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2009.2.9.「戦時中の連合国捕虜使役に関する再質問主意書」(藤田幸久参院議員)&2.17.答弁書2009年02月18日

活動報告

2009年2月18日

2009.2.9.「戦時中の連合国捕虜使役に関する再質問主意書」(藤田幸久参院議員)&2.17.答弁書

前回政府答弁書(内閣参質一七一第二二号)を踏まえ、再度質問する。

一 「一について」の答弁について

 前回政府答弁書において、外務省外交史料館が保管する外交記録の中に「戦時捕虜に関する資料及び関係の文書」も含まれるとある。

1 その全目録を示されたい。

2 また、その中の麻生鉱業に関するもの、とりわけ捕虜の取り扱い及び賃金支払いに関するもの、捕虜の母国への帰還に関するものを示されたい。

3 一九四五年八月に河辺虎四郎陸軍中将がマニラで連合軍司令部に提出した文書などがこれらの資料に含まれていたか。含まれていた資料を示されたい。

▼(答弁)一の1から3までについて

 外交史料館が保管する終戦前の外交記録の中で、御指摘の「文書」を含むものを特定するためには膨大な作業を要するため、お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難である。

 現在までの調査では、これらの外交記録の中に「麻生鉱業」が明記された文書及び御指摘の「一九四五年八月に河辺虎四郎陸軍中将がマニラで連合軍司令部に提出した文書」は確認されていない。

4 外務省には戦時中「外務省在敵国居留民関係事務室」が開設されていた。

・ その開設の経緯と業務内容を明らかにされたい。

・ 連合国からの抗議文などの関係資料はこの事務室が保管していたのか。その全目録を示されたい。

▼(答弁)一の4について

 御指摘の「在敵国居留民関係事務室」は、外交史料館に保存されている資料によれば、「敵國ニ於テ俘虜、抑留者又ハ集團生活者トナリ居ル邦人ノ状況ノ調査及改善ニ關スル事務」、「敵國トノ居留民交換事務」、「帝國ノ權内ニ在ル俘虜、抑留者又ハ集團生活者トナリ居ル敵國人關係事務」等の関係事務を処理するために昭和十七年十二月一日に設置されたものとされている。同室に、御指摘の関係資料等が保管されていたかについては、現在までの調査では確認されていない。

5 一九四五年八月に設置された外務省終戦連絡事務局の連合軍司令部(GHQ)に対する役割は何か。設置日と廃止日はいつか。この事務局の捕虜に関する文書資料等は、一九四六年に設置された外務省外交史料館に保管されているか。

▼(答弁)一の5について

 御指摘の「終戦連絡事務局」は、外交史料館に保存されている資料によれば、連合国軍隊の本邦進駐に伴い、連合国側との連絡にあたるために、昭和二十年八月二十六日に外務省の外局として設置され、昭和二十三年二月一日に廃止されたものとされている。現在までの調査では、同事務局が作成した捕虜に関する文書資料等については、その一部が外交史料館に保管されていることが確認されている。

二 「二について」の答弁について

 前回政府答弁書において、「「先の大戦時の戦時捕虜に関する諸問題および政策立案」は多岐にわたるため、事項に応じて政府において担当する部局が対応している」とある。

1 サンフランシスコ講和条約締結後、捕虜に関して連合国側との窓口となったのはどの部局か。

2 東京裁判、戦時賠償、BC級戦犯、シベリア抑留者の担当部局はどこであったか。

▼(答弁)二の1及び2について

 お尋ねの担当部局については、事項の内容及び相手国等によって様々であるため政府として一概にお答えすることは困難である。

3 近年の各国の元捕虜による日本政府や企業に対する提訴についての担当部局はどこか。

▼(答弁)二の3について

 日本政府に対するいわゆる戦後補償関係訴訟については、個別の訴訟に応じて、関係する省庁等が一致協力し、政府全体として適切に対応することとしている。お尋ねの「企業に対する提訴」については、政府として個別の訴訟について直接関与していない。

三 「三の1について」及び「三の2及び3について」の答弁について

1 前回政府答弁書において、「元捕虜等からの要望等に対し、返書を送付するなど、適切に対応してきている」とある。ならば、なぜ現在まで元捕虜・家族からの抗議や要求が続いているのか。「適切に対応」しながら、元捕虜・家族が納得していない理由は何だと考えるか。

▼(答弁)三の1について

 元捕虜等からの要望等の背景は、個別具体的な事情があると考えられるので、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。いずれにせよ、政府としては、元捕虜等からの要望等に対し、適切に対応してきている。

2 前回政府答弁書における「捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた」と「多大の損害と苦痛を与えた」とはどう関係付けられるのか。国際法上認められている基準を遵守していれば、「不当な苦難」を強いたり、お詫びする必要はないはずではないか。

3 「痛切な反省と心からのお詫び」とは、「どのような事実・事態に対する反省」で、「お詫び」は何に対する「お詫び」か。日本側の一部に捕虜虐待や奴隷労働があったとする立場なのか。全体として、虐待や奴隷労働に近い実態があったとする立場なのか。

4 「お詫びと反省の気持ち」を繰り返し表明してきたにもかかわらず、なおそれらが被害当事者らから受け入れられていないのは、なぜか。

▼(答弁)三の2から4までについて

 御指摘の「痛切な反省と心からのお詫び」については、我が国が、かつて植民地支配と侵略によって、元捕虜を含め、旧連合国諸国を含む多くの国々の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことにつき、率直にお詫びの気持ちを表明したものである。

 一方、我が国としては、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題については、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「サンフランシスコ平和条約」という。)及びその他関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、これらの条約等の当事国との間では、個人の請求権の問題も含め、法的に解決済みである。

 我が国としては、関係諸国との信頼関係を一層強化するため、引き続き誠実に対応していく所存である。

5 捕虜の労働に関する国際法の規定及び基本要件は何か。

▼(答弁)三の5について

 当時、捕虜の扱いについては、一般に、国際慣習法により規律されており、捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた。

6 最近開示された「朝鮮月報」によれば、将校が使役されているが、これは国際法に違反しているか。

▼(答弁)三の6について

 御指摘の「朝鮮月報」における記載については承知しているが、当時の具体的状況が明らかでなく、お尋ねについて確定的なことを述べることは困難である。

四 「四の1について」及び「四の2について」の答弁について

1 前回政府答弁書において、「在豪州日本国大使館及び在豪州日本国総領事館は、関連の報道等について、外務本省に対ししかるべく報告してきている」とある。では、二〇〇六年に麻生炭鉱の豪州人元捕虜のインタビューが豪州のABC放送や、「The Age」紙、「The Australian」紙などで報道されたが、それらは麻生外務大臣(当時)に報告されたか。

▼(答弁)四の1について

 御指摘の報道については、麻生外務大臣(当時)に報告されたかどうかは確認できなかった。

2 前回政府答弁書において、「政府はこれまで、豪州人元捕虜等からの手紙等を受け取った場合、面会に応じたり、返書を送付するなど、丁寧に対応してきている」とある。

  

・ 二〇〇六年六月に麻生炭鉱の豪州人元捕虜ジョン・ホール氏の娘マリリン・カルアナさんが麻生外務大臣あてに手紙を出したが、麻生外務大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。

・ マリリン・カルアナさんは麻生総理大臣あてに二〇〇九年一月十六日付けの手紙を出したが、麻生総理大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。

・ 麻生炭鉱の豪州人元捕虜ジョン・ホール氏は麻生総理大臣あてに二〇〇九年二月四日付けの手紙を出したが、麻生総理大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。また同じく元捕虜のアーサー・ギガー氏及びジョー・クームス氏も麻生総理大臣あてに同じ時期に手紙を出したが、麻生総理大臣はそれを受け取ったか。またどのような返事を出したか。

・ 久留米工業大学教授のウイリアム・アンダーウッド氏が二〇〇七年六月二十七日付けの手紙を麻生外務大臣あてに出したが、麻生外務大臣はそれを受け取ったか。また同氏が同封した「麻生鉱業報告書〔一九四六年〕」及び、GHQ司法調査委員会作成の「報告書一七四」を受け取ったか。

▼(答弁)四の2の(一)及び(四)について

 麻生外務大臣(当時)が受け取ったことは確認されていない。

四の2の(二)及び(三)について

 マリリン・カルアナ氏、ジョン・ホール氏及びジョー・クームス氏からの手紙については内閣総理大臣官邸において接受したが、これらに対する返書は送付していない。アーサー・ギガー氏からの手紙については確認されていない。

五 「五の2及び4について」の答弁について

 前回政府答弁書において、「外務省が保有している資料で記事の内容に関係するものがないか等について、外務省国際報道官室より、外務省のその他の関係部局に確認を行った」とある。一で、外交史料館にあるとされる資料及び文書の確認を行わなかったのか。また、四の1での豪州での報道を把握している在豪大使館等への確認を行わなかったのか。

▼(答弁)五について

 外交史料館及び在外公館への確認は行わなかった。

六 「六の1について」の答弁について

 厚生労働省及び外務省保管の文書に労働の実態を示すものがないか。またそれはどのような内容か。

▼(答弁)六について

 旧麻生鉱業における朝鮮人労働者の労働の実態を把握できる資料は、厚生労働省及び外務省にて確認した範囲では見当たらなかった。

七 「七の2及び4について」の答弁について

 前回政府答弁書において、「反論の掲載・削除に係る事務は外務報道官が主管している」とある。外務大臣は内容を承知し、公電による指示を決裁していたのではないか。

▼(答弁)七について

 御指摘の反論の掲載及び削除については、これを在ニューヨーク日本国領事館に対して指示する公電案を外務省外務報道官組織国際報道官室が起案し、外務大臣に報告し、その了承を得た上で同公電を発電した。

八 「八の1から4までについて」及び「八の5について」の答弁について

1 捕虜らの勤務実態を記録した文書類は残っていないのか。もし、残っていないならば、労賃を払う意思が当初よりなかったということか。

▼(答弁)八の1について

 政府が保管している資料の中に、一部の捕虜収容所における、捕虜の従事していた労務の種類、従事者数、労賃日額等の記述は見られるが、現時点で個々の捕虜に対する労賃の支払について記述したものは確認されていないことから、労賃の支払の実態について、お答えすることは困難である。

2 前回政府答弁書において「捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた」とあるが、当時の国際法は労賃を払わなくてもよいとは規定していない。前回政府答弁書で戦後労賃を払っていないことを明らかにしているのであるから、国際法違反となる。日本の労賃未払い、つまり国際法違反を認める立場なのか。

▼(答弁)八の2について

 先の答弁書(平成二十一年二月六日内閣参質一七一第二二号)は、我が国の支払は、サンフランシスコ平和条約第十六条に基づき、日本国の捕虜であった間に不当な苦難を被ったことに対する償いをする願望の表現として行ったものであって、当該支払が労賃の支払ではなかったことを述べたものであり、労賃の支払の有無について述べたものではない。

3 生存する元捕虜四人のうち連絡が取れる三人全員が「労賃の支払いを受けていない」と述べている。支払ったことを日本政府として証明する責任があるのではないか。もし、それが出来ないなら、支払うべきではないか。

▼(答弁)八の3について

 先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題は、政府としては、サンフランシスコ平和条約及びその他の関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、これら条約等の当事国との間においては、個人の請求権の問題も含め、法的に解決済みである。

九 「九の1及び2について」の答弁について

 平成二十一年度予算案の中で、米国の元捕虜およびその家族を対象とする事業を外している理由は何か。

▼(答弁)九について

 お尋ねについては、その対応について、引き続き慎重に検討しているところである。

十 韓国人残留遺骨に関するアンケートを厚生労働省が以前行ったが、株式会社麻生は回答しているか。またそれは、どのような内容か。

 戦時中、麻生鉱業は朝鮮総督府に「朝鮮人労務者斡旋申請書」を提出していると思われるが、その記録は残っているか。あれば示されたい。

 戦時中に中国人・朝鮮人労務者を使役していた企業に、戦後「華・鮮労務対策委員会」などが窓口になって国家補償金が支払われたことが報告されている。麻生鉱業に対してこの種の支払いが行われたか。行われていれば、その金額と積算根拠を示されたい。

▼(答弁)十について

 先の答弁書(平成二十年十月二十一日内閣参質一七〇第五一号)一から四までについてで述べたとおり、政府としては、徴用された朝鮮半島出身者等の遺骨の調査及び返還のための作業を鋭意進めており、民間企業等の幅広い協力を得つつ実態調査を行っているが、これらの民間企業等との関係もあり、個別の調査対象を明らかにすることは差し控えてきているところである。

 お尋ねの「朝鮮人労務者斡旋申請書」及び旧麻生鉱業に対する支払については、厚生労働省及び外務省で確認した範囲では確認することができなかった。