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対北朝鮮制裁決議の鍵を握る米中への対応2009年05月29日

 北朝鮮の核実験をめぐり、国連安全保障理事会の決議内容を巡る外交交渉が活発化しています。私は26日の外交防衛委委員会で、中曽根外務大臣に対して、4月上旬にも提案したように、外務副大臣を国連に派遣するよう提案しましたが、27日に伊藤副大臣がニューヨークに出発しました。

 この新決議の成否を握るのは、アメリカと中国です。しかし、最近は国際政治の中でG2とさえ呼ばれるこの2カ国の動きが覚束ない状況にあります。

 

●オバマ政権のアジア外交責任者の不在

アメリカは、国務省の国務次官補が未指名のため、アジア政策の実務責任者が不在です。ボズワース特別代表(北朝鮮政策担当)は、ニューヨークの大学の学部長のため、ワシントンに常駐できないのです。・アフガニスタンやイランの対応に気を取られている間に、北が核実験を挙行し、虚を突かれた感じです。韓国は数日前から北の核実験の兆候を認識して米国側に伝えていたが、日本に対する通報が遅れるなどの混乱を生じたようです。

 

追い込まれた中国

他方中国も、北朝鮮を長年「弟分」のような扱いにしてきたものの、4月の長距離弾道ミサイル発射の際に、折角、法的拘束力のない国連安保理議長声明に収めたのに、北朝鮮が6カ国協議からの脱退を宣言し、核実験も強行して、メンツ丸つぶれの状況です。

今回はロシアも新決議に賛成を示したため中国は孤立し、決議を拒否できない状況で、決議の強さが焦点です。北朝鮮に対して効果があるのは経済・金融制裁とドルの出入りを止めて締め上げることしかなく、中国がどこまで腹をくくるかにかかっています。


● アメリカと日本の草案
 国連安保理事会の5常任理事国に日・韓を加えた7か国は26日、国連外で非公式の大使級会合を開き、北朝鮮に対する新たな安保理決議採択に向けた交渉を始めました。ここで米国が提示した草案は、2006年の安保理決議1718を強化・拡大するもので、特に新たな政策を含むものではないようです新たな政策は、6カ国協議の崩壊や北朝鮮の暴発、韓国の反発などを招く可能性も否定できず、慎重な対応が必要と認識していると見られるようです。

主な内容は以下のようです。

1 北朝鮮に出入りする船舶や飛行機、車両の貨物検査の強化。臨検も含む。武器と武器関連物資の禁輸も含む。これまでは努力目標であったものを義務化する。新決議の採決から30日以内の報告を求める。

2 2005年マカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)を北朝鮮によるマネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いで米金融機関との取引を禁止したと同じような措置をとる。

3 北朝鮮に対する資金援助、ローン、金融取引の禁止。

 

しかし、28日になって日本政府も追加制裁の草案を別に作成し、英、仏、中、露、韓の各国と個別の交渉を行っているとのこと。各国の反応の中で、欧州諸国から、CTBTへの言及を望む声が出ていることに意義があると思われます。

次々と強硬手段を打ち出してきた北朝鮮ですが、ある意味では、もう弾を全て打ちつくし、今後は手詰まりとなります。

 

「北東アジアの非核化」という大きなゴールと北朝鮮を交渉に巻き込む環境づくりのために、日本は米中に対する主体的な外交攻勢を粘り強く進めることです。

 

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