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リーマンショック以来の米国短期金融市場の混乱2019年10月11日

  臨時国会が始まりました。衆参本会議や衆議院予算委員会を散見している限り、「世界の不都合な現実」とはかけ離れた議論が展開されている気がします。  

  9月20日のブログでもお伝えした通り、9月17日に突然、米国の短期金融市場で翌日物レポ金利が2.25%から一時10%へと急騰しました。国債などを担保に金融機関が短期資金を融通し合うレポ取引の金利です。金融機関破綻を回避するためにニューヨーク連銀は17日に$750億ドル(約8兆1100億円)を短期金融市場に投入。ところがその後も金融市場混乱は沈静化せず、20日まで4回連続$750億ドル(約8兆1100億円)を投入した結果、やっと20日にレポ金利が低下に向かいました。金融恐慌の前兆とも見なされるこの短期金融市場の混乱は、リーマンショック以降初めてです。しかも、連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)の開催前日の出来事だけに大きなショックでした。

  ニューヨーク連銀はさらに、9月21日に、9月23日以降10月中旬まで更なる短期金融市場への資金供給計画を発表し、約2週間も投入が続きました。ました。連銀がここまで必死なのは、短期金融市場混乱進行が米国債市場不安定化につながるからです。

  翌日物レポ金利が9月17日に急騰した原因は以下の3つと報道されています。 ① 16日が企業の連邦法人税の会計年度末支払い期限であった。 ②財務省から多額の米国債購入を押し付けられていた銀行が、16日に前週購入した米国債受け取りと引き換えに$780億ドルを支払う日であった。  財務省は今年に入り毎月平均$63.9bn(2017年の月平均$19.6bnの3倍超)に急増した新規国債発行をしている、もはや米国債の売却先がないために、銀行に購入を押し付けている。 ③14日のサウジアラビア石油施設攻撃による16日の原油価格急騰での原油及び金融市場混乱による損失補填の為の短期借入資金需要の急増。

  背景に、多額の米国債購入を押し付けられた銀行のキャッシュ不足があります。この構造的問題解決の為には、銀行のFRBに預ける準備金を増額させるためのFRBの更なる利下げよりも、先ず銀行保有米国債の買い入れの再開が急務であると多くのエコノミストが提案しています。FRBのパウエル議長も次回10月18日のFOMCでの対応策を示唆しています。

  いずれにしても、米国金融市場自体が深刻な状況に向かっているのでしょうか。

(これらは、フィナンシャル・タイムズ紙、ウオールスストリィ―ト・ジャーナル紙、エコノミスト誌などの記事を参考にしています。日本のメディアはこうした現実をあまり報道していません。写真は日経ビジネス)