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参議院外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録2008年04月08日
活動報告
2008年4月8日
参議院外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録
○藤田幸久君 民主党の藤田幸久でございます。
今日は、高村大臣そして石破大臣、お2人原則ということで質問をさせていただきたいと思います。今日は9.11についてはいたしませんので、別の質問をさせていただきます。次回、お楽しみということで。
今日は、まず北朝鮮についての御質問からさせていただきたいと思います。
いよいよ米朝間の協議も行われ、齋木アジア局長も今日から出発というようなお話も聞いておりますけれども、最近、私の方で耳にした話でございますが、いわゆる1970年に起きましたよど号のハイジャック事件の犯人、日本人の4名が現在北朝鮮におりますけれども、そのうちの4名が日本への帰国の意思を示していると。帰国をすれば当然ハイジャック事件としての逮捕も受け入れるという覚悟を示して、そういう意思表示をしているという情報を聞いておりますけれども、高村大臣、こうした情報を御存じでございますでしょうか。高村大臣。
○副大臣(木村仁君) よど号ハイジャック犯人は、我が国の刑法上、重大な罪を犯した者であります。したがって、従来より北朝鮮側に身柄の引渡しを求めると同時に、関心を持って関連の情報を収集しております。
収集した情報の詳細について申し述べることは差し控えたいと存じますが、委員が御指摘されましたような情報があることを承知しております。
○藤田幸久君 私は2月にEU議会を訪問してまいりましたが、そのときにお会いをしたイギリス出身のフォード議員という方から先週御連絡をいただきまして、北朝鮮でこの4名のよど号ハイジャック犯のうちの2人、つまり小西さんという方と若林さんという方と1時間ずつお会いをされたと。そして、中国に移動された後、お電話をいただいたわけですけれども。
今までハイジャック犯、よど号に関していろいろな交流があったと思いますけれども、北朝鮮側の方は言わば亡命者を出国させるということに関するためらいがあったというふうに聞いておりますが、少なくともEU議員がこの2人のハイジャック犯に会わせることを結果的にさせたということと、それから、そういうハイジャックに関する逮捕というものを覚悟をして帰国ということを意思表示をしたということは、これは何かしらのシグナル、つまり今までのこのよど号ハイジャック犯に関するやり取りとは違った状況というものが察せられるわけですが、そのことについて、高村大臣、いかに評価をされますでしょうか。
○国務大臣(高村正彦君) 日本は従来から引渡しを求めてきたわけでありますから、そういう方向に進むとすれば、それは我が方が求めてきたことにその面ではこたえるということになることだというふうに考えるわけでございます。
○藤田幸久君 その際に、今問題になっておりますいわゆる北朝鮮のテロ支援国家指定の解除という点との関連があるわけですけれども、日本側は当然のことながらいわゆる拉致問題との関係ということを中心に対応してきたと思いますけれども、アメリカの方ではこのよど号ハイジャック犯が北朝鮮にいるということとの関係も項目の1つあるいは要素の1つとしてきたと思うわけですけれども、今大臣がおっしゃったような、引渡しを要求してきたので、そういう方向になればそのこと自体はマイナスではないということでございますが、ただその際に、このことがテロ支援国家指定解除につながるということは芳しくないと思いますが、したがって、このよど号のハイジャック犯が入ってくることとテロ支援国家指定解除というものは、これは別個の問題だということを、仮にそういう状況になることがあるならば、アメリカ側に強くその点については明確に指摘をして要請をしていただくべきだろうと思いますが、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(高村正彦君) 米国によるテロ支援国家指定解除の要件については、これはすぐれて米国内法令の解釈の問題でありまして、よど号ハイジャック犯人の取扱いは米国の国内法との関係でどのように整理されるかについては、政府としてはこれを有権的に解釈する立場にはないわけであります。
いずれにしても、我が国としては従来から北朝鮮に対してよど号ハイジャック犯人の早期身柄引渡しを求めてきており、今後も早期引渡しを求めていくことには変わりないわけであります。米国は、テロ支援国家指定解除の問題については日本側と十分に協議するとの立場であり、この問題を含め米国とは緊密に連携していく考えでございます。
○藤田幸久君 ありがとうございます。
ということは、その場合の日本側との協議の際に、一義的には国内法でございますから有権的に解釈をするのはアメリカ側にありますけれども、その協議の際に、日本の従来から主張されておられる私どもの共通の思いというものを主張していただくと。仮に、テロ支援国家指定解除ということと切り離して、このハイジャック犯の帰国ということが仮にそういう方向に流れますと、これは拉致問題等に関して若干膠着した状況の中でこの半年なり1年間なり推移がしておりますけれども、交渉事の動きを解いて動き出す1つのきっかけにも逆になり得るんではないか、その解除にならないという前提での話ですけれども。交渉事ですから全部つまびらかにお話しになることはできないかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、いろいろな創造的な外交交渉の中での1つのポイントにもなり得るのではないかと思いますが、その点については大臣はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(高村正彦君) 日本は、従来から拉致問題の進展がない場合はテロ支援国家指定解除をしてほしくないと、そういう立場であるということはアメリカ側はよく承知していると、こういうふうに思います。そういう立場に立って、アメリカ側は解除する場合には日本とまた相談すると言っていますので、日本は日本の立場でいろいろお話しすることになるだろうと、こういうふうに思います。
○藤田幸久君 ということは、解除なしに帰国が実現した場合には、まさに拉致問題とこのテロ支援国家指定ということが、日本の立場からいいますとより直接的な関係付けが明らかになるという意味では、そういう観点からの意味もあるのではないかということを指摘しておきたいと思います。
その上で、今日はちょっとほかの質問事項がありますので移っていきたいと思いますが、チベット問題について大臣にお伺いしたいと思います。
今日、資料をお配りしておりますが、その1つが、ダライ・ラマとG8政府首脳との会見の記録というものが2枚紙で出しております。実は、3月の半ばに私どもの外交防衛委員会で、私の方で外務省に対して、ダライ・ラマとG8の首脳との会合というものがかなり頻繁に行われていると、日本以外については相当頻繁に行われているので資料を出してほしいというふうにお願いをしましたところ、多分2日後ぐらいに出てきたのが1枚目でございます。
この1枚目を見ますと、アメリカはブッシュ大統領、英国はストロー外相、ドイツ・メルケル首相、イタリア・ダレーマ外相、カナダ・ハーパー首相とありますが、フランスとロシアは情報なしということになっています。
ところが、2枚目を御覧いただきたいと思います。つまり、私はこの1枚目では資料にならないというんで改めて資料要求をしましたら、すぐ数日後に出てきたのがこの2枚目でございます。
これを御覧になると非常に明らかだろうと思うんですが、カナダのハーパー首相、アメリカ・ブッシュ大統領、現ブッシュ大統領、それからお父さんのブッシュ大統領、ドイツのメルケル首相、カナダのマーチン首相、アメリカ・クリントン大統領、イギリスのブレア首相、フランス・ジョスパン首相、フランス・シラク大統領、下の方、これ間違いですが、イギリスのメージャー首相、それからドイツのワイツゼッカー大統領。このほかにも閣僚との面会が出ております。
つまり、G8の中で首脳がダライ・ラマと会っていないというのは日本だけなんですね。これは、日本が中国と1番近いという理由とかいろいろあるにしても、今このチベット問題というものが今度の洞爺湖サミットも含めまして非常に大きな問題になっている中で、そして日本政府の方でも、この1種の仲介役といいますか調停役というか、そういう立場でも役割を果たしたいという発言がこれまで出てきておりますけれども、直接やはり会っていなくて仲介役なり役割を果たすということは、私は、日本にとって中国は極めて重要な国であるがゆえに、その話ができるようなそれなりの実績、行動をしておかなければ逆にマイナスになると思うわけですけれども、結果として、G8の中で日本だけがだれも、多分大臣以上も会っていないと思います、現職以上の大臣が。こういう状況というものについて、高村大臣、どうお考えになるかということと、こういうことが今後仲介、和解あるいは話合いの立場を担おうとする場合にはハンディになっているんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(高村正彦君) 政府といたしましては、ダライ・ラマ氏と面会することについては、従来からチベットをめぐる様々な要素を総合的に勘案しつつ対処することとしてきており、今後も同様に対処していく考えであります。
仲介、和解というのはそれだけの条件が整わないとできませんので、私自身は直ちに仲介、和解に乗り出すといったことはないと思いますが、私が従来から言っているのは、ダライ・ラマ14世と中国側がお互いに話し合うということになればそれは大変結構なことであると、それが私たちの立場で、今直ちに仲介、和解をできるような立場ではないと思います。
ただ、中国側に対しては、例えばチベットの状況についてもっと情報をオープンに出したらどうですか、透明性をもっと増したらどうですか、そういうことはいろいろ公の場でも私自身が言っておりますし、そして、そういう中で、また中国の方と会った機会には、私なりに公で言っていることだけでなくて私の考えをいろいろ伝えているところでございます。
○藤田幸久君 今、条件、つまり総合的な対処が必要で、いろんな条件が必要だとおっしゃいましたが、私がこういう事実を表明しましたのは、要するに前提条件に欠けているということだろうと思うんですね。
つまり、中国にいろいろ会うたびに言っているという場合に、今まで日本はどうしてもこれだけ見ても偏っているし、やはり対話というのは直接会うということがやはり1番重要なことでございますから、そういうことをしないでいてやはり話をするといっても、やっぱり1種の色眼鏡で見られてしまう。
人権というものは、これ普遍的な問題でもございますし、日本が1番重要視している外交の柱でございますから、客観的にどう見られるかということも重要でございますので、そういう観点からいいますと、やはり、例えば来日をされた場合に、仮に総理でなくてもしかるべき人がやはり会って、これは国際的な問題にオリンピックも含めて各国なっておりますので、その際に日本として、やはり公平中立、客観的にいろいろなことを物を言う立場で今までも来ているし、これからもそういう選択肢があるんだということを示す必要があるのではないかと。
例えば、今後もダライ・ラマ14世自身が来日をすることもあるかと思いますけれども、そういった際に接触なり話合いをするなり、そういう機会というものをこれまでどおりに総合的に考えないのか、総合的にこれからは考えることも検討されるのか、その点について大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) これまでどおり総合的に考えてまいりますと申し上げているわけであります。
○藤田幸久君 今、昨日ですか、また聖火リレーについてのいろいろな報道がされておられますが、このダライ・ラマの最近のコメントを見ておりましても、オリンピック北京大会を支持し、武力行使の停止とチベット問題の平和的解決を訴え、分離独立でなく民族の自治と信仰の自由を求め中国政府に話合いを呼びかけていると。それから、在外チベット人らによる北京オリンピックへの妨害活動が相次いでいることについて、すべてのチベット人はオリンピックを妨害する行為は取るべきでないという声明を出しておられます。
こういったことについては、逆に日本政府としてもやはり評価をするような声明を出すということも、私は日本政府のこれからいろいろ総合的に対応する意味では芳しいことではないかと思いますけれども、こういう声明に対する評価とそれに対する日本政府としての対応について、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 特別、声明を出すかどうかということはともかくといたしまして、今日閣議後のぶら下がりの記者会見で、ダライ・ラマ14世が、聖火リレーを暴力的に妨害するようなことはやめた方がいいと、そういうことを言っておられるということについては評価する観点から紹介をしておいたわけであります。
○藤田幸久君 ありがとうございます。是非そうしたいろいろな動きをこれからも継続していただきたい。それが日本の外交にとっても、洞爺湖サミットばかりではなくて国益になると思いますので、お願いをしたいと思います。
それでは、石破防衛大臣に、イージス艦「あたご」の衝突事故についてこれから大臣御自身にいろいろとお伺いをさせていただきたいと思います。
今日資料としてお配りしておりますのが、基本的に3月21日のいわゆる中間報告についての紙と、それを時系列的に分かりやすいチャートが3月22日の朝日新聞の紙面に出ておりましたので、それを対照しながら御質問をさせていただきたいと思っています。
まず、この中間報告の4ページ、つまり当直員による漁船の視認状況、目で確認をするという意味だろうと思いますが、そこで当直員の方々の聴取の結果が出ています。
それによりますと、まず3時30分ごろ、右の方に水平線上に白灯を視認したということになっています。白灯というのはマストの上の光だそうでございまして、この段階で既に確認をしているんですね。それで、3時40分にはその白灯が更に3個を視認し、電話で当直士官、つまり、船長は当時仮眠を取っておりましたから、責任者にその報告をしたということでございます。
それから、3時48分にこのブリッジの方に登って、目で右30度から50度にかけて赤い灯、紅灯を3、4個確認をしたということになっています。この紅灯を確認したということは、つまり右から来ているということを確認したということですね、石破大臣。右から来たということは、私もちょっといろいろな専門家に伺いましたけれども、極めて重要だと。
例えば、ハイジャック犯が、シージャック犯が来る場合には右から来ると。それから、シーシェパードが来る場合も右から来ると。それから、例えば船の人たちが眠っていても右から来る可能性があると。つまり、右を気を付けろというのがこの海軍の常識だと。つまり、右から来ているということは、そちらが権利があるんで、仮にぶつかった場合も向こうが優位だと。だから、シーシェパードも右から来ると。
したがって、赤灯ということを確認したということは、これは極めて重要なことであるんで、すぐにレーダーの確認をしていただろうというのが、これは海自の関係とか海保の関係とか、いろいろな方々の証言その他から明らかになったんですね。
そうしますと、この3時48分の段階で、この朝日新聞のチャートを御覧いただきますと、この段階で9キロから11キロですけれども、すると、普通は、その視界に特に右から船が確認をされたということになっておれば、まず船長を起こすというのがほぼルールだと聞いておりますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(石破茂君) 一般的に、委員御指摘のように、そういうような状況になれば、艦長というのは服務規則で、その艦の首脳であり、すべてのことに責任を負うというふうに規定をされております。ですから、起きるとか起きないとか、起こすとか起こさないとか、そこまで書いてあるわけではございませんが、一般的にこういうような状況の海域に差しかかったとすれば、最高の首脳である艦長が操艦を行うということだと聞いております。そのことが、すなわち直ちに起こさなかったこと、あるいは仮眠を取っておったこと自体が服務規則に違反するということではございませんが、一般的には委員御指摘のようなことが行われていると承知をいたしております。
○藤田幸久君 まさにそのプロセスにおいて、当然レーダーはあるわけですから、このたまたま新聞の左側に図面があります、艦橋、つまりブリッジの平面図とありますが、これ大体、非常に狭い空間だそうですね。その中に10人とかいるわけですね。それでレーダーもあると。CICの方にもレーダーがあると。当然、この自衛官の皆さんは暗い中でも見える双眼鏡も持っておられますし、この距離であれば、この時間であってもはっきり明らかに見えていると、レーダーにも当然映っていたはずだと。したがって、当直士官にも当然了解しているものとしてこの考えは報告していないと下にありますけれども、当然、当直士官も知っていたし、レーダーでも確認をしていたという、そうでなかったはずがないというふうに一般的には言えるんじゃないでしょうか。
大臣、お詳しいから答えていただきたいと思います。
○国務大臣(石破茂君) それが清徳丸と特定できていたかどうかということは別といたしまして、そのような船が存在をしているということはレーダーあるいは見張りで確認ができているだろうというのが一般論として言えることだと思っております。
これは、これから先、捜査が進捗をし、明らかになることでございますし、私どもの調査の中ですべての者に聴けているわけではございません。ですので、断定的なことは全く申し上げられませんが、一般的に、清徳丸と特定できるかできないかは別として、映っている、そして見張りというものも見えているというのが普通だろう。
ただ、報告書にも書いてございますように、ここにも記載がございますが、見張り員が艦橋内にいたということをどのように評価をするか。通り雨があったので中にいたと、しかし通り雨がやんだら外へ出るべきじゃなかったかと、べき論としてはそういうことがございます。しかし、それと事故との因果関係について私どもとして今断定的なことは申し上げられません。ただ、そういうようなこと自体が、中にいたということ、あるいはCICに人員が十分配置されていなかったことは、見張りとして不適切であったという評価はいたしておるところでございます。
○藤田幸久君 見張りの問題ではなく、私もいろんな方、専門家お聞きしましたが、中にいてももう見えていたはずだし、清徳丸でなくても右の、つまり赤灯でこの距離に船が存在したということは、清徳丸以外であればぶつけていいという話じゃございませんから、同じことでございますんで。ということは、右側に赤灯で船がいたということは、これ船の常識からして当然対応をしていくことであったと。したがって、これ見張りの問題じゃなくて、実際この中に、見張りが外にいようが中にいようが、これだけたくさんの人がいて、レーダーも中にあるわけですね、ブリッジの中に。本当にこの辺りの距離のようですね。ですから、どなる必要もないし、もう、すぐ伝達ができる空間であるというふうに聞いております。
そこで、3時58分に移りたいと思います。3時58分というのが次の5ページにありますね。
それで、この赤灯を確認をしたと。これ大体5000メートルですね。これも海保あるいは海自の関係者ですけれども、5000メートルというのは危険領域だと、距離からして。このまま5000メートルで右側ということであれば、これは衝突の可能性があると。したがって、この段階で手を打っておくべきであるというコメント等が、あるいは認識がいろいろな方から示されておりますけれども、それでさらに、4時2分に白灯2つ、右5度水平線、舷灯は視認できないと当直士官に報告し、当直士官は了解したとありますね。4時2分で右5度というのは、大体正面からちょっと右ということのようです。そうしますと、4時2分というのは、これ5分前ですね、衝突した。5分前に対応していれば十分回避をできたんじゃないかというふうにも聞いております。
それで、ちょっと質問項目の1番に行きますけれども、「あたご」というものはそもそも回避行動というものが、例えば何メートル手前、あるいはその速力とも関係ありますけれども、何分前に回避行動を取っていれば衝突回避ができたのか。これは、「あたご」の旋回能力というのは非常に高いと、大臣御承知のとおり、もう急角度で旋回ができると。そうしますと、「あたご」の旋回能力からして、どの程度の手前で回避活動をすれば14メートルの船を回避することができたのかということについて、まずお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(石破茂君) 委員御指摘のように、戦闘艦でございますから商船よりは旋回径が勝っておる、勝っておるといいますか優れておることは事実でございます。「あたご」がほかの護衛艦よりも優れているというわけではございませんが、戦闘艦の特性からして優れているということが言えまして、旋回径は大体400から500メートルというふうに私は承知をいたしておるところでございます。
そうしますと、どの時点で回避行動を取ればよかったかということは、これは清徳丸1隻が対象ではなくて、ほかにも多くの船がおりました。ですので、断定的にここで回避行動を取っておればということは、それは、数字の上では相手が清徳丸だけであれば言えるのだと思いますが、相手の船がどのような行動を取るか、そしてまた清徳丸以外の船もおったわけでございまして、どの時点でこのような行動を取っておれば回避できたということがもう断定的に申し上げられる状況にはないのだろうと思っております。
私ども、先ほど申し上げましたように、全員から聴けておるわけではございませんので、その点において委員のお答えに、何分前にどれだけの回避行動を取っていればこの旋回径からいって回避できたということを申し上げることがなかなかできないというものでございます。今申し上げられますのは、「あたご」の旋回径というものは400から500であるということだけは申し上げることができます。
○藤田幸久君 今大臣が重要なことをおっしゃっていただきましたが、つまり、複数の船が存在をした、その複数のすべての船をレーダーは当然認識していたと、それがこの高性能のレーダーの意味だろうと思います。回避をするのは清徳丸以外も回避をしなければいけない、当然の話でありますから、1番直近の1番衝突をする可能性のあるもの及びほかのすべての船舶に対する回避活動をしなければいけないんだろうと思います。
であるならば、先ほどの話の繰り返しにもなりますが、まず、それだけ複数の船がいたならば船長を起こしてなければいけないという、これ皆さんおっしゃっていますよ、船長が起きていないということは考えられないと。まして、複数もそれだけいて、これだけの至近距離にいたのにもかかわらず、そして実際に当直士官は了解したと、当直士官が了解したのに行動を取らない限りは、当然もうこの段階では、船長以下指揮をして、減速をするなり、つまり先ほどの大臣のお話ですと、速度を落とさなければ、その清徳丸を回避するということについては何メートル手前という話になるけれども、複数の船舶がいたんで、どの程度の手前で止まったらいいかということ、あるいは旋回したらいいか分からないという話ですけれども、速度を落とせばいいわけですね、極端な話ですけれども。
ということは、済みません、私は素人ですけれども、大臣の方が詳しいけれども、ただ、どう考えても対応してなかった。そして、このチャートが非常に分かりやすいんで申し上げますと、この3時58分から4時6分の間の8分間、この間、あるいは4時2分ということも出ていますけれども、具体的に対応してないと。
4時2分の、5ページに戻りますけれども、中間報告、当直士官は了解をした。それから、さらに4時4分の段階でも、CIC、これは別の部屋ですね、ここからも右5度正面の方に何か見えないかと聞かれたため、右30度の左に動く目標から目を移したとあるんですが、これ大臣、レーダーというのは一緒に映っているわけですよね。それで、これだけ近くなって、しかも、私が聞いている限りでは、これだけの人が乗っていればもう目視で、もうほとんどの船が大体目視ができたと。こちらからこちらに目を移したからこちらを見失ったという話じゃないと思うわけですけれども、こういう記載がされていると。
それで、さらに4時5分ごろまでに、当直員が右5度及び右20ないし50度の方向に数個の灯火、これは白灯及び紅灯ということですから、マストも見えたし右から迫ってくるのも複数見えたと。そうしますと、右から来るということはもうこれは危険状態で、これだけの距離の中ですから、当然、艦長、当直士官以下、このすべて目に見える船に対する対応ができていたはずですけれども、これ、してなかったということはどういうことなんですか。
○国務大臣(石破茂君) どうすべきであったかという議論はしております。
ただ、これはもう因果関係にかかわることで、まさしくそれが過失の有無そして責任の軽重に直結いたしますので、これはもう海保の捜査が明らかになるまで私として申し上げることはできないのでございます。
ただ、あくまで一般論ですが、委員おっしゃるように、それでは速度を落とす、大きな船が右に左に曲がりますと、まあこの場合には右に曲がることになるんでしょうか、1隻は回避できてもほかのがぶつかったかもしらぬといういろんなケースがあるわけでございます。だとすれば、もう速度をぎりぎり落として、ある意味止まるというようなそういう選択もなかったのだろうかということは一般論として言えるんだろうと思っております。
そのときに艦長が仮眠を取っておったこと自体、もちろん起きているべきでした、そうであらねばならないものだと思います。しかしながら、当直士官はそのときに操艦の権限を艦長から受けておりますので、それは当直士官の責任というものが問われる。艦長の寝ておったということは好ましくないということは言えますが、それが因果関係にすなわち直結するかといえば、私はそういうことではないのかもしれないと思っております。
何にしても、海上保安庁の捜査というものが了した段階で、だれにいかなる責任があり、どうすべきであったかということが明らかになるのだろうと思っております。
○藤田幸久君 私は、すべきというべき論ではなくて、実際何が起こったのですかというまず立場から伺いました。それからもう1つは、一般論として止まるということもあり得たという話がありました。そして3つ目として、艦長が寝ていたのがまずいんだという話をされましたが、そうじゃなくて、私が聞いていた範囲では、艦長を起こす義務が当直士官等々にあったと。つまり、普通であれば起こしているものだと、それを起こしてないことがおかしいということが、これ、いろいろ知見のある方がおっしゃっている。
結果として、大臣、因果関係、つまり、この乗っていた、そして当時24名が担当だったんですかね、ぐらいの方が、ここで言えることは、全体として対応してなかったというこの結果だけは明らかですよね。つまり、起こす側、起こされる側、目で見ていた人、それを伝えられた人も含めて、レーダーもありますし、レーダーが機能してなかったら別ですけれども、つまり全体として20数名、あるいはブリッジの上にいた10名、佐藤正久議員言っていらっしゃるけど、おかしいですよね、これね。
要するに、10数名がこの中にいて、全体として対応してなかったということは、個々の因果関係、責任の軽重は別にして、全体として対応してなかったという事実は、これあるんじゃないですか。いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(石破茂君) 海保の捜査でどういうような結論が出るか分かりません。ただ、私どもとして、艦全体として対応ができていなかった、であらばこそこの事故が起こったというような認識は持っております。
ですから、べき論とか因果関係とか、いろんなことが錯綜して、お答えとして必ずしも委員に御得心いただけないかもしれませんが、艦全体としての対応が十分でなかったという認識と反省とおわびの気持ちは十分持っております。
○藤田幸久君 そこで、6ページに移りたいと思います。
当直員C、4時6分ごろ、つまり衝突したと言われております時間の1分前ですね、それで、4時6分の、その次のポツのところに行きますけれども、当直士官のこの漁船近いなあという発言と当直員Eが近い近いと言いながら云々とありますですね。それで、右70度100メートル付近に、70度ということはかなり右の方に来ていますね、近接する紅灯を掲げた清徳丸と思われる目標を視認したというふうになっています。それで、当直員Dが、4時6分、これもやっぱり1分前ですけれども、漁船が近い、距離約100メートルから70メートルに初めて漁船を視認したとありますけれども。そして、1番下に、これをまとめると、これは解説だろうと思いますけれども、4時6分ごろ以降、当直員が「あたご」に接近中の清徳丸を視認し、清徳丸の白灯及び紅灯を認め、両舷停止と後進いっぱいが下令されたというふうになっています。
ところが、その次のページの7ページの下の方に、衝突回避の措置、5のところに(1)、(2)、(3)と、当直員のC、G、Fと出ています。この当直員Cが、この当直士官が両舷停止、自動操舵やめを下令、さらに当直士官が両舷後進いっぱいを下令ということで、衝突音らしき音を聞いたとあるんですけれども。で、この右側に注2というのがあります。注2というのを次のページで見ると、注2というのは4時6分以降の行動に関する供述だと書いてあります。つまり、当直員Cは4時6分以降だということなんですね。ところが、その下の、また7ページに戻って恐縮ですが、当直員G、両舷停止が下令されたので両舷停止の措置をとり、その後、両舷後進いっぱいが下令されたので両舷後進いっぱいの措置をとった。それから、その下の当直員F、両舷停止の指令を聞いたのでテレグラフの点滅を確認した、つまり船が止まったということですね。止まった後、後進いっぱいで逆進をしたと。8ページの1番上ですけれども、両舷停止から後進いっぱいまでの間隔は5ないし10秒ほどだったと思うということなんですね。
そうしますと、まあ早くやりましたが、大臣はよく御存じだろうと思いますので、これを内容を吟味しますと、当直員Cは4時6分だったかもしれませんけれども、当直員G、Fは、これは4時7分以降だった可能性が強いんじゃないですかね。そして、両舷停止から後進いっぱいまでに5秒から10秒ということですけれども、5秒から10秒、つまり、止まってから後進するまで5秒から10秒掛かるということは、実は衝突の1分前に気が付いたんじゃなくて衝突して気が付いたということではないんでしょうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(石破茂君) 今委員がおっしゃっていただきましたように、4時6分以降に両舷停止、自動操舵やめ、両舷後進いっぱいが一連の流れとして下令をされておるわけでございます。そこで5秒から10秒ということでございまして、その後に衝突音らしき音を聞いたというふうに証言といいますか供述を私ども得ておるところでございます。
この報告書は、私どもが聴き取れる範囲の、聴き取れない者がおりますので、聴き取れる範囲の者が申し述べたことをそのまま書いたものでございます。そのまま書いたものを分析をいたしますと、一連の流れとして4時6分以降、先ほどのいろいろな流れが下令をされ、テレグラフ、つまり、速度が変わりますとそういうような点滅が付きますのでおおむね確かだと思うということを言っておりますが、委員御指摘のこういう一連の動作は衝突後ではなかったかということは、私どもは、聴き取りの範囲では、こういう一連の動作がなされ、船を、もちろん止まったわけではありません、両舷後進を掛けて速度は落ちたと思いますが、にもかかわらず間に合わなくてぶつかったというような供述がなされたという認識を持っております。私ども、現在聴き取っております限りにおいて、このような一連の命令が下令をされたのが衝突後であったというふうな認識は持っておらないところでございます。
○藤田幸久君 今おっしゃったように後進を掛けたとすると、10.4ノットでしたか、一応速度が。10.4ノットで後進を掛けると、衝突したときのエネルギーは速度も含めて落ちますですよね。なのにこんなに真っ2つに船が割れて、「あたご」が乗っかるようになって、即死のような状況でお2人が沈んでいったということが起こり得るんですか。
○国務大臣(石破茂君) これは、速度が10.4ではなくてもっと出ていたのではないかと、そうでなければああいうふうに真っ2つになるはずがないではないかという御意見があることは私自身承知をいたしております。
ただ、この速度が10.4ノットというのは、これはSMACSという記録装置がございますが、その記録装置で10.4というのが残っておりますので、このときの速度は10.4というのは私は確かなものだというふうに認識をいたしております。この漁船がどういうような状況にあり、漁船の材質がどのようなものであったか、そしてイージスの重さがどれぐらいでありということは、それは私も専門家ではございませんので分析はいたしかねますが、10.4であったとしても現実に漁船が真っ2つになるということは私は起こり得るのではないか。
10.4であったはずがないというような御指摘には、なかなか、そうでございますかというふうにがえんじ得ないものを私自身持っております。10.4というのは記録で残っておるというふうな認識でございます。
○藤田幸久君 全然私が聞いていないことまでお答えいただいたんですが、私は、速さについての御質問じゃなくて、後進を掛けていたんじゃないですかという質問だったわけですが、ただ、そういう、大臣の中に、何というんですか、潜在意識が随分おありなんだなと思いながら今お答えを聞いたわけですが。
つまり、後進を掛けたのにあれだけ真っ2つに割れてしまったのか。むしろ、そのスピードよりも、つまり衝突して気が付いたと、初めて、何かそういう証言も出ているようですけれども、乗船しておられたような方からですね。でなければ、これもまた専門家のお話によりますと、14メートルの清徳丸が、それぞれ大体このぐらいのスピードで移動していたという記録を想定しますと、大体2、3秒ずれていれば衝突せずに済んだそうですね。
ということは、先ほど大臣がおっしゃったように、幾つか船があったということはおいておきまして仮に清徳丸だけに限りますと、それから旋回能力が高いと、ただいろんな状況なので一概に言えないとおっしゃったけれども、ただ清徳丸と「あたご」の関係においていえば、旋回能力の高い「あたご」が2秒避ければ、仮に直前であっても、1分前であっても、非常に面かじいっぱい切ればこの14メートルの、つまり2秒の間隔をずらすことはあり得たんだろうと思うんです。
いかがですか、大臣。
○国務大臣(石破茂君) それはおっしゃるとおりです。
私ども、例えば自動車でもぶつかったときに、1秒違えばぶつからなかったねということはあるわけでございまして、この場合に、本当にもう何秒かということは断定はできません、速度は相対的に測るものでございますので。ただ、何秒か前に回避行動を取っていたとすれば、この清徳丸に限局して申し上げれば回避できた可能性はある、あくまで可能性でございます、断定はできませんが、それは言えることだと思っております。
○藤田幸久君 非常に丁寧にお答えいただいておりまして、有り難いと思います。
それで、私は今日は大臣を責めるというよりも、大臣が改革をされようと思って取り組んでこられた。そして、多分1番こういった報告が出てきて、最初の、つまり2月19日の報告とそれ以降の報告といろいろずれて出てきている。そして、今も大臣がいみじくもおっしゃったけれども、供述だとおっしゃっておられる。したがって、供述が正しければというお話であって、その先は捜索の範疇だと。ただし一方で、全体として、艦として対応が取れてなかった、かなり複数の方々の恐らくいろいろな落ち度があったんだろうと。そして、かなりの部分がこれは「あたご」の側の責任であろうと。そして、それがこういう形で起きたということについては多分御自身が1番じくじたる思いでいらっしゃると思いますけれども、これがイージス艦に関してはもういろいろ、あるいは海上自衛隊においては事件が起きてきていますね。
ですから、陸自あるいは、佐藤さんいらっしゃるけど、空自ほかの方々にとっても海自ということに対する思いはあるかもしれませんが、ただ、そこまで取り組んでおられて、大臣自身が責任問題も言及をされながら頑張ってこられたという以上は、これはやっぱり原点は、衝突してから実は分かったんだというその1番の事実は、大臣の信仰からしてもうそはつかれない石破大臣だろうと思われますけれども、この衝突、実はしてから気が付いたという、これは1番の、これはだれがということではなくて、艦として実際にはそうだったということは、これは非常に客観的に明らかではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(石破茂君) これはもう本当に海保の捜査を待たなければいけません。
委員がおっしゃっていただきましたように、供述をそのまま書いたものでございます。あるいは、矛盾する点があればそこの整合というもの、つまりそれは、何というんでしょうか、口裏を合わせるとかそういう意味ではなくて、この意味はどういう意味なんだろうかということは聴きましたが、供述をそのまま書くとこういう報告書になりました。その中で、いろいろな行動を取ったのは衝突後であるというふうな認識を持っておらない、それは私、先ほど申し上げたとおりでございます。ですので、ただ、そのことは衝突前にいろんな措置、つまり両舷停止、後進いっぱいのような行動を取ったというふうな認識で私はおるわけでございますが、なぜこのイージスでそういうことが起こったのか。
そして、私、事故が起こりまして数日後に、イージスではございませんが、「あけぼの」という新鋭護衛艦に乗って、夜同じような時刻に何がどのように見えるのかということも実際に見てまいりました。私も防衛大臣でありながら夜そういう時間に護衛艦のブリッジに立ったというのは初めてで、認識したこともたくさんあったのですが、1人や2人、あるいは1つや2つのセクションがミスをしてもトータルとして事故が起こらないような仕組みになっておるものでございます。それが何でこのようなことが艦全体として起こってしまったのかということは、この「あたご」の問題という、特定して考えるというよりも、海上自衛隊全体の問題として考えるべきものではないだろうかというふうには思っておるところでございます。
余計なことまでお答えしたかもしれませんが、私自身、繰り返しになりますけれども、いろいろな行動を取った、回避の措置をとったのは衝突前である、直前でございますから間に合わなかったことでございますが、衝突前であるという認識に変わりはございません。これはうそを言っているものではないのでございます。
○藤田幸久君 ボイスレコーダーもありましたですよね。つまり、捜査が明らかになりますが、明らかになるということは、客観的事実も明らかになりますが、つまり、証言はいろいろあるとおっしゃいましたけれども、このボイスレコーダー、それから、レーダーは記録を取っていないと言っていたにしても、レーダーは作動していたわけですから、そうすると、客観的に明らかになるわけですね。それでもよろしいですね。私はここを、ここをやっぱり今大臣の手でお認めになることが改革の1番大きな一歩になると思いますが、改めてお聞きしたいと思います。
○国務大臣(石破茂君) ボイスレコーダーは搭載をいたしております。これ、非常に変な言い方をすれば、市販のボイスレコーダーを積んでおりました。これ今私どもの手の中にあるわけではございませんが、ボイスレコーダーの解析というものもなされる。レーダーの記録というのは、これは訓練、演習のときの記録を取りますが、通常航海中はレーダーの記録を残しておりません。
本当に捜査権を持った海上保安庁の手によっていろんなことが明らかになると思います。私は、報道等々でいろんな隠ぺいとか捏造とか情報操作とか言われますが、海上保安庁の厳正な捜査というのはそんな小手先のものでごまかせるようなものだというふうには考えておりません。海上保安庁の捜査に私どもとして全面的に協力をするということ、間違っても情報操作とか隠ぺい工作とかそういうものはないと私は、これはこういう言い方もおしかりをいただくかもしれませんが、私自身信じておるところでございます。
○藤田幸久君 ありがとうございました。
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