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英国教授がロシア正教への勇気ある主張2023年01月09日

 ブーバイヤー英国ケント大学教授によるロシア英字紙への寄稿を紹介します。戦争を支持するロシア正教と良識あるロシア国民に対する勇気ある主張です。彼は長年の友人で、私が会長を務める国際IC日本協会と同じ国際IC英国協会の前会長です。これを掲載したモスクワ・タイムスにも敬意を表します。 以下、私の仮訳です。 [文化や信仰は、いかにロシアの真の声の探求に役立つのか] フィリップ ブーバイヤー(イギリス・ケント大学教授・ロシア史、前イギリスIC協会会長)  もし、私達が地獄に落ちたとしたら、どんな声で叫ぶのだろう。 ロシアの作家アンドレイ・シニャフスキーは、1973年に出版した収容所の回想録『コーラスからの声』の中で、『自分達自身の声ではない。』と述べている。それは実存主義を意味する:地獄とは、本当の自分自身を見失った場所と定義できる。  本物のアイデンティティーの探求は、現代文化の大きなテーマであり、しばしば個人レベルで経験されるものである。しかし、ウクライナでの戦争は、ロシア国家がある種の帝国主義的なアイデンティティを主張する試みと見えるため、これが国家的な姿で現れた。ロシア正教会が戦争を支持したことから、このアイデンティティは政治的、宗教的要素の両方を含んでいる。  しかし戦争に鑑み、こうした立場のロシアの声には納得できない人々が多い。ロシア人もロシアを愛する人々も、残忍な暴力や組織的な嘘が、この国の真の精神を反映しているとは思っていない。 幸いなことに、ロシアの精神性や文化には、より思慮深い国を目指す別の声も存在する。  教会関係者も思想家も、心の中の良心の声に耳を傾けるようしばしば促してきたが、同時に、注意しなければ良心の声に鈍感になりうるという警告も発してきた。 19世紀のロシアの司教イグナティ・ブライアンチャニノブは、良心を善と悪とを区別する「緻密で明瞭な声」と表現した。反対に、悪は魂を「暗くし、鈍らせ、殺してしまう」と述べた。  モスクワのノボデヴィチ墓地にあるフルシチョフ元首相の墓碑は、彫刻家エルンスト・ネイズヴェスヌイによる有名なデザインで、黒と白の大理石のブロックが向かい合っている。これは、ソ連の指導者が矛盾した人物であったことを意味している。彼の中には、誰にでもあるように、さまざまな声が働いていたのである。 モスクワ・タイムス(2022年12月26日) content/uploads/2023/01/230109-Moscow-Times.jpg" alt="" width="750" height="1459" class="aligncenter size-full wp-image-34176" />