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  • 【2012年1月11日】

    日本銀行金融政策決定会合(10月27日)の議事概要です。財務省を代表しての私の発言もございます。

    公表時間 11月21日 (月) 8 時50 分


    本議事要旨は、日本銀行法第2 0 条第1 項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2011 年11 月15日、16日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。


    1.開催日時:2011 年10 月27 日(9:00~ 13:26)
    2 . 場 所:日本銀行本店
    3.出席委員:
    議長 白川方明 ( 総 裁)
    山口廣秀 (副総裁)
    西村淸彦 ( 〃 )
    中村清次 (審議委員)
    亀崎英敏 ( 〃 )
    宮尾龍蔵 ( 〃 )
    森本宜久 ( 〃 )
    白井さゆり ( 〃 )
    石田浩二 ( 〃 )
    4.政府からの出席者:
    財務省 藤田幸久 財務副大臣
    内閣府 大串博志 内閣府大臣政務官
    ( 執行部からの報告者)
    理事 山本謙三
    理事 中曽 宏
    理事 雨宮正佳
    理事 木下信行
    企画局長 門間一夫
    企画局審議役 梅森 徹
    企画局政策企画課長 神山一成
    金融市場局長 青木周平
    調査統計局長 前田栄治
    調査統計局経済調査課長 関根敏隆
    国際局長 大野英昭
    ( 事務局)
    政策委員会室長 飯野裕二
    政策委員会室企画役 橘 朋廣
    企画局企画調整課長 千田英継
    企画局企画役 峯岸 誠
    企画局企画役 川本卓司

    Ⅰ.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要
    1.最近の金融市場調節の運営実績
    金融市場調節は、前回会合( 10 月6 ~ 7 日) で決定された方針1の
    もとで、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を行い、
    金融市場の安定確保に万全を期した。こうした中、無担保コールレー
    ト(オーバーナイト物)は、0.07%台後半から0.09%台半ばの間で推
    移した。
    2.金融・為替市場動向
    短期金融市場は、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、安定的
    に推移している。G C レポレートは、0.1% 近傍で推移している。
    ターム物金利をみると、短国レートは、長めのゾーンを中心にごく僅
    かに強含む動きもみられるが、総じて0.1% 程度で安定的に推移して
    いる。長めのターム物の銀行間取引金利は、横ばい圏内の動きとなっ
    ている。
    長期金利は、1.0% 程度で推移している。株価は、米欧株価の持ち
    直しを受けて上昇し、足もとの日経平均株価は8 千円台後半で推移し
    ている。為替市場をみると、円の対米ドル相場は、日米金利差が一頃
    に比べ幾分拡大している一方、本邦輸出企業による円買いが意識され
    るもとで、総じて狭いレンジ内での動きとなっており、足もとでは76
    円台で推移している。
    3.海外金融経済情勢
    世界経済は、減速しつつも回復を続けている。
    米国経済は、回復を続けているが、そのテンポはごく緩やかなものにとどまっている。個人消費は、バランスシート問題が重石となる中、雇用環境の改善鈍化や家計のマインド悪化を受けて、ごく緩やかな改善にとどまっている。住宅投資については、住宅価格が軟調に推移する中、なお低水準で推移している。一方、輸出や設備投資は緩やかに
     「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促
    す。」
    増加している。こうしたもとで、生産は増加基調を維持している。物価面では、財市場や労働市場の緩和的な需給環境が引き続き物価押し下げ圧力として作用しているものの、既往の国際商品市況上昇の影響などは、なお物価上昇率を押し上げる方向に作用している。
    欧州経済をみると、ユーロエリア経済は、横ばい圏内の動きとなっている。輸出が、海外経済の減速を受けて伸び悩んでいるほか、個人消費は、概ね横ばいとなっている。欧州ソブリン問題の深刻化から、消費マインドの悪化は、ドイツなど主要国にも波及している。そのもとで、生産は減速している。物価面では、緩和的な需給環境や賃金の低い伸びが、引き続き物価押し下げ圧力として作用する一方、加工食品の価格上昇などが、物価上昇圧力として作用している。この間、英国経済も、横ばい圏内の動きとなっている。
    アジア経済をみると、中国経済は、全体として高成長を続けている。
    輸出が幾分減速しているほか、個人消費の伸びが、物価上昇の影響などから幾分鈍化しているものの、固定資産投資が高い伸びを続けている。インド経済も、幾分減速しているが、なお高めの成長を続けてい
    る。N I E s 、A S E A N 経済は、内需が底堅く推移していることに
    加え、輸出や生産が緩やかながら増加していることから、景気の回復
    が続いている。物価面をみると、これらの国・地域の多くで、既往の
    食料品・原材料高や労働需給の逼迫を受けた賃金上昇率の高まりを背景に、物価上昇圧力の強い状態が続いている。
    海外の金融資本市場をみると、欧州ソブリン問題に対する欧州連合
    の包括的な対応策などにより、投資家のリスク回避姿勢が幾分和らい
    だことや、米国で予想を上回る経済指標が比較的多かったことなどか
    ら、欧米の株価は上昇している。また、クレジット市場では、社債の
    対国債スプレッドが小幅に縮小している。一方、欧州各国の国債利回
    りの対独スプレッドは、財政と金融システムの負の共振が意識される
    中、国債や金融機関の格下げの影響などから、高止まりを続けている。
    銀行間取引市場では、カウンターパーティ・リスクへの警戒感が続く
    中、ターム物金利が高水準で推移している。新興国の金融資本市場で
    は、投資家の安全資産選好が幾分和らぐもとで、資金流出の動きが一
    服し、株価は上昇し、通貨は下げ止まっている。
    4.国内金融経済情勢
    (1)実体経済
    わが国経済は持ち直しの動きを続けている。ただし、海外経済減速
    や円高の影響などから、企業マインドの改善には一服感もみられる。
    公共投資は、発注の動きを示す公共工事請負金額が、2 か月連続の
    増加となるなど、このところ下げ止まりつつある。
    輸出は、7 月、8 月に前月比で小幅の増加となったあと、9 月は自
    動車関連を中心に伸び率を高め、7 ~ 9 月の前期比は+ 8.7% と大幅な増加となった。
    タイで発生した水害により、日系企業の現地生産設備にも被害が拡
    がっている。これがわが国経済に与える影響について、現時点では見
    極め難い面もあるが、連結ベースでみた企業業績や、わが国の輸出、
    生産が短期的に下押しされる可能性があり、注意が必要である。
    設備投資について、先行指標である機械受注をみると、4 ~ 6 月に
    続き、7~8月も増加傾向を続けている。
    個人消費について、9 月の百貨店売上高やチェーンストア売上高を
    みると、台風等の天候要因から、前月比で幾分減少している。一方、
    震災後の落ち込みから回復が鈍かった旅行取扱額は、8 月は大幅に増加し、震災前の水準を回復している。
    物価面をみると、国際商品市況は下落している。国内企業物価を3
    か月前比でみると、国際商品市況の動きや為替円高の影響などから、
    弱含んでいる。先行きについても、当面、弱含みで推移するとみられ
    る。企業向けサービス価格( 除く国際運輸) の前年比は、やや長い目
    でみた企業活動の改善を反映して、下落幅が縮小傾向にある。
    (2)金融環境
    わが国の金融環境は、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳し
    さがなお窺われるものの、緩和の動きが続いている。
    コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コ
    ストは緩やかに低下している。C P ・社債市場では、良好な発行環境
    が続いている。企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は減少幅の縮小傾向が続いている。企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いており、金融機関の貸出運営スタンスも、引き続き積極的となっている。企業の資金繰りをみると、中小企業を中心に一部で厳し
    いとする先がなおみられるが、総じてみれば、改善した状態にある。

    Ⅱ.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要
    1.経済情勢
    国際金融資本市場について、委員は、欧州では金融システムの安定
    化に向けた動きも進み始めているが、その具体的な実現を巡る不確実
    性がなお残ることなどから、緊張状態は続いているとの見方で一致し
    た。多くの委員は、欧州ソブリン問題は、スペインやイタリアといっ
    た経済規模の大きな国々に拡がりを見せつつ、欧州系金融機関を巡る資金調達環境の悪化につながっており、欧州の金融システム全体に対する不安心理が一段と強まっているとの認識を示した。何人かの委員は、グローバルな投資家のリスク回避姿勢は根強く、相対的に安全通貨とみなされている円に対して、上昇圧力のかかりやすい地合いが続いていると指摘した。委員は、欧州ソブリン問題の抜本的な解決にあたっては、関係国が歳入・歳出の見直しによって財政健全化を着実に進めるとともに、産業競争力強化など中長期的な成長力を高める構造改革に取り組む必要があり、これには長い時間を要するとの認識を共有した。
    海外の経済情勢について、委員は、先進国を中心に成長ペースが鈍
    化しているものの、新興国・資源国の高めの成長に支えられ、全体と
    しては緩やかな回復傾向を続けているとの見方で一致した。先行きに
    ついては、当面は、国際金融資本市場の緊張が残る中、先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽
    引される形で、再び成長率を高めていくとの見方を共有した。
    米国経済について、委員は、回復を続けているものの、家計の過剰
    債務や住宅市場の調整が長引き、雇用の改善も緩慢なもとで、回復の
    ペースはごく緩やかなものにとどまっているとの認識を共有した。多
    くの委員は、生産、企業収益、設備投資など企業部門の指標は底堅く
    推移している一方、このところ、金融市場の緊張を背景とした消費者
    マインドの悪化や、低調な住宅需要の動向を反映した住宅価格の下落
    が目立つことを指摘した。先行きについて、委員は、財政・金融政策
    の発動余地が限られ、バランスシート調整の圧力が根強く残る中、成
    長のペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いとの見方で一致し
    た。
    ユーロエリア経済について、委員は、ソブリン問題に端を発する金
    融システム不安の高まりを受けて、家計や企業のマインドが悪化して
    いることなどから、減速が明確になっているとの認識を共有した。先
    行きについて、委員は、ソブリン問題を巡る金融資本市場の緊張が続
    き、欧州の金融機関は、資産圧縮や貸出運営スタンスの厳格化の動きを強めるなど、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が働くもとで、景気回復の動きは抑制されたものになるとの見方を共有した。
    新興国・資源国経済について、委員は、物価上昇による実質購買力
    の低下や金融引き締めの効果に加え、先進国経済の減速に伴う輸出の減少の影響などから、幾分減速しているが、生産・所得・支出の自律
    的な好循環が基本的に保たれているもとで、総じて高めの成長が続い
    ているとの見方で一致した。また、多くの新興国・資源国では、イン
    フレ圧力は十分に沈静化していないとの認識を共有した。先行きにつ
    いて、委員は、多くの国で、当面は幾分減速した状態で推移するもの
    の、その後は、インフレ圧力の低下に伴って、家計の実質購買力が回
    復することなどから、高めの成長を実現していく可能性が高いとの見
    方を共有した。何人かの委員は、欧州ソブリン問題を巡る金融市場の
    緊張が続く中で、グローバルな投資家がリスク回避の動きを強める結
    果、新興国から資金を引き揚げる動きが拡がる可能性には、留意が必要であると述べた。
    わが国の金融環境について、委員は、C P や社債の発行環境が良好
    な状態を続け、企業の資金調達コストも緩やかに低下するなど、緩和
    の動きが続いているとの見方で一致した。先行きについても、日本銀
    行による強力な金融緩和の効果が一段と浸透していく中で、緩和の動
    きが続き、国内民間需要が自律回復に向かう動きを支えていくとの認
    識を共有した。ある委員は、短中期的な予想物価上昇率がこのところ
    弱含んでいると指摘したうえで、これが同ゾーンの実質金利の上昇圧
    力につながり、円高や株安の圧力を強める可能性には注意する必要があると述べた。
    以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、
    わが国の経済情勢に関する議論が行われた。委員は、わが国経済は、供給面の制約がほぼ解消され、主として需要面の動向に規定される局面に移行しつつある中で、持ち直しの動きを続けているとの見方で一致した。また、生産や輸出について、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、内外の在庫復元を急ぐ自動車関連を中心に、増加を続けているとの認識を共有した。そのう
    えで、何人かの委員は、海外経済の減速や円高の影響などから、企業
    マインドの改善に一服感がみられる点を指摘した。複数の委員は、海
    外経済の減速の影響がI T 関連財の輸出動向等に、円高の影響が外国人訪日客の回復鈍化等に、それぞれ顕在化しつつあると述べた。タイの水害がわが国経済に与える影響について、多くの委員は、現時点で全体像を見極め難いが、同国を重要な生産拠点のひとつとする自動車や一部電気機械セクターを中心に、企業収益や輸出、生産が一時的に下押しされるリスクに、留意が必要であると述べた。
    2.経済・物価情勢の展望
    経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、2012 年度ま
    では、7 月の中間評価時点と比べると、海外経済の減速や円高の影響などから、幾分下振れているとの見解で一致した。そのうえで、委員
    は、経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショック
    が回避されるのであれば、海外経済の成長率が再び高まることや、震
    災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回
    復経路に復していくとの認識を共有した。
    2011 年度下期の経済情勢について、委員は、輸出や生産を中心に、
    海外経済減速や円高の影響を受けるとみられる一方、資本ストック等
    の復元に向けた復興需要が、公共投資、民間設備投資、住宅投資、さ
    らには耐久消費財需要といった様々な面で、徐々に顕在化してくると
    の見方で一致した。また、2012 年度の経済情勢について、復興需要が
    年度を通じて寄与することに加え、海外経済の成長率が緩やかに高ま
    り、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムが働くた
    め、比較的高い成長率となるとの見方を共有した。2013 年度について
    は、委員は、復興需要の押し上げ寄与が徐々に減衰していくことなど
    から、成長率は、2012 年度対比では鈍化するものの、新興国・資源国
    を中心とする堅調な海外需要のもとで、潜在成長率を上回る成長が続
    くとの認識を共有した。
    消費者物価( 除く生鮮食品) の前年比の先行きについて、委員は、
    当面はゼロ% 近傍で推移したあと、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもとで、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間の後半にかけてゼロ% 台半ばになっていくとの見方で一致した。その前提条件である国際商品市況について、委員は、世界経済の減速などを背景にこのところ軟化しているが、やや長い目でみれば、新興国が高い経済成長を続ける中で、食料やエネルギーを中心に、緩やかな上昇傾向を辿るとの想定を共有した。なお、消費者物価( 除く生鮮食品) の見通し計数は、固定基準年指数に基づき作成しているが、委員は、連鎖基準指数ベースでみた場合、先行き2013年頃の前年比は、見通しに比べ、若干低くなっている可能性があるとの認識で一致した。
    委員は、こうした中心的な見通しに関する上振れ・下振れ要因につ
    いても議論を行った。
    まず、実体経済面の上振れ・下振れ要因として、委員は、① 欧州ソ
    ブリン問題を中心とする国際金融資本市場を巡る動向、② 海外経済の動向、③ 復興需要の動向、④ 企業や家計の中長期的な成長期待、の4点を挙げた。これらの要因に加え、何人かの委員は、原子力発電所の再稼働時期と電力の供給制約を巡る不確実性にも、注意する必要があると述べた。ある委員は、わが国の金融システムや企業財務が、欧米対比、健全性を維持していることが、上振れ要因として作用する可能性もあると指摘した。
    欧州ソブリン問題の帰趨について、委員は、その世界経済への影響
    も含めて不確実性が大きいとの見解で一致した。そのうえで、為替・
    金融資本市場において、グローバル投資家のリスク回避姿勢が一段と
    強まる結果として、円高や株価の下落が進めば、企業や家計のマイン
    ドを通じた影響も含め、わが国の景気の下振れ要因となるとの認識を
    共有した。何人かの委員は、大幅な円高が進行し、輸出企業の採算が
    悪化した場合、企業収益が下振れし、ひいては雇用・所得環境に悪影
    響を及ぼす可能性に、特に留意する必要があると述べた。ある委員は、ソブリン問題を巡る金融資本市場の緊張が続く中で、大幅な円高傾向が定着し、基幹工場や研究開発拠点の流出につながれば、国内の投資や雇用の大幅な減少をもたらし得るとの懸念を示した。
    海外経済について、委員は、① バランスシート調整が米国経済に与
    える影響や、② 欧州のソブリン問題について、財政と金融システム、
    実体経済の負の相乗作用が強まっていくことにならないかどうか、③
    新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどう
    か、注視していく必要があるとの認識を共有した。多くの委員は、欧
    州ソブリン問題への政策対応次第で、欧州金融機関が、資産圧縮や貸出抑制の動きを一段と強めかねないリスクに注意が必要であると述べた。
    企業や家計の成長期待について、複数の委員は、わが国経済が、震
    災から立ち直る過程で、海外経済の減速や円高、電力の供給制約と
    いった負のショックに直面する結果、企業や家計の成長期待が低下し、
    見通し期間内の景気も下振れるリスクがある点に懸念を示した。
    物価見通しの上振れ・下振れ要因について、委員は、① 景気の上振
    れ・下振れ要因の顕現化による影響、② 企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の変化、③ 輸入物価の動向、の3 点を指摘した。このうち企業や家計の中長期的な予想物価上昇率について、ある委員は、デフレ脱却時期の後ずれ予想が強まる場合、民間部門の支出活動などが先送りされる結果、予想物価上昇率や成長期待が高まらない、という状態に陥るリスクに注意が必要であると述べた。
    以上を踏まえ、委員は、経済・物価情勢について2 つの「柱」による点検を行った。
    まず、第1 の柱、すなわち、先行き2013 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しを総合的に評価すると、委員は、2012 年度までの成長率見通しは、7月の中間評価時点と比べると幾分下振れており、わが国経済は、「中長期的な物価安定の理解」に基づいて、物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要するとの認識を共有した。
    次に、第2 の柱、すなわち、より長期的な視点を踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、委員は、景気面では、海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響について、丹念に点検していく必要があるとの認識を共有した。何人かの委員は、欧州ソブリン問題を巡る国際金融資本市場の緊張が続く中で、発生確率は必ずしも大きくないものの、リーマン・ショックのような、わが国経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックが生じるリスクについても、意識しておく必要があると述べた。物価面では、委員は、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きいほか、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもあるとの見方で一致した。
    以上の2 つの柱に基づく点検を踏まえ、委員は、物価の安定が展望
    できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要すると予想される
    うえ、国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価の見通
    しがさらに下振れするリスクにも、注意が必要であるとの認識を共有
    した。そのうえで、今回の会合で、金融緩和の一段の強化に合意が得
    られるのであれば、わが国経済は、やや長い目でみて、物価安定のも
    とでの持続的な成長経路に復していくという見通しを、維持すること
    ができるとの見解で一致した。
    Ⅲ.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要
    委員は、8 月に強化した金融緩和措置のもとで、金融資産の買入れ
    等を着実に進めているが、物価安定のもとでの持続的成長経路への移行をより確かなものとするためには、資産買入等の基金を増額し、金融緩和を一段と強化することが必要との判断で一致した。
    資産買入等の基金の増額を図ることが適当との委員の意見を踏まえ、
    議長は、買入対象となっている金融資産の市場動向や日本銀行の買入れ余地、日本銀行の財務の健全性との関連などについて、執行部に説明を求めた。
    議長の指示を受けて、執行部は以下のとおり説明を行った。
     現 在 、 基 金 が 買 入 対 象 と し て い る 金 融 資 産 の 市 場 規 模 と の 関 係 でみると、国庫短期証券や残存期間1~2年程度の長期国債については、追加的な買入れの際の制約は、当面、さほど大きくないとみられる一方、CP、社債、そしてとりわけ不動産投資信託については、そうした市場規模面からの制約はより大きいと考えられる。
     市 場 動 向 と い う 点 か ら み る と 、 国 庫 短 期 証 券 の 利 回 り は 、 一 段 の低下余地が乏しいものの、残存期間1~2年程度の長期国債の利回りは、なお幾分低下余地が残されている。CP発行レートの対短国スプレッドや、社債流通利回りの対国債スプレッドは、低位で安定的に推移している。
     日 本 銀 行 の 財 務 の 健 全 性 と い う 観 点 か ら み る と 、 指 数 連 動 型 上 場投資信託については、追加的な買入れに際し、価格変動リスクが大きい点に留意する必要があるが、国庫短期証券、長期国債、CP、社債については、当面、日本銀行の財務面からの制約はさほど強くないとみられる。
    以上の執行部の説明を受けて、委員は議論を行い、わが国の金融環
    境が、国際金融資本市場が不安定な中にあっても、緩和の動きを続け
    るもとで、企業の資金調達は円滑に行われている現状も踏まえると、
    基金の増額の対象は長期国債とし、それを通じて金融市場全体に緩和効果のさらなる浸透を図ることが適当との見解を共有した。
    委員は、わが国の資金調達構造をみると、期間3 年以下の貸出等の
    割合が高いため、それに概ね対応する期間の金利の低下を促すことが、金融緩和を一段と強化していくうえで効果的であるとしたうえで、基
    金を通じた長期国債の買入対象は、これまでと同様、残存期間2 年ま
    でのものとすることが適当との見解で一致した。複数の委員は、円の
    対ドル相場と日米の2 年金利差の相関が、他の年限に比べると相対的に高めである現状を踏まえると、残存期間1 ~ 2 年の長期国債の買入れは、為替相場の安定という観点からも効果的であると述べた。
    基金の増額の規模について、大方の委員は、8 月に、先行きの様々
    な景気下振れリスクを前もって相当意識したうえで、10 兆円程度とい
    う思い切った増額を行い、現在は、そのもとで資産買入れを着実に進
    めている段階であることなどを踏まえると、5 兆円程度とすることが
    適当との見方を示した。基金増額後の買入れ完了の目途について、何
    人かの委員は、従来と同様2012 年末とし、今後の長期国債の買入れ
    ペースを、これまでより加速させることが適当と述べた。
    これに対して、一人の委員は、企業や家計の予想物価上昇率や成長
    期待の低下を通じて、見通し期間の景気や物価が下振れるリスクが高
    まっており、8月の金融緩和の強化に続き、10 兆円程度という、イン
    パクトのある規模で基金の増額を行うことが適当との意見を述べた。
    次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、委員は、
    「無担保コールレート( オーバーナイト物) を、0 ~ 0 .1 % 程度で
    推移するよう促す」という現在の方針を維持することが適当であると
    の見解で一致した。複数の委員は、物価の安定が展望できる情勢に
    なったと判断するまで、実質ゼロ金利を継続していく方針であること
    を粘り強く説明し、デフレ脱却に向けた日本銀行の強い姿勢を明確に
    示すことが重要と指摘した。
    先行きの金融政策運営について、委員は、日本経済がデフレから脱
    却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的
    な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3 つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていくとの考え方で一致した。また、こうした日本
    銀行の取り組みが、日本経済の中長期的な成長力の強化に結びつくためには、民間、政府を含め各方面が、きわめて緩和的な現在の金融環境を活用しつつ、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくこと
    が重要との見解を共有した。
    Ⅳ.政府からの出席者の発言
    財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
     わ が 国 の 経 済 情 勢 を み る と 、 持 ち 直 し て い る も の の 、 そ の テ ン ポは緩やかになっている。こうした中、為替市場では、急速に円高が進行し、円の対ドル相場は史上最高値を更新するなど、一方的に偏った動きが強まっている。さらには、欧州債務問題に対する懸念が再燃しており、海外経済の停滞感の高まりが、重大な景気下振れリスクとなっており、政府として大変懸念している。
     政 府 は 、 現 下 の 円 高 や 、 産 業 空 洞 化 リ ス ク の 急 激 な 高 ま り に 機 を逸することなく適切に対応する観点から、10 月21 日、①中小企業金融のさらなる充実、②立地補助金の拡充、③日本企業による海外企業の買収や資源確保など円高メリットの徹底活用、を柱とした円高への総合的対応策を閣議決定した。
     また、平成 23 年度第3次補正予算の概算を決定した。その中では、
    東日本大震災からの復興関連の施策を重点的に手当てするとともに、
    産業の空洞化等への対応も盛り込んでいる。今後成立に向けて全力
    で取り組んでいく。
     本 日 、 さ ら な る 金 融 緩 和 に つ い て 提 案 さ れ た こ と は 、 現 下 の 厳 しい経済状況を踏まえた適切な対応と評価する。日本銀行におかれては、今後とも、海外経済の動向や、為替市場を含む金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響等を踏まえながら、果断な金融政策対応をお願いしたい。
    また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。
     わ が 国 の 景 気 は 、 持 ち 直 し て い る も の の 、 そ の テ ン ポ は 緩 や か になっている。先行きについても、景気の持ち直し傾向が続くことが期待されるものの、国際金融情勢の不安定化、海外景気の下振れ懸念や急速な円高の進行等、わが国景気の重大な下振れリスクが存在する。タイの洪水被害の悪影響にも十分な注意が必要である。
     政 府 は 、 急 速 な 円 高 の 進 行 等 に よ る 景 気 下 振 れ や 産 業 空 洞 化 の リスクに対処していくため、「円高への総合的対応策」を閣議決定した。今後は、第3次補正予算の速やかな成立に努めるとともに、本対応策が迅速に具体的な成果を挙げるよう、各府省副大臣等からなる景気対応検討チームによるPDCAに立脚した進捗管理を行っていく。日本銀行にもご協力をお願いしたい。
     展 望 レ ポ ー ト で は 、 消 費 者 物 価 の 前年比は当面はゼロ% 近傍、2013 年度まではゼロ% 台半ばにとどまると見込まれているが、これは「中長期的な物価安定の理解」に比べ低い。「物価安定の理
    解」は、2006 年に示されて以降、2008 年を除き達成されていない。
    わが国経済が依然緩やかなデフレ状況にある中で、円高とデフレの
    悪循環に陥ることがないように対処していくことが重要であり、デ
    フレ脱却が政策課題であるとの認識は、政府と日本銀行で以前から
    共有しているところである。ご提案のあった金融緩和の強化策につ
    いては、時宜を踏まえたものと評価させて頂く。日本銀行におかれ
    ては、引き続き政府との緊密な情報交換・連携のもと、適切かつ果
    断な金融政策運営により、経済を下支えするようお願いしたい。
    Ⅴ.採決
    1.金融市場調節方針
    委員は、当面の金融市場調節方針について、「無担保コールレート
    ( オーバーナイト物) を、0 ~ 0 . 1 % 程度で推移するよう促す」と
    いう現在の金融市場調節方針を維持することが適当である、との考え
    方を共有した。
    議長からは、このような見解を取りまとめるかたちで、以下の議案
    が提出され、採決に付された。
    金融市場調節方針に関する議案(議長案)
    1.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとお
    りとすること。
                   記
    無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程
    度で推移するよう促す。
    2.対外公表文は別途決定すること。
    採決の結果
    賛成:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員
    宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員
    反対:なし
    2.「資産買入等の基金運営基本要領」の一部改正等に関する件
    資産買入等の基金の残高について、大方の委員は5 兆円程度増額し、増額の対象資産を長期国債とすることが適当であるとの認識を示した。
    これに対し、一人の委員は、資産買入等の基金の残高の増額幅を10
    兆円程度とする旨の議案を提出したいと述べた。この結果、以下の2
    つの議案が採決に付されることとなった。
    宮尾委員からは、資産買入等の基金の残高を10 兆円程度増額し、
    増額の対象資産は長期国債とする旨の議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。
    採決の結果
    賛成:宮尾委員
    反対:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員
    森本委員、白井委員、石田委員
    議長からは、会合における多数意見を取りまとめるかたちで、資産
    買入等の基金の残高を5 兆円程度増額し、増額の対象資産は長期国債とする旨の議案が提出された。採決の結果、賛成多数で決定された。
    採決の結果
    賛成:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員
    森本委員、白井委員、石田委員
    反対:宮尾委員
    宮尾委員は、企業や家計の予想物価上昇率や成長期待の低下を通じ
    て、見通し期間の景気や物価が下振れるリスクが高まっており、8月
    に続き、10 兆円という思い切った資産買入等の基金の増額を行うべき
    であるとして、議長案に反対した。
    Ⅵ.対外公表文(「金融緩和の強化について」)の検討
    以上の議論を踏まえて、物価の安定が展望できる情勢になったと判断
    されるにはなお時間を要すると予想されるうえ、国際金融資本市場や海外経済の動向次第で経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも注意が必要であるとの認識のもとで、物価安定のもとでの持続的成長経路への移行をより確かなものとするためには、資産買入等の基金を50 兆円程度から55 兆円程度に5兆円程度増額し、金融緩和を一段と強化する、という金融政策の運営方針に加え、宮尾委員の提出した議案に関する記述を含んだ対外公表文(「金融緩和の強化について」<別紙>)が検討され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。
    Ⅶ.「経済・物価情勢の展望」の決定
    続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討さ
    れ、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、即日公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、10 月28 日に公表することとされた。
    採決の結果
    賛成:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員
    宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員
    反対:なし
    Ⅷ.議事要旨の承認
    議事要旨(10 月6、7日開催分)が全員一致で承認され、11 月1 日
    に公表することとされた。
    以 上

    2011 年10 月27 日
    日本銀行
    金融緩和の強化について
    1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、資産買入等の基金を50 兆円程度から55 兆円程度に5兆円程度増額し、金融緩和を強化することを決定した(賛成8反対1(注1))(注2)。資産買入等の基金の増額に当たっては、長期国債を対象とすることとした(注3)。
    2.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」ことを決定した(全員一致(注4))。
    3.日本経済は、供給面の制約が解消されてきている中で、持ち直しの動きが続いている。金融環境をみると、CPや社債の発行環境が良好な状態を続け、企業の資金調達コストも緩やかに低下するなど、緩和の動きが続いている。日本経済の先行きについては、当面、海外経済の減速や円高の影響を受けるものの、その後は海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくこと
    などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。
    4.しかし、物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要すると予想されるうえ、国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも、注意が必要である。日本銀行は、8月に強化した金融緩和措置のもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めているが、物価安定のもとでの持続的成長経路への移行をより確かなものとするためには、金融緩和を一
    段と強化することが必要と判断した。
    (注1)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、森本委員、白井委員、石田委員。
    反対:宮尾委員。
    (注2)本日の金融政策決定会合では、宮尾委員より、資産買入等の基金を10兆円程度増額し、60兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:宮尾委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、森本委員、白井委員、石田委員)。
    (注3)基金の内容等については別紙参照。
    (注4)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員。
    反対:なし。
    別 紙
    5. その際、上記の金融環境のもとで企業の資金調達が基本的には円滑に行われている現状を踏まえ、資産買入等の基金を5兆円程度増額する対象は長期国債とし、それを通じて金融市場全体に緩和効果のさらなる浸透を図ることが適当と判断した。
    なお、日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、銀行券需要の趨勢的な残高に概ね見合うよう、安定的な資金供給を行うという観点から、現在、年間21.6 兆円の長期国債を買入れている。
    6.日本銀行は、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、今後とも、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。こうした日本銀行の取り組みが、日本経済の中長期的な成長力の強化に結びつくためには、民間、政府を含め各方面が、緩和的な金融環境を活用しつつ、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくこ
    とが重要と考えている。
    以 上
    (別紙)
    今回の「資産買入等の基金」の増額について
    1.増額の内容
    従来の規模 今回の増額幅 増額後の規模総額 50兆円程度+5兆円程度55兆円程度
    資産の買入れ 15.0 +5.0 20.0
    長期国債(注) 4.0 +5.0 9.0
    国庫短期証券 4.5 ― 4.5
    CP等 2.1 ― 2.1
    社債等 2.9 ― 2.9
    指数連動型上場
    投資信託
    1.4 ― 1.4
    不動産投資信託 0.11 ― 0.11
    固定金利方式・
    共通担保資金供給
    オペレーション
    35.0 ― 35.0
    期間3か月 20.0 ― 20.0
    期間6か月 15.0 ― 15.0
    (注)日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。
    2.2012 年末を目途に増額を完了する。
    以 上


    —-

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