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  • 【2008年3月16日】

    2008.3.16 サンデー毎日
    岩見隆夫のサンデー時評第502回

    9・11テロをめぐる「疑念」の扱い方

     二月二十六日、ブリュッセルの欧州議会会議場で、〈9・11独立調査委員会を求めるヨーロッパ〉という名称の討論会が催された。

     六年半前の9・11米同時多発テロの真実はまだ解明されていないと考える政治家、学者、ジャーナリストたちが企画したものだ。パネリストは、イタリアの欧州議会議議員、ジュリエット・キエザさん、ドイツのアンドレアス・ビューロー元国防相のほか、米国の学者、イタリアのジャーナリストらである。

     日本からは民主党国際局副局長の藤田幸久参院議員が参加した。これに先立ち、二月二十一日、国会わきの憲政記念館では、岩國哲人さん、鉢呂吉雄さんら民主党衆院議員の呼びかけで、〈9・11に関する勉強会〉も開かれている。
    〈近年、「テロとの闘い」の原点である9・11の真相に関する議論が、欧米諸国を中心に高まっています。また、日本政府が「犯罪」と規定するこの事件の捜査内容も、犠牲となった日本人のご遺体確認方法なども明らかにされていません。……〉というのが勉強会の趣旨だ。

     日欧で最近起きているこうした真相追求の動きはほとんど報道されないが、何を意味しているのだろうか。9・11事件が米政府の公式見解通りではなく、多くの謎に包まれているという指摘は以前からあった。

     本も何冊もでている。討論会のパネリストの一人である米国の学者、デヴィッド・グリフィン著『9・11事件は謀略か「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権』(緑風出版)、童子丸開著『「WTC(世界貿易センター)ビル崩壊」の徹底究明 破綻した米国政府の「9・11」公式説』(社会評論社)、木村朗編『9・11事件の省察』(凱風社)など。また、パネリストのキエザさんは『ゼロ――9/11の調査』というドキュメンタリー映画を製作、昨年のローマ国際映画祭で評判になった。

     これらに目を通すと、だれでもヘンだなという気持ちにさせられる。『ニューヨークタイムズ』とCBS共同の世論調査によると、米政府が何か隠していると思う人五三%、ウソをついていると思う人二八%、という数字もある。
    〈ブッシュの戦争〉が国際的な批判にさらされるなか、戦争の起点になった9・11テロ事件への疑念に改めて火がついた形だ。裏に何かが隠されているのか。

     日本の国会でも、一月十日、つまりテロ対策特別措置法が衆院本会議で成立する前日だが、参院外交防衛委員会で民主党の藤田幸久さんが質問に立ち、
    「9・11はアルカイダあるいはアルカイダのみによる犯行なのか」
     と尋ね、福田康夫首相は、
    「外国政府などが作成した公開、非公開情報を総合的に勘案して、9・11は国際テロ組織アルカイダによって実行されたものと判断している」
     と答えた。藤田さんは、
    「しかし、いろんな疑問の情報が世界の有力な指導者の方からも出されている」
     として、パネルや写真を示しながら①ハイジャックされたボーイング757型旅客機がペンタゴンに突っ込んだとされているが、できた穴は主翼の幅三十八㍍よりずっと狭く十九㍍しかない。機体の残骸もない②WTCビルの崩壊も航空機の突入だけでなく、計画的に爆破された形跡が濃厚だ③WTCと道を隔てた四十七階建ての第七ビルが、突入の八時間後、奇怪な崩壊をしている――などを指摘した。

     藤田さんの主張は、9・11は二十四人の日本人の命も奪った。〈犯罪〉なのだから、疑問があれば徹底追及するのが政府の責任ではないか、という点にある。しかし、個別の疑念について、福田首相や関係閣僚から答弁らしい答弁はなかった。

    新聞やマスコミも無視 安全保障に鈍感な日本

     約四十分の藤田質問はNHKテレビで全国に中継され、まったく異なる二通りの反応があった。一つは、某週刊誌が、
    〈国会は珍獣の館――9・11陰謀説をブチあげた藤田幸久に「あの人ダイジョブ?」〉
     の見出しで報じたように、荒唐無稽扱いである。答弁席にいた閣僚の一人も、
    「あの質問は、民主党がトンチンカンな政党という印象を与えるのに役立った。退屈だったが、その点で喜ばしい」
     ともらしたそうだ。もう一つの反響は、藤田さんのもとに、
    〈国会の質疑に感動しました。あなたはサムライだ。この件の真実を知らない人があまりにも多く、無知な方からの誹謗中傷があると思いますが、無視して頑張ってください〉
     といったメールが次々に届いた。
    ほとんどが、
    〈せっかくのご質問が、新聞やマスコミでまったく無視されているのは予想通りです。しかし、ネットの世界では勇気ある藤田先生の名前が一気に知れ渡り、参議院ビデオライブラリーではアクセスが集中し、一時視聴しづらい状況になったそうです。これからも鋭い追及を期待しております〉
     などの激励メールだった。外国からも何通か舞い込んだ。

     この相反する反応のどちらが正常なのか。はっきりしていることが一つある。それは日本と違って、欧米の有力者たちは9・11への疑念について、おおっぴらに明快に発言していることだ。たとえば、9・11当時ドイツの連銀総裁(日本の日銀総裁)だったエルンスト・ヴァルテケさんは、
    「ニューヨークとワシントンの攻撃に加わった人々が、欧州の証券市場の『テロ・インサイダー取引』にかかわって利益を得ようとした多くの事実が明らかになっている。直前に、航空会社、保険会社、商社や金、石油市場で不可解な売買が行われている。

     と新聞インタビューで言い切っている。テロの当事者だけでなく、多くの人々が直前に情報を入手し、画策したり便乗したことをうかがわせるのだ。ブッシュ大統領は何が起きるか知っていたが阻止しなかった、と公言する米国の政治家もたくさんいる。

     とにかく、日本は政府も政治家も安全保障にかかわる問題に鈍感すぎる。精力的に情報だけは集めておかないと、事態が急展開したときに即応できない。

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