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参議院拉致特新潟視察報告2014年07月14日
参議院拉致問題特別委員会は6月25日に新潟市を視察しました。その概要をまとめましたので、報告いたします。
(1)拉致現場視察
拉致被害者の横田めぐみさんの拉致現場を視察し、新潟県警本部の新島警備部長から説明を受けました。
新潟市立寄居中学校 |
警察犬が匂いを追えなくなった地点 | 旧横田邸前 |
新潟県警の情報提供協力の立て看板 | 寄居浜・海岸に続く道 |
(2)関係者からのヒアリング
拉致被害者の曽我ひとみさん、蓮池薫さん、救う会全国協議会の平田事務局長、特定失踪者問題調査会の荒木代表、救う会新潟の高橋会長、特定失踪者のご家族から説明・意見をうかがいました。
(主な発言)
曽我ひとみさん
・日本に帰国して10年余りが経過した。最近、日朝間の動きに明るい光が差してきたように見える。佐渡に帰ってくれば母について何らかの情報があるかと思ったが、なかなか情報が得られない。母はすでに高齢であり、一日も早く帰ってきてほしい。今までも先生たちに助けていただいたが、今後も力をお借りしたい。
・夫(ジェンキンスさん)は現在74歳だが、今も仕事を続けている。年金がないので、今後のことを心配している。娘二人には日本語の先生が付いてくれ、日本語や日本社会の仕組みを以前より理解するようになった。娘たちも日本にいい印象を持っている。私は元気なので、介護の仕事をできる限り続けていきたい。
・夫の場合は、娘たちとは違い、日本語を覚えなかった。日本社会の仕組みや年金のことなども理解できていない。朝鮮語で説明しようとしても、北朝鮮になかった仕組みを説明するのは難しい。英語しか話せず、時々、ストレスを発散したいのではないか。英語を話せる人と、月に1回程度、会話できる機会が得られればありがたい。
・日本に帰国した当初、2年間、家族と離れていた。私は拉致されて無理やり連れて行かれたので、北朝鮮に帰らなくてもよい。しかし、向こうで一番大変なときにできた家族が不幸になったらどうしようかと、一人で泣きながら悩んでいた。最終的に方向性が見えたときは、待っていて良かったという気持ちになった。
蓮池薫さん
・私が国会の特別委員会の委員と、このような懇談の機会を設けるのは初めてである。日朝交渉に動きがある中で、何としても拉致問題の解決を実現してもらいたい。これは政府の力だけでなく、多くの国会議員、国民が力を合わせなければならない。北朝鮮との交渉にスキがあってはならない。これを訴えることを目的として、本日の懇談に出席した。
・北朝鮮との交渉については高く評価したい。リスクを負っての決断だと思う。期待が持てる。北朝鮮の対外関係を踏まえた上で、拉致問題の情報収集という点で中国・韓国との協力が必要であり、日本が中国や韓国といい関係を維持することは拉致問題の解決のために必要である。
・日朝合意の中で、「包括的」や「最終的」という言葉があるが、ここには拉致問題、日本人配偶者問題、遺骨問題などが入り、全体の進展があれば振り切ってしまおうとする北朝鮮の意図が見える。認定された拉致被害者に関する新たな情報はない。拉致問題をうすめて、なんとなく押し切ってしまおうとしているのではないか。リスクを負っての決断に被害者の一人として期待する一方で不安もある。日本全体の知恵を集め、意思を見せなければ、北朝鮮にだまされかねない。
・拉致問題の解決については、日本国民が納得することはもちろん、被害者家族が納得することが決定的に重要である。少なくとも私たちが北朝鮮で見聞きしたことについて、今のままでは納得できない。我々だけが帰ってきて他の人は情報がない、死んでいるなどと言われても、納得するわけにはいかない。それが拉致問題解決の最低限のラインである。
・拉致被害者への支援については心強く思っている。私は現在、給付金は辞退している。北朝鮮で24年間、これはもとをただせば北朝鮮の犯罪であり、北朝鮮が損害賠償を払うべきである。日本は拉致を重大な犯罪であると位置付けているが、それで終わったら恥さらしである。当然、被害者全員に対する損害賠償が必要である。賠償の算定が難しいというが、日本国家として筋を立ててほしい。それで初めて「自分」を取り戻すことができる。今すぐの話ではない。そこに私は老後の期待をしている。
・日朝合意については、リスクを負っての決断であり、評価している。調査特別委員会が設置されるが、日本は焦っているとの分析がある。しかし、北朝鮮と根比べをしている場合ではない。問題はこれからである。
・韓国では、北朝鮮の体制は安定しているとの分析の方が多い。北朝鮮は核・ミサイル問題よりも、人権問題の方を恐れている。ソ連や東欧諸国が崩壊したのは、力ではなく思想的なものだった。その点、日本との関係では、拉致問題さえ動かせば済むため、精神的負担が少ないのではないか。日本との国交正常化にメリットがあるとするならば、今まさにそれが現実化する時期であろう。
平田隆太郎 救う会全国協議会事務局長
・北朝鮮のこれまでの説明では、拉致被害者を偶然に連れてきた、秘密がもれることを防ぐために連れてきたとしているが、ここに重大なウソがある。横田めぐみさんを拉致する30分前に女子高生が何者かにつけられており、若い女性を連れてこいという指令があったことを北朝鮮はぼかしている。
・横田めぐみさんの拉致現場で、警察犬が匂いを追えなくなった地点があったと思う。そこから担がれて海に連れて行かれ、ゴムボートで子船に乗せられた。子船のエンジン音は付近の住民が聞いており、子船が母船へと向かったことが明らかになっている。
・曽我さん親子が拉致された1978年の夏に拉致された事案はすべてアベックだった。曽我さんだけが母と子であったが、母・ミヨシさんはズボンを履いていた。北朝鮮は曽我さんに、お母さんは新潟で元気にしていると伝えていた。
荒木和博 特定失踪者問題調査会代表
・大澤孝司さんについては、警察から次に拉致認定される二名に入っているとの話があった。曽我さんの帰国の前に新潟県警が、大澤さんは拉致ではないかと言っていた。中村三奈子さんは韓国で失踪しており、誰かが何かの意図で拉致した疑いがある。山本美保さんのケースにおける警察が行ったDNA鑑定の説明には多くの矛盾がある。
・こうした拉致事案に共通するのは、海から上陸した工作員だけでは拉致を実行するのは不可能ということである。その土地の事情がわかっていなければ拉致はできず、日本国内に実行犯又は協力者がいる。政府は、こうした日本国内の実行犯又は協力者の摘発に力を入れるべきで、それは北朝鮮に対しても圧力になるはずである。
・警察は調査会の活動に関心を持っているようであるが、警察から調査会に情報が入ることはない。山本美保さんの事案では、警察は矛盾に満ちた答弁を繰り返している。
大澤昭一さん(大澤孝司さんの兄)
・40年前に拉致をされたが、当時はまだ拉致という言葉はなかった。日曜の夕食後に立ち寄った店で目撃されたのを最後に行方不明となった。新潟県警に捜索してもらったが行方はわからなかった。その後、曽我さんが発見されてから、特定失踪者問題調査会に加わり活動を始めた。
中村クニさん(中村三奈子さんの母)
・行方不明になってから16年になる。長岡の予備校に行くことになっていたが、入学金を家に置いたまま、3万円を持って韓国に渡航していた。韓国に何度も行って、大使館や韓国警察に捜索を依頼したが見つかっていない。
森本美砂さん(山本美保さんの妹)
・山梨県警から身元不明の遺体とDNA鑑定で一致したとの連絡があったが、警察の対応はあまりにもおかしい。DNAの試料は2回の鑑定でなくなってしまい、山形大学における保管状況もとても鑑定で使用できるようなものではなかった。非常に残念であり、不信感を持った。今回の北朝鮮の再調査によって、北朝鮮側から何らかの情報が入ったときに、日本国内でそれを阻止しないでほしい。
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