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  • 【2010年12月7日】

    先日11月24日(水)に開催しされたウォルフレンさんの講演会について、井之上喬氏(株式会社井之上パブリックリレーションズ社長)が詳細をブログに載せてくださいましたのでご紹介致します。

    カレル・ウォルフレンの日本政治へのアドバイス
     ~山縣有朋が作り上げた官僚システム

    皆さんこんにちは井之上喬です。


    カレル・ヴァン・ウォルフレン アムステルダム大学名誉教授(69歳)。オランダのロッテルダム生まれの国際ジャーナリストでもあり、オランダの高級紙「NRCハンデルスプラッド」の東アジア特派員として30年近く日本に滞在。日本の社会や政治を見つめてきた人です。


    同氏の日本での著作は多数ありますが、その中で日本社会の仕組みを批判も込めて分析した『日本/権力の構造の謎』(早川書房)は、世界10カ国で翻訳され、日本研究の必読文献として知られています。


    また日本社会の問題を鋭く分析した、『人間を幸福にしない日本というシステム』(毎日新聞社)は33万部超のベストセラー。その他、『民は愚かに保て-日本/官僚、大新聞の本音』(小学館)、『日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり』(徳間書店)、『アメリカと共に沈みゆく自由社会』(徳間書店)など多数の著書があります。外国人で数少ない日本政治の研究家。


    これまでウォルフレンさんとは、私もメンバーの外人記者クラブ(FCCJ:日本外国特派員協会)ですれ違っても話をすることはありませんでしたが、今回の参議院議員会館で開催された講演会を前に、民主党の藤田幸久参議院議員の紹介で四谷の私のオフィスでお会いしました。久しぶりでみるウォルフレンさんは、病で右手が少し不自由のようでしたがその頑丈な体はエネルギーに充ち溢れていました。


    今回の講演会は、鳩山由紀夫前首相の呼びかけで実現したようで、テーマは、「民主党の政権担当能力を妨げた内なる構造と外からの力」。英語が堪能な藤田さんが通訳をかつて出られ1時間半にわたり講演が行われました。


    私も出席させていただきましたが、彼の講演の中には特筆すべきポイントがいくつかありました。




    ■山縣有朋による官僚統治
    ウォルフレンさんは、日本の政治システムの特異性について、明治の元勲山県有朋(1838-1922)により、選挙で選出された政治家の活動を妨害する官僚機構が作り上げられたとし、第2次大戦を経た今もこれが日本の政治を動かしていると解説しています。


    彼は、日本は真の民主主義政治のために有朋がつくったこの伝統を壊さなければならない。有朋が行ったことは、選挙で選ばれた人たちによる政治ではなく、選挙で選ばれない官僚が日本をマネージ(統治)するシステムを機能させることであったと断言。


    ウォルフレンさんは今春、「中央公論」(4月号)に「日本政治再生を巡る権力闘争の謎」という論文を発表。この中で日本の検察制度や記者クラブ制度などに対する批判を展開し、現在生じつつある事象の本質を以下のように記しています。


    「いま日本はきわめて重要な時期にある。真の民主主義をこの国で実現できるかどうかは、これからの数年にかかっている。」とし、「…国際社会で、真に独立した国家たらんとする民主党の理念を打ち砕こうとするのは、国内勢力ばかりではない。アメリカ政府もまたしかりである。」


    そして、「…民主党政権発足後の日本で起こりつつある変化には、実は大半の日本人が考えている以上に大きな意味がある、と筆者は感じている。」と政権交代の歴史的な意義について高い評価を下しています。


    ウォルフレンさんはさらに、日本の政治システムの内部には、普通は許容されても、過剰となるとたちまち作用する免疫システムが備わっており、この免疫システムの一角を担うのが、メディアと二人三脚で動く日本の検察である、としています。つまり、記者クラブ制を維持するメディアがスポークスマンの役割を果たしていることへの問題点を論じました。


    また彼は、小沢氏は自民党を離党しこのシステムを変えようとしたが、「以前から予想したとおり小沢一郎が総理になることは許されていない」と免疫システムがブロックする仕組みを語り、ワシントンからの力も加わって「彼が何か悪行をしたということではないのに、小沢一郎が現在のシステムに対する脅威であるということで抵抗が起きている」と鋭い分析を行っています。


    日本の伝統的なメディアには、こうした問題を扱う意識がないと指摘。以前、小沢氏に「何故メディアに訴えないのか?」と聞いたところ、答えは「メディアが取り上げてくれない」だった、としています。


    ■制御不能の米軍産複合体と日本の今後の対応
    ウォルフレンさんは、民主党政権も初めは独自路線をとろうとし、鳩山氏の首相就任時には、私も喝采を送ったが、日本の自ら舵取りをしない独立性の欠如は、新たな国際情勢の下でより深刻化していると指摘。「日米関係ほど異常な関係はない」と米国との対等な関係改善を求めています。


    一方で、「米国のジャパン・ハンドラー達は未熟な日本外交に興味を持っていない」と分析。「日本外交は発展途上中であり、現状では中国は日本をまともに扱わないだろう」と日本の自立を求めています。


    そのような中で、「米国の最も重要な外交・安全保障の諸機関は、制御不能と化した」とし、毎年日本の国家予算(一般会計)に匹敵する予算を使う軍産複合体の台頭と自己増殖に懸念を表明。自己保存のために世界中に1000箇所以上の基地を配備している強大な米国の軍事力の脅威についても警鐘を鳴らしています。


    また民主党政権についても、「その誕生時から、内外の政治環境が最善であっても、政権運営が難しい国内の負の政治構造と文化を継承していた」と自民党時代からの負の遺産にどのように対処すべきかが課題、としています。


    また「日本のメディアはこうした問題をまともに取り扱う仕組みと場を持っておらず、政策について論じるメディアの伝統がない」とし、「結果として派閥政治ばかり報じることになる」と厳しく批判。


    日中関係については、ワシントンは日本が中国と親密になることを望んでおらず、こうした中でも、米国は、敵とみる国を包囲するために、以前よりも日本を必要としている、と米国が日本との関係強化を望んでいることを強調しました。


    最後の質疑応答では、今後民主党政権がやるべきことについては:


    1)中国との関係改善


    2)これまで、ワシントンに対して、民主党ははっきり言ってこなかったが、日本が独立したいと表明するべきである(ドイツは50年たって米と対等になった)。恥ずべきことではない。


    3)菅氏には、全体を把握しているアドバイザーが必要である。


    4)ワシントンに対して、新しいことをやろうとすると、メディアが障害になるのではないだろうか?


    5)ASEAN諸国との協調は大切。


    といった答えが返ってきました。


    現在彼の本拠地はアムステルダムですが、東京にも仕事場を持ちオランダと日本を行ったり来たりの生活。いまもフリーランスで「フォーリン・アフェアーズ」や「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」などに寄稿。講演活動も行っています。


    ウォルフレンさんは、「米国がリーダーシップを持っているというのは幻想にすぎない」とし、米国を「かつては秩序と安全を維持する存在だったが、今は混乱をもたらす存在」とヨーロッパ人のDNAが言わせているのでしょうか、米国に対しては手厳しく語っています。


    来年1月には日本で、小沢一郎氏をテーマに新刊本を上梓する予定のようです。


    ウォルフレンさんと「日本の問題は、パブリック・リレーションズ(PR)力の問題」と日頃の持論を展開したら、「まさにその通り」と答えが返ってきました。


    総合PR会社社長の井之上ブログ


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