て、持ち直している。物価面をみると、これらの国・地域の多くでは、
労働需給の逼迫を受けた賃金上昇などを背景に、コアベースのインフ
レ率は高めで推移している。一方、総合ベースでは、生鮮食料品の高
騰一服などから、伸び率が緩やかに縮小している。
海外の金融資本市場をみると、ギリシャを巡る情勢は、総じて小康
状態にある一方、スペインやイタリアでは、今後の財政再建や構造改
革の実現性を巡り、市場の懸念が再燃しつつある。欧州各国国債の対独スプレッドをみると、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルのスプ
レッドは、概ね横ばいとなっている一方、財政再建の進捗に対する不
透明感や金融システム不安を抱えるスペインや、労働市場改革を巡る
不確実性が残るイタリアのスプレッドは、再び拡大してきている。欧
州の株価は、スペイン金融機関に対する懸念に加えて、フランス大統
領選挙の決選投票を控えた不透明感などもあって、銀行株を中心に下
落している。投資家のリスク回避姿勢が強まる中で、米国やドイツの
長期金利は低下しており、新興国の株価や通貨は、総じて弱含んでい
る。そうした中にあっても、欧州系金融機関の資金調達環境は、総じ
て落ち着いている。ECBの3年物オペによる大量の資金供給によっ
て、ユーロの資金余剰感が残るもと、ユーロのターム物金利の対OI
Sスプレッドは横ばいで推移している。ドルの資金調達環境について
は、ドルのターム物金利の対OISスプレッドが横ばい圏内で推移す
る中、ベーシス・スワップ(ユーロ/ドル)でみたドル調達プレミア
ムは幾分低下している。米国の株価は、一部の経済指標が市場予想を下回ったこともあって、小幅に下落している。
4.国内金融経済情勢
(1)実体経済
輸出について、3月までの実質輸出の実績をみると、10~12 月に
前期比- 2.8%の減少となったあと、1~3月の前期比は-0.1%とな
り、横ばい圏内にとどまっている。
公共投資については、工事の進捗を反映する公共工事出来高は、10
~ 12 月に前期比-0.6%の減少となったあと、1~2月の10~ 12 月
対比は+ 4.6%と増加に転じている。発注の動きを示す公共工事請負
金額は、10~ 12 月に前期比+3.6%の増加となったあと、1~3月の
前期比は+7.8%の大幅増となっている。
国内民需については、1~3月の中小企業の設備投資実施割合が上
昇するなど堅調に推移していることを示唆する指標が多く、企業マイ
ンドにも改善の動きがみられ始めている。
3月の鉱工業生産は、生産予測指数の実現率がやや大きめのマイナ
スとなり、小幅の増加にとどまった。この結果、1~3月は季節要素
の歪みを修正した実勢では前期比概ね横ばいで着地した。
物価面をみると、国際商品市況は、足もとではやや反落しているが、
なお一頃に比べると高い水準にある。国内企業物価を3か月前比でみ
ると、上昇幅が拡大している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比
は、概ねゼロ%となっている。
(2)金融環境
わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。
インフレ予想については、短期、中長期のいずれについても、家計、
エコノミスト、マーケットの指標とも概ね横ばい圏内で推移している。
資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられており、銀行貸出の前年比は、プラス幅を緩やかに拡大している。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にある。
Ⅱ.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要
1.経済情勢
国際金融資本市場の動向について、委員は、短期金融市場を中心と
して、総じて落ち着いているとの認識を共有した。委員は、欧州債務
問題の解決が道半ばであるもとで、スペインやイタリアの財政悪化が
意識されているものの、ECBによる大量の資金供給など、各国の政
府や中央銀行が様々な施策を講じてきている結果、欧米の金融機関の資金調達環境は改善しており、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは一頃よりも低下しているとの認識で一致した。そのうえで、委員は、ギリシャの総選挙やフランス大統領選挙の決選投票などを控え、欧州政治情勢を巡る不透明感が強いこともあり、当面の市場動向については注意深くみていく必要があるとの見方を共有
した。海外の経済情勢について、委員は、全体としてなお減速した状態から脱していないものの、最近では、米国経済の緩やかな回復が続くなど、改善の動きがみられているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成長率は再び高まっていくと見込まれるとの見方を共有した。
米国経済について、委員は、緩やかな回復が続いているとの認識で
一致した。この点に関連して、多くの委員は、①堅調な企業業績を背
景に、設備投資が増加基調を維持していること、②雇用の緩やかな改
善が続く中で、個人消費も緩やかな改善の動きを続けていること、③
企業向け貸出の伸びが続いており、不動産向け貸出も前年比増加に転じてきていること、などに言及した。先行きについて、委員は、緩和
的な金融環境に支えられ、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。ユーロエリア経済について、委員は、停滞感の強まりに歯止めがかかっているとの認識を共有した。委員は、欧州債務問題の根本的な解決を図り、欧州経済の安定と持続的な成長を実現していくためには、債務問題を抱える各国政府が、財政健全化に加えて、産業競争力強化を企図した労働市場改革など、抜本的な構造改革に粘り強く取り組むことが不可欠であるが、こうした改革が成果を上げるにはかなりの時間を要するとの認識で一致した。このような議論を踏まえ、委員は、ユーロエリア経済の先行きについて、緊縮財政の継続や金融機関による資産圧縮の動きなどを背景に、当面、停滞色の強い状態が続くとの見方を共有した。新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実質購買力の低下や金融引き締めの影響などから、幾分減速しているが、一部の国では、インフレ率の低下や輸出の持ち直しなどから、改善に向けた動きがみられているという認識を共有した。中国経済について、委員は、輸出の減速に加え、既往の金融引き締めの影響もあって、耐久財消費や民間不動産投資に減速感が窺われるが、雇用・所得環境は良好であり、全体としては、幾分減速しつつも、内需を中心に高めの成長を続けているとの見方で一致した。そのうえで、一人の委員は、このところみられている弱めの動きが一過性のものにとどまるかどうか注視していきたいと述べた。新興国・資源国経済の先行きについて、委員は、中国経済のダウンサイド・リスクは意識されるものの、全体としては、インフレ率低下に伴う家計の実質購買力の回復や、金融緩和の効果波及等により、再び成長率が高まっていくとの見方で一致した。
わが国の金融環境について、委員は、緩和の動きが続いているとの
見方で一致した。
短期金融市場について、委員は、日本銀行が強力な金融緩和を推進
していることや、金融機関のバランスシートの健全性が保たれている
ことなどを背景に、きわめて安定しており、こうしたもとで、固定金
利オペなどで札割れがみられているとの見方で一致した。委員は、C
P市場や社債の発行環境は良好な状態を続けており、企業の資金調達コストも緩やかに低下しているとの認識を共有した。金融環境の先行きについて、委員は、緩和の動きが続き、国内民間需要が自律回復に向かう動きを支えていくと予想されるとの見方で一致した。
以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、
わが国の経済情勢に関する議論が行われた。設備投資や個人消費について、多くの委員は、機械受注の増加、中小企業設備投資実施割合の上昇、企業や家計のマインド改善などを挙げながら、改善方向の動きが増加していると指摘した。輸出や生産について、多くの委員は、い
ずれ持ち直しに転じるとみられるが、足もとの数字は、引き続き横ば
い圏内にあると述べた。こうしたやり取りを経て、委員は、わが国経
済は、なお横ばい圏内にあるが、前向きの経済活動に拡がりがみられ
るなど、最近では横ばいから持ち直しに向かう動きが明確になりつつ
あるとの認識で一致した。
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、当面、ゼ
ロ%近傍で推移するとの見方で一致した。一人の委員は、購入頻度別
の消費者物価指数の動きをみると、いずれの分類においても、物価下
落率が縮小するか、ないしは上昇に転じてきており、物価下落圧力は
着実に後退していると指摘した。
2.経済・物価情勢の展望
経済情勢の先行きの中心的な見通しのうち、2012 年度について、
委員は、輸出が増加基調に復するほか、復興需要の増加が公的需要・民間需要の両面で、年度を通じて景気の押し上げに寄与すると考えられるもとで、生産から所得・支出への波及メカニズムも徐々に強まるため、比較的高い成長率となることが予想されるとの見方で一致した。
2013 年度について、委員は、復興需要による景気押し上げ効果が徐々
に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では幾分鈍
化するものの、海外経済が高めの成長を続けるもとで、潜在成長率を
はっきりと上回る成長が続くとの認識で一致した。1月の中間評価時
点の見通しとの比較で2012 年度を中心に幾分上振れる点について、
委員は、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクが低
下し、市場環境がやや改善したことなどによるものとの認識を共有し
た。
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の先行きについて、委員は、
中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マク
ロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間後半にかけて0%
台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である
1%に遠からず達する可能性が高いとの見方で一致した。前提となる
国際商品市況について、委員は、地政学リスクの高まりなどから原油
価格を中心に強含んでおり、先行きについても、新興国の経済成長に
伴う食料・エネルギーの需要拡大などを背景に、基調的には緩やかな
上昇傾向を辿るとの想定を共有した。1月の中間評価時点の見通しと
の比較で幾分上振れる点について、委員は、経済見通しの上方修正に伴うマクロ的な需給バランスの改善に加えて、為替円高の修正や原油価格上昇の影響によるものとの認識を共有した。
委員は、こうした中心的な見通しに対する上振れ・下振れ要因につ
いても議論を行った。まず、実体経済面の上振れ・下振れ要因として、委員は、①国際金融資本市場や国際商品市況の影響を含めた、海外経済の動向、②復興関連需要を巡る不確実性、③企業や家計の中長期的な成長期待の動向、④わが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題、の4点を挙げた。海外経済の動向を巡るリスクについて、委員は、①欧州債務問題の解決にはなお多くの課題が残っているもとで、国際金融資本市場における緊張が再び高まり、株安や円高を伴うかたちで、世界経済ひいてはわが国経済の下押し圧力となる可能性、②米国経済について、バランスシート調整の進捗度合いや財政政策の帰趨を巡る不確実性が高く、景気回復のペースが想定以上に緩やかなものとなる可能性、③新興国・資源国について、一部国では根強いインフレ圧力がみられるもとで、物価安定と成長が両立するかどうか、なお不透明感が強く、成長率が下振れる可能性、などを指摘した。複数の委員は、本年夏における電力供給が生産活動への制約となる可能性にも十分注意する必要があると述べた。
物価見通しの上振れ・下振れ要因について、委員は、①企業や家計
の中長期的な予想物価上昇率の動向、②輸入物価の動向、の2点を指摘した。企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について、一人の委員は、中長期の予想物価上昇率は1%程度で安定的に推移しているものの、今年度や来年度の予想物価上昇率はゼロ%近傍と低めの推移となっているため、物価上昇率が中長期の予想物価上昇率に収束するペースが遅れるリスクや中長期の予想物価上昇率自体が下振れするリスクがあると指摘した。輸入物価の動向について、複数の委員は、中国における賃金上昇の動きが、輸入物価の上昇を通じて、わが国の物価の上昇圧力となる可能性があると述べた。
こうした経済・物価見通しに対する上振れ・下振れ要因について、
委員は、内外経済に関する不確実性は大きく、とりわけ、国際金融資
本市場や国際商品市況の影響も含め、海外経済の動向がわが国経済に与える影響については、引き続き注意していく必要があるとの認識を共有した。以上を踏まえ、委員は、経済・物価情勢について2つの「柱」による点検を行った。
まず、第1の柱、すなわち、先行きの経済・物価情勢について、委
員は、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しを総合的に
評価すると、消費者物価の前年比は、見通し期間後半にかけて0%台
後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%
に遠からず達する可能性が高いと考えられ、やや長い目でみれば、日
本経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性が高いとの見方を共有した。
次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点を踏まえつつ、金融
政策運営の観点から重視すべきリスクとして、委員は、景気面では、
①欧州債務問題に端を発するテイル・リスクは低下しているが、国際
金融資本市場や海外経済を巡り、なお大きな不確実性が存在する、②
国際商品市況の一段の上昇が、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下などを通じて、国内民間需要を下押しする可能性がある、③復興関連需要については、今後の強まり方や経済効果などを巡って不確実性がある、との認識を共有した。また、委員は、④中長期的な成長期待について、成長力強化への取り組み次第では、上振れ・下振れ双方向の可能性があること、⑤財政の持続可能性確保へ向けた取り組みも、経済動向に大きな影響を及ぼし得ること、⑥物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを注視する必要があること、などを改めて確認した。
Ⅲ.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要
委員は、以上の2つの柱に基づく点検を踏まえ、当面の金融政策運
営に関する議論を行った。まず、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0 ~ 0 .1%程度で推移するよう促す」という現在の方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。
次に、わが国経済は、中心的な見通しとしては、物価安定のもとで
の持続的成長経路に復する蓋然性が高いとみられるが、依然として
様々な不確実性があることを踏まえ、委員は、そうした見通しをより
確かなものとするため、この段階で金融緩和を一段と強化することに
より、経済・物価にみられている回復への動きをしっかりと支えてい
くことが適当との認識で一致した。具体的には、委員は、資産買入等
の基金の増額を図ることなどを通じて、長めの金利およびリスクプレ
ミアムの低下等を促すことが適当との考えを共有した。そのうえで、
委員は、今回の措置は、これまでの措置の累積的な効果と併せて、日
本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復することを、さらに
確実にすることにつながるとの認識を共有した。また、一人の委員は、
日本銀行による実質的なゼロ金利政策等の推進は、景気の改善につれてその効果が強まっていくと見込まれると述べた。
具体的な資産買入れの対象資産について、委員は、一頃と比べれば
投資家のリスク回避姿勢が緩和しており、社債やCPの発行環境も総
じて良好な状態を続け、企業の資金調達が円滑に行われている現状などを踏まえると、長期国債を主体とすることが適当との認識で一致し
た。そのうえで、リスク性資産の買入れについて、委員は、金融資産
の市場動向や日本銀行の買入れ余地、日本銀行の財務の健全性との関連などを踏まえたうえで検討することが適当との見方を共有した。
複数の委員は、日本銀行の国債買入額がきわめて多額となっている
ことを踏まえると、日本銀行の強力な金融緩和が財政ファイナンスと
誤解されることのないよう、細心の注意を払う必要があると付け加え
た。この点に関し、委員は、わが国の財政状況が厳しく、そのもとで
日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の
持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政
策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要であるとの認識を共有した。
こうした議論を踏まえ、資産買入等の基金の増額の具体的な検討を
行うため、議長は、買入対象となっている金融資産の市場動向や日本
銀行の買入れ余地、日本銀行の財務の健全性との関連などについて、執行部に説明を求めた。議長の指示を受けて、執行部は以下のとおり説明を行った。 現在、基金が買入対象としている金融資産の市場規模、特定企業への信用集中を防ぐ観点から実施している措置との関係、市場環境などからみると、国庫短期証券、CP、社債、不動産
投資信託投資口(J-REIT)について、買入額の増額には強い制約がある。もっとも、J-REITは、一頃に比べれば、市場規模が幾分拡大していることもあり、少額ならば買入増額の余地はある。長期国債については、買入額を大幅に増額し、かつ残存期間を1~2年程度に限定した場合、円滑に買入れを進めていくうえで先々支障が生じる可能性がある。
日本銀行の財務の健全性という観点からみると、国庫短期証
券、長期国債、CP、社債については、当面、制約は強くない
一方、指数連動型上場投資信託受益権( E T F ) については、
価格変動リスクが大きい点に留意する必要がある。以上の執行部の説明を受けて、委員は議論を行った。6か月物の固定金利オペにおいて応札額が未達となるケースが生じていることについて、委員は、市場の資金需要がすでに充足されており、日本銀行による金融緩和の効果が強力に浸透していることの一つの表れと考えられるが、資産買入等の基金をより円滑に運営する観点からは、固定金利オペを5兆円程度減額し、長期国債の買入れに振り替えることが適当との認識を共有した。委員は、そうした振り替え分も含めると、長期国債の買入額については、全体で10 兆円程度思い切って増額することが適当との認識で一致した。ETF、J-REITについては、市場規模面での制約や日本銀行の財務の健全性にも配慮しつつ、リスクプレミアムの低下を促す観点から、各々2,000 億円、100 億円増額することが適当との認識を共有した。また、2年までの金利がきわめて低い水準まで低下してきていることを踏まえると、多額の長期国債や社債の買入れを円滑に進め、長めの金利に効果的に働きかけていくためには、買入対象年限を3年まで延ばすことが適当との考えで一致した。この点に関連し、一人の委員は、わが国の資金調達構造をみると、相対的に長期の社債やモーゲージ・ローンの割合が高い米国と異なり、期間3年以下の貸出の割合が高く、それに概ね対応する期間の金利に働きかけることが引き続き効果的と考えられると付言した。基金増額後の買入れ完了の目途について、委員は、本年末時点において予定する資産買入等の基金の規模は従来通り65 兆円程度とすることを確認した。そのうえで、委員は、本年中の長期国債の買入れペースがすでにきわめて大きな金額となっていることを考えると、長期国債5兆円分については、2013 年入り後、同年6月末を目途に買入れていくことが適当との認識を共有した。
先行きの金融政策運営について、委員は、当面の「中長期的な物価
安定の目途」である消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それ
が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入
れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく、ただし、金融面
での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長
を確保する観点から問題が生じていないことを条件とするとの方針
を確認した。何人かの委員は、市場では日本銀行の金融政策に対する
様々な思惑がみられるが、金融政策は、あくまでも、物価安定のもと
での持続的な経済成長の実現という金融政策の目的に照らして、運営
していく必要があると述べた。消費者物価の前年比上昇率1%が見通
せるまでは、機械的に基金の増額を続けていくという誤解が一部にみ
られることについて、委員は、日本銀行は、金融政策の経済・物価へ
の波及には一定のタイムラグがあることを踏まえたうえで、わが国経
済が物価安定のもとでの持続的な成長に向かっているかどうかとい
う観点から、蓋然性が高い見通しとリスク要因という、2つの柱によ
る点検をしっかりと行ったうえで金融政策の運営方針を決定してい
るということを、丁寧に説明していく必要があるとの見解で一致した。
デフレ脱却の考え方について、委員は、デフレからの脱却には、急
速な高齢化のもとでの趨勢的な成長率の低下という、長期的・構造的
な課題への取り組みが不可欠であり、こうした課題を克服し、新たな
経済成長の基礎を築いていくためには、民間企業が付加価値の創造力を高め、外需の取り込みや内需の掘り起こしを進める必要があるとの見方で一致した。これに関して、一人の委員は、最近、高齢化に対応し、付加価値の高い財・サービスを提供する動きが非製造業を中心にみられていることを指摘したうえで、こうした動きを拡げていくこと
が重要と述べた。また、何人かの委員は、価格引き上げに抵抗感が強
いわが国において、そうした取り組みの成果が挙がるには相応の時間
を要すると考えられるが、企業が前向きの活動を続けることや、それ
を支える環境整備に政府が努めること、さらには民間金融機関が成長
基盤の強化に向けた取り組みを行うことも重要であると述べた。こう
した議論を経て、委員は、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそ
れぞれの役割に即して取り組みを続けることによって、デフレ脱却は
実現していくとの見解で一致した。
Ⅳ.政府からの出席者の発言
財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
わが国経済は、緩やかに持ち直しており、先行きについては
持ち直し傾向が確かなものになると期待されるが、欧州の政府
債務問題の影響等による海外景気の下振れ、原油高や為替レー
トの変動等により、わが国の景気が下押しされるリスクが依然
として存在しており、引き続き強く懸念している。
政府としては、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時
達成に向け、現在、社会保障と税の一体改革に全力で取り組ん
でいる。先般、国会に提出した段階的な消費税率の引き上げを
含む「社会保障の安定財源確保等を図る税制抜本改革法案」な
ど一体改革関連法案の成立に向け、引き続き全力を尽くしてい
く。
デフレ脱却がわが国における最重要課題であることは政府・
日銀の共通認識である。政府としては、デフレ脱却に向け、新
成長戦略の実行加速とともに、年央までに策定する「日本再生
戦略」を官民一体となって着実に実行することなどにより、中
長期的に持続的な経済成長に繋げていく必要があると考えて
いる。現在、デフレ脱却等経済状況検討会議や成長ファイナン
ス推進会議をはじめ、関連会議等において実行すべき施策の検
討を行っている。
本日、追加緩和策が提案されたことは、政府の取り組みと連
携の取れたデフレ脱却に資する対応として高く評価する。わが
国は、未だデフレ脱却という状況には至っておらず、日本銀行
におかれては、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指し
て、それが見通せるようになるまで、強力に金融緩和を推進し
ていく」との方針のもと、引き続き、金融政策の姿勢が伝わる
よう、しっかりとコミュニケーションを図りながら、積極的か
つ果断な金融政策運営に取り組んで頂きたい。
また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。
わが国の景気は、「円高への総合的対応策」や累次の補正予算
の効果等により、内需面での上向きの動きが続いている。先行
きも、各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が確
かなものとなると期待される。ただし、欧州政府債務危機の再
燃等の下振れリスクには、十分な警戒が必要である。
物価は下落テンポが緩和しているが、依然緩やかなデフレ状
況が続いている。過去10 年以上の課題であるデフレ脱却に向
け、マクロ経済政策と同時に、デフレを生みやすい構造問題に
対処する観点から、平成25 年度までを念頭に、政府としての
経済政策のあり方を検討するため、デフレ脱却等経済状況検討
会議を立ち上げたところである。今後も精力的に議論を重ね、
6 月を目途に中間的な取りまとめを行い、日本再生戦略や平成
25 年度予算編成プロセス等に反映させる。政府としても、しっ
かりとした成長戦略を実行する態勢を取るとともに、社会保障
制度を立て直し、財政の健全化の道筋を確かなものとするため、
社会保障と税の一体改革を固い決意で実行していきたい。
展望レポートについては、平成24 年度、25 年度の消費者物価
上昇率は0.3%、0.7%と見込まれており、ともに1月の見通し
からは上方修正となっているが、当面目指すところとしている
1%にはまだ届いていないという状況にある。当面のゴールで
ある1%を早期に実現し、結果を出していくということがきわめて重要である。
本日の一連の金融緩和の強化策の提案については、デフレ脱
却に向けた適切なものと評価する。日本銀行におかれては、デ
フレ脱却と経済活性化に向けた政府の取り組みと歩調を合わ
せ、引き続き柔軟かつ果断な金融政策運営をお願いしたい。
Ⅴ.採決
1.金融市場調節方針
委員は、当面の金融市場調節方針について、「無担保コールレート
(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」と
いう現在の金融市場調節方針を維持することが適当である、との考え
方を共有した。
議長からは、このような見解を取りまとめるかたちで、以下の議案
が提出され、採決に付された。
金融市場調節方針に関する議案(議長案)
1.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとお
りとすること。記無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す。
2.対外公表文は別途決定すること。
採決の結果
賛成:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、
白井委員、石田委員
反対:なし
2.「資産買入等の基金運営基本要領」の一部改正等に関する件
委員は、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復するこ
とを、さらに確実にするため、資産買入等の基金の残高について、①
長期国債の買入れを10 兆円程度、ETFの買入れを2千億円程度、
J-REITの買入れを百億円程度、それぞれ増額する、②6か月物
の固定金利オペを5兆円程度減額する、③基金の買入れ対象とする長期国債および社債の残存期間をいずれも従来の「1年以上2年以下」を「1年以上3年以下」に延長する、ことが適当であるとの認識を共
有した。そのうえで、「『資産買入等の基金運営基本要領』の一部改正
等に関する件」が、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定さ
れ、適宜の方法で公表することとされた。
Ⅵ.対外公表文(「金融緩和の強化について」)の検討
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針、資産買入等の基金の増額、先行きの金融政策運営、デフレ脱却の考え方に関する記述を含めた対外公表文(「金融緩和の強化について」<別紙>)が検討され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。
Ⅶ.「経済・物価情勢の展望」の決定
続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討
され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、即日公表
することとされた。また、背景説明を含む全文は、4 月28 日に公表
することとされた。
採決の結果
賛成:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、
白井委員、石田委員
反対:なし
Ⅷ.議事要旨の承認
議事要旨(4月9、10 日開催分)が全員一致で承認され、5月7
日に公表することとされた。
以 上
2012年4月27日
日本銀行
金融緩和の強化について
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、資産買入等の基金
につき、以下の決定を行った(全員一致)。
(1)資産買入等の基金を65 兆円程度から70 兆円程度に5兆円程度増額する。その
内訳は次のとおりとする(注)。
① 長期国債の買入れを10 兆円程度増額する。
② 指数連動型上場投資信託受益権(ETF)の買入れを2千億円程度、不動産投
資法人投資口(J-REIT)の買入れを百億円程度、それぞれ増額する。
③ 期間6か月の固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについては、応
札額が未達となるケースが発生している状況を勘案し、5兆円程度減額する。
(2)買入れ対象とする長期国債の残存期間については、今回の増額分を含めて多額
の買入れを円滑に進め、長めの金利へ効果的に働きかける観点から、従来の「1
年以上2年以下」を「1年以上3年以下」に延長する。社債についても、長期国
債と同様に、買入れ対象の残存期間を延長する。
(3)基金の70 兆円程度への増額は2013 年6月末を目途に完了する。なお、本年末
時点における基金の規模は従来通り65 兆円程度とする。
2.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート
(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」ことを決定した(全
員一致)。
3.海外経済をみると、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低
下し、米国経済も緩やかに回復している。こうしたもとで、わが国の経済は、なお横
ばい圏内にあるが、前向きの経済活動に広がりがみられるなど、持ち直しに向かう動
きが明確になりつつある。経済の先行きについては、本日公表の展望レポートで点検
(注)基金の全体像については別紙参照。
別 紙したとおり、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、
また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、展望レポートの見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。やや長い目で
みれば、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性は高いと考え
られる。
4.日本銀行は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力な
金融緩和を推進している。こうした日本銀行の政策は、長めの金利およびリスクプレミアムの低下や、金融市場の安定等を通じて、経済活動を支えている。また、実質的なゼロ金利政策等の推進は、景気の改善につれてその効果が強まっていくと考えられる。本日決定した金融緩和の一段の強化は、これまでの措置の累積的な効果と併せ、
日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを、さらに確実なものにすると期待している。
5.上記の強力な金融緩和の推進に当たり、日本銀行は、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないかどうかを確認していく。わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要である。
6.デフレからの脱却には、急速な高齢化のもとでの趨勢的な成長率の低下という、長期的・構造的な課題への取り組みが不可欠である。こうした課題を克服し、新たな経済成長の基礎を築いていくためには、民間企業が付加価値の創造力を高め、外需の取り込みや内需の掘り起こしを進める必要がある。また、このような企業の前向きな
活動を支えていくために、政府が環境整備に努めることや、民間金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを行うことも重要である。このように、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことによって、デフレ脱却は実現していく。
以 上
別紙
今回の「資産買入等の基金」の増額について
(注1)日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。
(注2)指数連動型上場投資信託および不動産投資信託の増額については、日銀法上の認可取得を条件と
する。
以 上
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