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「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」の反対討論2019年05月17日

参議院本会議で、「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」の反対討論を行いました。 以下が、その内容です。   立憲民主党・民友会・希望の会の藤田幸久です。 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対の立場から討論を行います。  平成から令和の時代を迎えた今、私は日本人であることの誇りと幸せを心から実感しております。国民からこよなく愛され、尊敬され、平和を最も尊び、国民の心を最も大切にされる皇室があらせられることの稀有の幸せであります。  他方、今世界を見渡すと、各地で、武力、経済、金融、人種、宗教などを巡る争いが増大しています。そして、それらの陰でマネーゲームと軍拡主義が闊歩し、庶民の暮らし、財産、そして命さえも奪われる時代に私たちは生きています。  そのマネーゲームと軍拡主義的政策を推進しているのが、安倍総理官邸であり、TPP、種子法、水道法、漁業法など次々と日本を売り渡す政策が国民生活を圧迫してきました。そうした手法で農業政策を官邸がしきる、「官邸農政」による法律が、今回の法律案です。 (官邸農政、本法の成立過程の問題)  国連では今年からの10年間を「家族農業の10年」として定め、加盟国などに対し、家族農業、つまり小規模農業重視政策の推進を求めています。しかし、安倍政権は、こうした理念に逆行して、企業の農業参入をやみくもに推進する政策を強行しています。安倍総理は、2014年のダボス会議で、「民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を、需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます。」と強調しています。まさに官邸農政の本質そのものではないですか。 食料・農業・農村基本法は、「食料の安定供給の確保」、「多面的機能の発揮」、「農業の持続的な発展」、「農村の振興」という4つの基本的な理念を定めていますが、安倍政権は、企業の農業参入のため、これらの理念を軽視し、家族農業、農村社会、農協といった重要な基盤を破壊しようとしています。官邸農政とは、正統な審議会を軽視し、規制改革推進会議などで、農政や農業現場について知識のない少数の有識者が決定するやり方です。その乱暴さは与党議員からも懸念の声が聞かれるほどです。その官邸農政が最初に制定したのがこの農地バンク法です。現場無視で制定された農地バンク法は、事業実績が伸び悩み、結局、現場の声を受け入れて見直しを行うこととなったのです。 本改正案は、官邸農政の横暴の歴史とゆきづまりを象徴しており、今必要なのは、このような弥縫策を講じることではなく、基本法の理念に立ち返って農業政策を根本から見直すことでります。 以下、反対の理由を申し述べます。 (県レベルの農地中間管理機構ではなく地域レベルで集積・集約化を進めるべき)  反対理由の第一は、都道府県段階に設置した農地中間管理機構が、農地の中間的受皿としての機能を果たしていないことです。 安倍政権は、2013年に閣議決定した「日本再興戦略」において、当時5割であった「担い手の農地利用割合」を2023年までに8割とする目標を掲げ、農地バンク法を設定しました。 この「8割」の目標こそ、農業・農村の実態に無知な、机上の空論の数値です。政府は、8割集積達成のために、都道府県別に目標値を押しつけ、その進捗度合いを公表するなど、現場に圧力をかけています。 機構の事業費や、機構集積協力金などの1千億円の予算や、土地改良事業の農家負担をなくすなどアメを与える措置を講じてきました。 農地利用集積円滑化事業では、農村現場に近い市町村や農協、土地改良区などが、地域農業と農地を守るために、「顔と顔の見える関係」で農地集積に取り組んでいます。しかし、政府は、これらの人々を飛び越えて、貸付先として農地中間管理機構を最優先にしてきたのです。 あの手この手を駆使しても、2013年度末から2017年度末までの4年間で、担い手の農地利用割合は、わずか6.5ポイント増の55.2%にとどまっています。年間14.9万ヘクタールの集積目標面積のわずか4割しか達成できていません。  実績が上がらない原因は、規制改革会議等の意向で、農地中間管理機構に農地を白紙委任するという仕組みと、農地利用集積円滑化事業のような地域の判断を否定してきたことです。  本改正案は、その農地利用集積円滑化事業を農地中間管理事業に統合一体化し、農地集積・集約化の手法を農地中間管理機構の下に一本化します。地域の関係機関を取り込んで、すべてを農地中間管理機構の手柄とするよこしまなものです。 しかも、制定時には、企業の農業参入を阻むとして農業委員会を排除していたのです。しかし、今回、農業委員会の力が必要であるとしたのは前進ですが、8割目標を達成できないときには、その責任を押しつける恐れが懸念されます。  政府は、8割目標の見直しを行うべきです。そして、現場の自主性を尊重した集積・集約化に方針を転換すべきではないですか。 (地代の未収問題など構造的欠陥) 反対理由の第二は、農地中間管理事業が抱える業務量の増大という構造的な問題です。 参考人質疑で、安藤参考人から米価の下落が生じた場合には、借り手からの地代の未収問題が頻発し、貸し手との交渉業務に対する機構の対応能力に懸念が示されました。  安倍政権の下、平成30年産から米の生産調整が廃止されました。今後、米国や豪州などからの外国産米の輸入は増大し、米価の下落が生じかねません。農地中間管理機構がこうした業務の増大に対応することが本当に可能でしょうか。 (農村再生の観点の欠落・戸別所得補償の復活)  反対理由の第三は、農政の基本である、農村再生の観点の欠落です。農業所得の向上と地域農業の振興こそが目的であり、農地集積・集約化の「8割」達成は手段であるべきではないのですか?  担い手が効率良く農業を行うことは大事ですが、少数の担い手だけでは地域は成り立ちません。水管理や、国土の保全、祭りなど伝統文化の地域の賑わいなどは、家族経営体、多様な経営体の存在が不可欠です。  そのためには、民主党政権が創設した戸別所得補償制度のように農業者の所得を補償し、担い手が安心して農業、農村、農地を守ることです。「稼げる農業」を目指す前に、まず農家の安定収入を補償することが先決です。 現在、日本発の「逆マネーゲーム」がアメリカに押し寄せています。マイナス金利政策で、国内向け融資では利益確保ができないジャパンマネーが米国に還流し、米国の株高、国債金利上昇、ドル高を可能にし、米国の財政赤字の尻拭いをしています。 メガバンクやゆうちょ銀行などと並ぶ巨大金融機関の一つである農林中金は、多くの農民から預かる預金からの総貸付残高のわずか4%しか農業関連の融資を行っていません。他方、米国の金融機関なら相手にもしない信用度の低い債券を買い漁り、昨年は大きな含み額も生じました。貧しい国民や子どもが増えている中で、その日本国民のお金がアメリカの財政赤字の尻拭いをしているアベノミクス。農民の生活は苦しくなる中で、そのお金が危ういアメリカの投資に使われているアベノミクス。  この「官邸金融」というマイナス金利政策と「官邸農政」との両方を変えることが、農民や多くの国民を救うことになるのです。 最後に、安倍政権の官邸農政の反省が見られない法案は反対し、農政の基本に基づく見直しを行うべきであることを強く申し上げ、私の反対討論といたします。