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「対韓貿易戦争は、日本の輸出産業及び安倍政権に大打撃」2019年08月17日
7月4日という参議院選挙の告示日に安倍首相は韓国向け半導体材料輸出規制を発表しました。当然、徴用工問題に対する日本の反撃であると世界のメディアは見ています。加えて、参議院選挙を見据えて、韓国からの制裁や賠償金要求に苦しむ日本の防衛関連企業からの参院選での自民党支援を獲得する為でもあったと思われます。 その後韓国におけるアンチ安倍、日本製品不買運動等、反日感情高揚の波が韓国全土に急拡散していますが、それは、徴用工問題に対する日本の反撃に対する反感とは異なる「虎の尾を踏んでしまった」ことを認識する必要があります。それは、トランプ大統領の中国製品輸入関税引き上げの様な中国企業にとって非致命的な攻撃とは異なり、韓国代表企業に致命的打撃を与える半導体材料輸出規制という遥かに攻撃的な貿易戦争を安倍総理が仕掛けたと韓国側が受け止めているのです。 韓国にとってサムソンやSKハイニクス等半導体メーカーの輸出額は韓国輸出総額の約21%を占める基幹輸出品です。その半導体製造に不可欠な主要3材料であるレジスト(感光材)の90%超、フッ化水素(エッチングガス)の44%超、フッ化ポリイミドの90%超を日本からの輸入に依存している故、半導体材料輸出規制は韓国のプライドと産業本体を狙い撃ちしたと受け止められており、徴用工問題など、歴史認識問題にはあまり関心のなかった若者の反日感情までに火をつけています。 もう一つの側面は、日韓関係悪化が、中国にとってはありがたい状況を生み出しています。すでに日本からの半導体調達が困難になったサムソン等韓国企業は中国メーカーや欧州メーカーからの調達に切り替えるべくサプライチェーンの見直しを開始しています、日本からの調達困難化は韓国企業を中国に向かわせ、中国経済に大きな恩恵を与えていきます。 更には、日本が韓国をホワイトリストから除外した事により、この動きは半導体以外の全調達部品に拡大し、韓国企業の日本からの2018年部品輸入総額522億ドルの約97%が今後消滅、中国からの輸入に移行する見通しとゴールドマンサックスが発表しています。日本は大きな輸出市場を失う事になるのです。 これに関して、WTOの前理事長のPascal Lamy氏は「戦時中の賠償問題という本質的政治問題に対し、通商分野で対抗するのは非常に由々しき事である。通商分野を武器化するトランプ大統領のガン細胞が安倍総理に転移しているのでは?」とまで述べています。 参考までに、日韓貿易戦争に関してFT紙,WSJ紙,China Daily紙でも以下ヘッドラインにて大きく報道されています。 “Inside the lose-lose trade fight between Japan and South Korea” -Samsung’s chip business faces ‘burdens’ from Tokyo’s new export control- (FT紙,2019/08/05) “South Koreans vent anger with growing boycott of Japanese goods” -Dispute between Tokyo and Seoul over wartime labour escalates into trade war- (FT紙, 2019/08/07) “Japan approves S Korea chip material export but tension remain” -Move will ease concerns that new curbs by Tokyo would disrupt supply chains- (FT紙、2019/08/08) “ROK president calls for cooperating with DPRK to create peace economy amid trade row with Japan” (China daily紙、2019/08/05) “S.Korea removes Japan from whitelist of trusted export partners” (China Daily紙、2019/08/12) “South Korea Kicks Japan Off List of Favored Trading Partners” (WSJ紙, 2019/08/12) “Korean pension fund reviews Japan investments over ‘war crimes’” -Economic fallout from dispute between Tokyo and Seoul over reparations worsen-(FT紙, 2019/08/12) “Chinese chip industry set to benefit from Tokyo export controls” -Spiraling dispute between Japan and South Korea opens door for Chinese tech foothold- (FT紙、2019/07/30) (写真はロイターです)
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