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第5回東京-北京フォーラム報告2009年11月08日
1日から3日にかけて大連で開催された、第5回東京北京フォーラムに出席しました。
日中両国の政治、経済、メディア、学者、政府機関の関係者が一同に会しての対話は非常に意味のあるものでした。
詳細は、北京-東京フォーラム公式ホームページ
http://tokyo-beijingforum.net/
をご覧下さい。
「安全保障対話」は、「日中協力体制とアジアの安全」をテーマとして議論が交わされました。右から山口昇(防衛大学校総合安全保障研究科教授、元陸上自衛隊陸将)、白石隆(政策研究大学院大学客員教授)、明石康(元国連事務次長)、藤田幸久、若宮啓文(朝日新聞社コラムニスト)、劉江永(清華大学国際問題研究所教授)、(中華全国帰国華僑聯合会元副主席、全国人華僑委員会元副主任委員)、呉江浩(中国外交部アジア司副司長)、李秀石(上海国際問題研究所日本研究室主任)、王錦思(北京大学・日中コミュニケーションセンター常務理事)
私の本会議、及び、安全保障対話での基調報告の主なポイントは、以下の通りです。
参議院議員 藤田幸久
1996年の民主党結党後最初の外国訪問が、鳩山代表による中国訪問で、しかもその最小の訪問地が大連であった。私が大連を提案したが、それは、中国東北部最大の大工業都市で、東北地方の玄関口であるということに加えて、敵国日本の残留孤児をわが子のように育てて下さった養父母へのお礼の訪問をしたかったからである。この訪問が民主党と中国共産党との党同士の交流に繋がった。
8月30日の総選挙で、民主党が勝利し、民主党中心の連立政権が誕生した。これはアンシャン・レジーム(旧体制)をピープル・パワー(国民の力)が倒した無血革命的な歴史的出来事であった。日本の第2次大戦以降の様々な政治、行政、外交、安全保障の大掃除と見直しが始まった。
「基本政策集」における、民主党の外交・防衛政策の基本
- 日米両国の対等な相互信頼関係を築き、新時代の日米同盟を確立する。日米地位協定の改訂を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方等についても引き続き見直しを進める。
- 中国、韓国をはじめ、アジア諸国との信頼関係の構築に全力を挙げる。「東アジア共同体」の構築を目指し、通商、金融、エネルギー、環境、災害救援、感染症対策等の分野において、アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立する。
- 中国は日本にとって極めて重要な隣国であり、東アジア地域の平和と繁栄のためにも、さらなる友好協力関係を促進する。両国間には、食の安全、人権、環境、エネルギー、軍事力の透明化、東シナ海ガス田開発等の懸案事項が横たわってる。懸案となっている諸問題に関し、建設的な話し合いによる問題解決を目指す。北朝鮮の核開発やミサイル発射問題等を解決する上でも、6者協議の場や中朝間で中国が一層の建設的役割を果たすよう、働きかけを強める。
民主党と中国共産党との間で設置した日中「交流協議機構」を通じ、両党間の継続的な交流・協議を行う。来週中国共産党の代表団が日本を訪問し、12月10日からは、小沢一郎幹事長を代表とする百名を超える民主党代表団が中国を訪問する。
村山談話の尊重。首相として靖国神社参拝はしない。元連合国捕虜の日本への招へい。西松建設が大戦中の中国人強制連行者に、謝罪し、360人の生存者と家族に2億5千万円の和解金を支払う和解が成立。シベリア抑留日本人への支援、等々の動きが出ている。
- 日米安保条約―三つの基本合意(日本が基地を提供、米国は日本の西側に前方展開、日本は戦略的攻撃能力持たない)は今でも両国にメリット
- 自衛隊の海外派遣は国連憲章重視で。国連憲章枠外の米国戦略の追随は避ける
- 米国の核の傘(拡大抑止)は、対中国、対ロシアには実効的でない
- ミサイル防衛、敵基地攻撃論も実効的ではない
「価値観の異なる人や国に対し、敵視ではなく、信頼醸成を図るもの」という「友愛精神」に基き、鳩山首相が提唱。東アジアの経済、貿易の自由化などを進め、将来的に通貨統合を目指す。「先ずは経済的な連携強化からスタートし、文化的、社会的レベルでの交流を図る」(鳩山首相)とする。
経済的相互依存の緊密化によって、地域の国同士による軍事行動がマイナスとなり、戦争が出来ないような仕組みの構築
欧州で3度も大きな戦争を起こしたドイツとフランスの和解のきっかけは、争いの元となった鉄と石炭を9カ国で共同管理することによって、戦争の種を消したという先例がある。また各界を代表する4千人余りのドイツ人と2千人余りのフランス人が、スイスのMRAの国際会議に参加し、寝食を共にした深い交流の中から、各層の市民同士の深い和解が生まれ、政治レベルの和解の土壌を作った。
北京―東京フォーラムにはこのような役割が期待できる。
日米同盟などの地域の安全保障体制は維持して、パワーバランスを保つことが前提として必要。日本は「東アジア」とアメリカの懸け橋役も果たし、経済統合による安全保障の安定にも貢献できる。
日本は唯一の被爆国として、「核兵器のない世界」実現のために、以下を訴える。①唯一の核使用国アメリカを含む国連全加盟国に対し、包括的核実験禁止条約(CTBT)への加盟と、CTBT発効までの間の爆発を伴う核実験のモラトリアムを求める。②国際原子力機関(IAEA)を支援しながら、各国に核拡散防止条約(NPT)への加盟を求め、「厳格で効果的な国際管理下での核兵器全廃」の交渉を推進する。③兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉の加速を求める。④日本が持つ核不拡散検証技術を各国に提供する。
「北東アジアの非核化」実現のために、周辺国の合意づくりに向けての中国の指導力に期待したい。
オバマ政権になって、国連PKO、地球環境問題への取り組み、核廃絶運動、貧困対策、途上国援助なども安全保障の役割分担と認識されてきた。
中国が世界各地に派遣している国連平和維持活動(PKO)要員約2千人のほとんどが、医療部隊、輸送部隊、工兵部隊などの非戦闘部隊である。日本が国連PKOに派遣している要員は40人足らず。中国に学び国連PKOへの自衛隊非戦闘部隊や警察官の派遣を大幅に増やすべきである。
中国は、火薬、紙、羅針盤、活版印刷を発明。その中国から無断で漢字を使ってきた日本。その後日本の技術を無断で使ってきた中国。
今や、インターネットの時代となり、国境、民族、年齢、そして時代も超えて人々を繋ぐ懸け橋となった。市民や歴史に対して真実を隠せない時代に。お互いの良さを無断で使える時代でもある。
知的財産権や環境問題などの国際ルールを決めた上で相互に情報と技術を共有し、信頼を高め、相互協力しあう時代。
「一国の最大の安全保障は、隣国の信頼と尊敬を勝ち取ること。」
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