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参議院外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録「北方領土問題について」2009年05月12日

活動報告

2009年5月12日

参議院外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録

北方領土問題について

○藤田幸久君 藤田幸久でございます。

 沖縄と同等に非常に重要な北方領土の問題についてお聞きしたいと思います。

 今日も政府委員のところで谷内政府代表の名前がまた消されておりますが、今日で三度目、政府委員として出席をされておらないわけですが、中曽根大臣、今日はなぜ谷内政府代表が出席をしていないのか、その理由をまずお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(中曽根弘文君) 谷内政府代表の本委員会への出席につきましては、この委員会の委員長始め理事、皆さん方で御協議をいただいて出欠についてはお決めいただくということが、これが基本であり、当然のことであります。

 私どもとしては、四月でございますか、この新聞の記事が出た後、委員会からの本人に対する出席の要求がありましたときには日程の都合上で出席ができないということであったと、そういうふうに認識しておりますけれども、双方の都合が付けばこれは出席していただいて、何といいますか、委員会でその辺の御審議いただくということは、私どもが別にこれを反対をしたりするものでもありませんし、今回のことにつきましても、これは委員会でお決めいただいたものだと、そういうふうに思っておりまして、その辺のことは与野党間でお話合いされた上ではないかと思っております。

○藤田幸久君 簡単にお答えいただきたいと思いますが、今日の都合が付かない理由だけお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(中曽根弘文君) 恐らく、委員会から御本人に対してどういうような対応をされたのか、私どもちょっと伺っておりませんので、私の方からちょっとお答えできません。

○委員長(榛葉賀津也君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(榛葉賀津也君) 速記を起こしてください。

 中曽根外務大臣。

 速記を止めてください。

   〔午後二時三十三分速記中止〕

   〔午後三時一分速記開始〕

○委員長(榛葉賀津也君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(中曽根弘文君) お答え申し上げます。

 本日は、理事会としての意思決定がなされなかったと承知をいたしております。また、なお本日、本人は国際的な諸問題がありまして所用があると、そういうふうに聞いているところでございます。

○藤田幸久君 国際的諸問題がある場合に、大臣は委員会に出席ができて、非常勤である政府委員は出席できないということは極めて異常な状況で、今までそういったことがあったのか。それだけ、大臣は出席できる立場にあるということを今承って大変驚いた次第でございますけれども、大分時間が過ぎましたんで、次の質問に移らせていただきます。

 今回、プーチン首相が昨日来日をされましたが、先日、私が把握しただけでも、日経新聞と共同通信とNHKでのインタビューに答えておられます。その中で、いや、そんな難しい話じゃないんで聞いていていただければ分かるんですけれども、プーチン首相は、三・五島返還論については、日本国内でも固まっていないと聞いており、反応するのは時期尚早だと答えていらっしゃいます。

 ポイントは、結果的に相手方のトップであるプーチン首相が日本で三・五島返還論についていろいろ議論が出ているということを御本人が承知しているということですね。つまり、いろいろ経緯はあったにしても、谷内さんが新聞でおっしゃったことが相手方のトップに三・五島論として伝わっているということですけれども、で、日本の外務省あるいは政府としてロシア側に説明されたんですか、つまり、谷内発言について。あれからもう約三週間たっています。

○政府参考人(兼原信克君) ロシア側への我が方の立場の伝達でございますが、外交上の個別のやり取りでございますので個別には申し上げられませんけれども、我が国、日本の北方領土問題に関する我が国の立場についてロシア側にはしっかりと伝えてきております。この問題の最終的解決に全力を尽くしてまいりたいと思っております。

○藤田幸久君 つまり、三・五島論があるということがしっかりプーチン首相に伝わったということだろうと思います。

 それで、ということは、この三・五島論の中身についてちょっと。これは、質問通告で谷内さんあての、これは今日の質問は全部谷内さんあての質問ですので、谷内さんに代わって大臣にお答えいただきたいと思いますけれども、この三・五島論というのは、面積折半案とも言われておりますけれども、これで仮に三・五島案でいった場合に、これは結局最終平和条約に至るんですか、それともその三・五島論でいったん話ができたということは、その後に中間条約、あるいは段階論的に進むんでしょうか、どちらでしょうか。最終、平和条約に行くのか行かないかということについて、イエスかノーかで、大臣、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(中曽根弘文君) 政府といたしましては、今委員が御指摘のような、そういう考え方を検討している事実はございません。北方領土問題に関する立場は、もう従来から申し上げておりますけれども、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して、そしてロシア連邦との間で平和条約を締結すると、そういうものでございまして、この基本方針の下に北方四島の返還を実現していく、そういう考えでございます。

○藤田幸久君 にもかかわらず、先方の首相に三・五島論があると伝わったということは、そういうことが日本国内で論議になっているというふうに先方に伝わっているわけですから、もしそれが間違っているならば、プーチンさんに対して、いや、日本はそういうことはないんだということを説明していかないと、これは外交上は大変な失点になるかと思うので、これは政府委員ではなくて大臣からお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(中曽根弘文君) 先ほども申し上げましたけれども、このことにつきましては、ロシア側にも、先ほど参考人が御答弁申し上げましたように伝えてありますし、また、もちろんプーチン氏はどういうところからこのことを承知しているのかしていないのか分かりませんけれども、我が方としては、従来の政府の考え方に変わりないということはしっかりと外交ルートを通じて伝えてあるところでございます。

○藤田幸久君 ということは、日本の基本的立場を説明したにもかかわらず、先方の首相は、三・五島論ということが論議にあるということを誤解してプーチン首相がこれだけ公の放送及び新聞等で通信社に対して言っているという、つまり、プーチン首相の認識が間違っている、あるいは、得た情報が、今おっしゃったように別のところから情報が行ってしまって間違っているということでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君) これは、共同インタビューにおけるプーチン首相の発言の一部をちょっと御紹介させていただきますけれども……

○藤田幸久君 さっき紹介しました。

○国務大臣(中曽根弘文君) いや、そこではないと思いますが、これは、記者さんから、争いのある島々を面積で例えば半分に分けると、そういう問題について貴首相は妥協に応ずる用意があるかと、そのような質問の仕方であったわけでありますが、日本政府がまだ自身の立場を決めていないと、まさかまだきちんと決まっていないような立場について私から何かコメントするよう求めておられるわけではないだろうと、これは両国間の対話の中にとどまり、我々の専門家である両外務省に作業をさせようということで、プーチン首相はそのように述べているわけであります。

 それから、このプーチン首相の側近と言われています先方の政府の官房副長官の発言でありますが、引用させていただきますと、最近、日本側より、クリルを等分することの可能性を含め諸島の問題の解決方法に関する幾つかの発言が聞かれたが、これは少なくとも日本政府が支持しているものではなかったと、そういうふうにロシアの政府の官房副長官の発言もあったわけでありまして、私どもとしては、このことにつきましては政府の基本的な考え方がしっかり伝わっているものと、そういうふうに思っております。

○藤田幸久君 先方の官房副長官よりもこちらの政府代表の方が多分格が上なんだろうと思いますけれども。そうすると、こちらの政府代表がかなり大きな紙面で言っておると。それに対して、立場決めていないとおっしゃいましたけれども、これは、要するに三・五島論に対して立場を決めていないんではなくて、日本の立場は、つまり帰属をまず確定をするということが基本だという立場が決まっていないというふうに今だと取られてしまうんですけれども、重要なことは、三・五島論云々ではなくてその帰属が重要であるという、東京宣言であるような、その基本が伝わっていないというふうに今の官房副長官の発言からも取れますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君) 先ほどのプーチン首相の発言の、まだきちんと決まっていない、日本政府がまだ自身の立場を決めていないというこの御発言、これが本当に正確にどういうことを意味するかは私もこれを判断なかなかできかねますけれども、日本政府の考え方というものは私はしっかりと本人は理解しているものと、そういうふうに思います。

○藤田幸久君 いや、それもまた矛盾でありまして、日本政府は、その四島がまず歴史上もずっと日本に属していたと、それからその所属を決めるということが日本の基本的立場であって、それ以外の部分についていろいろな意見がありますということを先方の首相がコメントしてくるような状況をつくったこと自体が、これ、交渉事とすればこれは非常にまずい既に状況になっている。それに対して対応しないということは外交上極めてまずいということをまず指摘して、次に移りたいと思います。

 今日、資料を四枚お配りしておりますけれども、一番最後の四ページ目の資料です。緊急アピールという資料を皆さんにお配りをしてあります。昨日、全国紙三紙に掲載をされたと理解しています。済みません、私の資料の一番下に「朝日新聞など」と書いてありますが、実は朝日新聞はこれ載せておりませんで、産経、日経、毎日、読売だろうと思いますが、同じものです。

 これを見てびっくりしたのは、これ名前が九十何名いるんですけれども、このうち十五名が外務省の大使経験者であります。それから、そのうちの、これ、じゃロシアスクールばかりなのかなと思いましたらば、実はアメリカ大使を経験された方も二人おります。

 大臣、これだけの、つまり十五人も日本の外交を担ってきた方がこれだけ署名アピール、つまり、この間の谷内さんの発言、あるいは麻生さんも同じようなことをおっしゃっていますが、これに対してこういうアピールをされているということについてどうお考えになりますか。

○国務大臣(中曽根弘文君) まず、このアピールの一番上に大きく書いてありますが、緊急アピールのこの一番の目的あるいはこの主張というものは、ここにあります「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」ということに表れているんではないかと思います。したがいまして、ここに名前を載せている方々はそれへの賛同者であり、それについて言わば警告的なものを発しているものと、そういうふうに思います。

 そこで、まずこの前提となります谷内政府代表の発言につきましては、もう再三この委員会で申し上げておりますように、本人は、三・五島返還でもいいのではないかと考えているといったそういう発言は行っていないという説明があるわけでありますが、この緊急アピールは、歴史的にもまた法的にも日本には四島返還を要求する根拠がある旨の記述があるわけでありまして、これは北方領土問題に関する日本政府の立場が維持されるべきことに強い支持をいただいたものと、そういうふうに認識をしております。

 こういう意味におきましては、外務省の職員が署名者として同アピールに参加していても問題になるとは考えておりませんし、またOBが署名者として参加しても問題になるとは私は思っておりません。また、私といたしましても、このアピール、基本的立場を崩してはならないというのはこれは当然のことだと思っておりますし、この関係者の皆さんから北方領土返還に向けた激励をいただいたものと、そういうふうにも認識をしておりまして、身を引き締めて対ロ交渉に当たっていきたいと、そういうふうに思っておるところでございます。

○藤田幸久君 五月一日のある新聞の報道によりますと、中曽根大臣自身がこの緊急アピールを出した関係者に電話をされたと。ニュージーランドにいたときでしょうか。それで、このアピールの文章について提言をされたと、修正を求められたと。この新聞報道によりますと、この本文の、「わたくしどもは、」から始まって二つ目のパラの最後のところですね。「対露外交の基軸を否定するかのごとき発言をしたわけです。」と。二つ目のパラの最後の三行ですね、「日本政府の首脳が、初めて四島返還という対露外交の基軸を否定するかのごとき発言をしたわけです。」となっておりますが、元々、その否定するかのごときの部分が具体的に否定した発言というふうになっていたものを、中曽根外務大臣が電話をされた結果、否定するかのごとき発言に修正をしたというふうに報道されておりますが、大臣、ニュージーランドから電話をされてこういう修正を求められたというような事実は間違いございませんか。

○国務大臣(中曽根弘文君) 一部の新聞にそのような経過的なことが記載されていたことは私も承知しておりますが、これは正確ではございません。私は、御指摘のような変更を求めたという事実もございません。私は、単に事実と異なる点がありますと、このまんまではこれはまずいですということを申し上げただけでありまして、一部の新聞によれば、私がこういうふうに変えてくださいと要請をしたような記事がありましたけれども、これは正確ではないことをはっきりと申し上げたいと思います。

○藤田幸久君 では、事実と異なる部分、最終的なこれ文面ですけれども、どこが事実と異なっておりますでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君) この今委員がおっしゃった三行に関しては、現在は異なることにはなっていないと、そういうふうに思います。

○藤田幸久君 この基本的立場の根拠というのは、一九九三年の東京宣言、つまりエリツィン・細川会談だと言われておりますけれども、この東京宣言について、〇五年にプーチン大統領が日本にいらっしゃった際に、この東京宣言を文書で確認したいと日本政府側が求めたけれども、当時のプーチン大統領はそれを拒否したと言われておりますが、その事実関係は間違いございませんか。

○政府参考人(兼原信克君) 二〇〇五年の交渉の記録、今手元にございませんので、確実なことは申し上げられませんが、二〇〇一年のイルクーツクの首脳会談で、一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約締結交渉のプロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であるということを確認をした上で、一九九三年の東京宣言に基づいて、北方四島の帰属の問題を解決することによって平和条約を締結すべきことを、そういうことを確認するイルクーツク声明が署名されております。

○藤田幸久君 つまり、東京宣言を文書で確認するということが重要であって、今回はそういう折半論よりも、今プーチンさんいらっしゃっているけれども、今回、そういったことを基盤として確認をする、文書等でする必要があるんじゃないですか、今回。あしたまでいらっしゃいますけれども、いかがですか。

○政府参考人(兼原信克君) 今回は、日ロ関係全般にかかわる特定の文書を採択することは予定しておりません。

○藤田幸久君 つまり、間違って伝わった、外務大臣も今まで谷内さんについては誤解があったと。誤解どころか、先方のプーチン首相がここまでおっしゃっていると。ということは、とにかく今交渉事において、先方のトップが来る前にこちらからそういった漏れてしまって、先方の首相が来る前にモスクワでこういった発信をされていると。ということは、交渉事ですから、むしろこちらが強い立場で臨まなければいけないわけで、今回はロシア側の方が経済危機等々もあって立場が弱いのに、こちらからそんな情報が漏れたこと自体が交渉上極めてまずかったんではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君) 先ほども申し上げましたけれども、この谷内発言につきましては、私どもも、本人がそのような発言をしていないということ、それから全体として流れの中で誤解を与えたかもしれないということ、反省をしているということ、そしてこれに対して私は厳重注意をいたしました。そうして、日本政府の方針というものも確認をしておるわけで、総理の御答弁もたしかあったと思います。

 今回、プーチン首相との会談の中では、今参考人が申し上げましたとおり、経済問題や二国間の様々な問題が話し合われることになろうかと思いますが、仮にプーチン首相がこのような誤解のような誤った解釈であるということが分かれば、直ちにその場で私どもとしてはそれは訂正をすることが当然だと思っておりますが、先方も新聞報道等も御覧になられていると思いますので、その後の谷内発言後の経緯についても承知されていると思いますので、私は誤解を生ずることはないと、そういうふうに思っております。

○藤田幸久君 時間なので、最後に一問。

 先ほどこの緊急アピールで、今基本的には事実関係間違いがないということでしたけれども、三つ目のパラグラフの後半ですね、三つ目のパラグラフというのはかなり長い文章の後半ですけれども、後ろから五行目、「むしろロシア側はより強気となり、問題解決の展望はいっそう遠ざかるのではないでしょうか。」と。つまり、こういうことが出ているようではむしろ解決に妨げるんではないかというふうに書いてございますが、この文章については、この部分についてはどうお感じになりますでしょうか、大臣。

○国務大臣(中曽根弘文君) 再三申し上げておりますが、谷内氏本人も御自分の発言についてそのような意図ではなかったと、また発言をしていないとはっきり話されているわけでありますし、政府としても対応を取っておるわけでありまして、今委員が御指摘の、ロシア側がより強気となり問題解決の展望は一層遠ざかるのではないでしょうかという、私はこのようなことはないと、そういうふうに思っております。

○藤田幸久君 ありがとうございました。