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重村智計早大教授、平和構築推進議連で講演2009年04月27日

去る421日、平和構築推進議員連盟の第4回勉強会は、北朝鮮の動向に詳しい重村智計早稲田大学教授を迎えて、北朝鮮の現状と、どう対応すれば良いかについてお話しいただいた。また重村教授は米国民主主義基金(NED)でフェロー活動を行ったことから民主化支援にも詳しく、今後日本でどういった活動をするかについても触れていただいた。以下は、菅原秀事務局長による報告である。

    北朝鮮は集団指導体制が固まりつつある

重村教授の解説によれば、北朝鮮は国防委員会の幹部による集団指導体制に移行する準備をしているとのこと。今までは金正日の指導による中央委員会が国を統制していた。しかし4月9日の朝鮮中央テレビでは新しい国防委員会のメンバー12人の顔写真を発表した。こうした発表は異例であり、今後集団指導をとるという当局の意思と見ることができる。また後継者については、うわさされてきた金正男、正哲、正雲などではなく、金正日の異母兄弟にあたる金ヒョンとなる可能性が高いとのこと。

一連の変化の準備で忙しかった北朝鮮は、日本に対応する余裕がなかったわけだが、拉致問題が進展しない理由は2点ある。ひとつめは小泉首相が、金正日が拉致を認めたにもかかわらず平壌宣言を守らないことに対する謝罪を求めていること。二つめは国交正常化と1兆円の支援を約束したことや、米やエネルギー支援を約束通り履行すべきだと求めている点である。

 しかし、李明博が大統領になってからの韓国も一切の支援を行っていない。盧武鉉大統領時代までは10年間で1兆円の支援が行われていたにも拘らずだ。わずかに開城工業団地の労賃の5億円と、金剛山観光の売上げが細々と支払われているに過ぎない。

 現政権は核カードを外交の手段に使ってきたのだが、軍が核を手放したくなっているようだ。しかしノドンには核搭載能力がほとんどないので脅威としては小さい。現在30万トンの石油しか保有していないので、戦争を行うことは物理的に不可能である。むしろ攻められたら困るのでミサイル防衛を充実したいのが本音だろう。北朝鮮としては海外からの支援がない現状はピンチであり、5月の末に政治体制が固まれば、国際社会との対話を求めることになるだろう。オバマ政権は北朝鮮との対話を打ち出したが、まだ議会の承認を得ていない。北朝鮮は米中の新しい動きを狙っている。 

○民主主義の高等教育が欠如した日本

 重村教授は米国民主主義基金(NED)のフェローとして1年間ワシントンで研究をしてきた。NEDは世界各国の民主化支援財団をコーディネートする中核機関である。アメリカにはロー・スクールにもジャーナリズムの学科にも、民主主義を本格的に学ぶ講座が設置されている。日本の大学にはそうしたものがない。民主主義の基本を学ぶことは極めて重要である。その手始めとして早稲田大学で講座を開始することを考えたい。

研究所の設立は資金的にも難しくないので、ぜひ議連およびNPO、さらには海外の民主化支援財団の協力をお願いしたい。

議連では重村教授のこの提案を前向きに受けて、幹事と図った上で出来るだけ早い時点で協力体制を作りたい旨、話し合った。 

                  

 重村智計教授プロフィール 

(しげむら としみつ)早稲田大学 国際教養学部教授。1945年 中国・丹東生まれ、1969 年 早稲田大学法学部卒業 、シェル石油勤務後、毎日新聞社に入社。 ソウル、ワシントン特派員、高麗大学留学、スタンフォード大学研究員、毎日新聞論説委員を経て現職。朝鮮半島問題について TV、雑誌などでも活発な言論を展開している。

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