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  • 【2004年5月8日】


    メディアトピックス

    「近聞遠見:菅は辞めたほうがいい」 岩見隆夫

    毎日新聞朝刊
    2004年5月8日

    「菅さん(直人・民主党代表)は他人を批判しすぎる。だから、女性に嫌われるのだ」
     と小泉純一郎首相が漏らすのを聞いたことがある。たしかに小泉は批判者に反論することはあっても、自ら他人を名指し批判したことはほとんどない。そう心掛けているのだろう。

     だが、与党党首なら鷹揚(おうよう)に構えていてもいいが、野党党首は違う。批判が本領である。批判の仕方は工夫を要するが、ときには名指しも必要だ。

     その点、今回の年金未納問題で、菅が、
     「少し(攻撃を)やりすぎたとの反省もないわけではない。今後、個人的なことについて(批判を)言うことは控えたい」(6日の記者会見)
     と述べたのは、牙を抜かれた野党第1党党首の姿をみるようで、情けない。

     未納閣僚批判をやりすぎたとは、世間のだれも思っていない。菅自身の未納が負い目になり、やりにくくなっただけの話で、党首の資格に疑問符がついた。民主党内で菅の辞任論がでるのは当然である。ところが、同党の河村たかし衆院議員(愛知1区)が、
     「われわれは挑戦者だから、闘い続けないといかん。帝国陸軍もそうだったけど、組織保存を前提にしたらだめだ」(民放テレビで)
     と危惧(きぐ)を語っているように、年金制度改革法案処理をめぐる与野党の奇妙な決着は、民主党が挑戦者の立場を捨てた、と疑われても仕方ない。菅問題の広がりを封じる与野党の合作劇とも映る。

     政党トップのあり方が深刻に問われることになった。今回の菅の外遊に同行した藤田幸久同党国際局長(比例代表東京)が著書「政治家になりたくなかった政治家」(03年10月・ジャパンタイムズ刊)のなかで興味深い指摘をしている。

     藤田は長年、<難民を助ける会>など国際ボランティア活動に従事したあと政界入りした異色の議員で、NGO(非政府組織)と政治の橋渡しをめざしてきた。従って、組織論にくわしい。

     一昨年のことだが、あるシンポジウムで日産自動車の塙義一会長と同席した折、藤田が、
     「日産の改革の成功は、ゴーン社長よりも、社内の反対を抑えて彼を迎える環境と段取りをつけた塙さんによるところが大きいのではないですか」
     と問いかけると、塙がこう答えたという。

     「古い体制を取り除く仕事は、トップ自身が行うものです。幹部は改革の必要性はわかっていても、自分からリーダーシップは発揮しない。中堅は改革しなければと思って幹部に相談しても、幹部はあまり応えてくれない。そこで中堅は混乱する。若手は上で何が起こっているかわからない。従って、トップがやらなければ、他の人にはできません」

     会社の<はらわた>にあたる中堅が改革に思い切って取り組める環境を作り、やらせる、とも塙は語った。トップの要諦(ようてい)である。

     <小泉さんであれ、菅さんであれ、必要なのはゴーン社長の役割以上に塙会長の役割ではないかと強く感じた>
     と藤田は書いている。

     自民党の<はらわた>を、小泉はしっかりつかんで改革の実をあげているかどうかも気になるが、民主党の<はらわた>は、それ以前に菅への不信感を強めている。
     両トップの差が歴然としてきた。これでは選挙が戦えない。菅は辞任して出直すしか、民主党のためにも、菅の今後のためにも道はないと思うが、福田康夫官房長官に先を越され、タイミングを失したか。(敬称略)

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