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カンボジア選挙視察報告(7/27~7/30)2018年07月31日
【7月25日】 「アメリカ下院フン・セン首相他の入国禁止法案可決」 米国下院は25日、カンボジア民主主義に関する法案を可決しました。野党党首の国外追放や、逮捕、野党の解体などの独裁的姿勢のフン・セン首相他閣僚など16名に対する入国禁止、資産凍結などの強い法案です。国の首相に対する入国禁止というのは前代未聞の措置と思われます。 29日に投票が行われる総選挙に対する強い警告となりました。
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【7月25日】 「日本政府が選挙監視委員派遣しない方針を決定」 日本政府は、29日に投票されるカンボジア総選挙への選挙監視要員を配置しない方針を発表しました。フン・セン政権による野党やメディア弾圧による選挙の正当性に問題があるからです。粘り強くフン・セン政権に国民の意思を反映される選挙を要請してきた日本政府も、いよいよ独自の対応を取ったことを評価します。 『菅義偉官房長官は25日の記者会見で、フン・セン政権による野党やメディアの弾圧が批判されている29日投開票のカンボジア下院選に関し、選挙監視要員を派遣しない考えを明らかにした。監視要員派遣とは別に2013年から実施している有権者把握などの支援については「選挙実務を改善するための技術的協力だ」として継続する考えを示した。フン・セン政権の対応に関し「最大野党の解体には懸念を伝え、状況改善を働き掛けている」と語った。』
【7月27日】 「総選挙最終日を視察」 カンボジアに到着しました。今回はイタリアのランピ上院議員と共に、野党抜きで正当性に問題のある総選挙の現場を直に検証しようという目的で急遽カンボジアに到着しました。日本からの国会議員は私一人です。27日は最終日の視察を行いました。実質与党人民党だけによる選挙でのんびりした雰囲気です。運動員の女性たちは政府職員で、現政権の成果と野党の批判を流暢な英語で話していました。
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カンボジア総選挙の最終演説会でフン・セン首相の三男フン・マニ議員が演説しました。プノンペンの中心部で大掛かりなステージで歌手も動員するなど華やかに準備されていましたが、イタリアのランピ上院議員と会場の後方に行ってみると、聴衆が少ないのに驚きました。
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【7月28日】 「3つの政党本部を訪問」 カンボジアでは、28日は選挙運動の最終日(27日)と投票日(29日)の間の休息日とされ、飲酒も原則禁止されている日です。私たちは3つの政党本部を訪ねました。 先ず、ティアウ・ボンノル蝋燭の火党党首を訪問しました。この党は数年目にサム・レンシー党がケム・ソカ党首の人権党と合併して最大野党の救国党を結成した際、サム・レンシー党の議員で救国党に移行ができない議員の受け皿として便宜的に設立された実質的なサム・レンシー党です。昨年救国党がフン・セン政権によって解党されての今回の選挙は、不当な選挙であるとして、敢えて参加していません。そして、荒れ果てた救国党の本部に本部を設けて政治活動を続けています。ケム・ソカ党首の部屋、ムー・ソクア副党首の部屋のヒラリー・クリントン元国務長官との写真、荒れた会議室などを案内してくれました。身の危険を省みず闘うティアウ・ボンノル党首の強い意志を感じました。彼は日本政府が今回の選挙のあり方に懸念を示して選挙監視団を送らない決定をしたことを評価していました。
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救国党本部の裏にあるサム・レンシー前党首の自宅を訪問しました。サム・レンシー氏はフンセン政権から、不敬罪やフェイスブック上での中傷に対する容疑に莫大な罰金が課せられていて、この自宅も差押えになる可能性も指摘されています。訪問時は支持者の皆さんが中で会合を持っていました。
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草の根民主主義党のジェン・ビラク党首、ヤン・セン・コマー首相候補を訪問しました。元々NGO活動から結党された政党で市民や農村などでも人気のある政党です。フン・セン首相の人民党とサム・レンシー前党首の救国党との仲介を求め、国民和解を目指すことを訴えています。
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コン・モニカ・クメールの意思党党首と会談しました。彼の父は元救国党の幹部で、昨年救国党が解党された際に、5年間の政治活動停止を受けた118人の一人です。また国会議員である彼の兄は、2015年にもう一人の国会議員とともに、白昼国会議事堂の前でフン・セン首相のボディーガードに暴行を受け、いまだに難聴の後遺症が残るなどの重傷を負いました。後にフン・セン首相のボディーガードは有罪判決を受けました。先週アメリカ下院がフン・セン首相など16人の閣僚などに対するアメリカへの入国禁止や資産凍結を行う法案を可決しましたが、この暴行事件も一つの理由に挙げられています。 コン・モニカ党首は、フン・セン首相とサム・レンシー前党首との対立に代わる、若い世代による和解を目指したいと語っていました。しかし、人民党の隠れた支援があるのではと疑われて苦戦しているとことも正直に打ち明けてくれました。
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【7月29日】 「総選挙の投開票を視察」 カンボジア総選挙の投票所を数か所視察しました。日本政府は、第一野党が参加出来ない今回の選挙のあり方に懸念を示して監視団を送っていません。私は、日本政府が提供した投票箱のチェックなどを行う関係者や大使館職員と同じ「特別ゲスト」として視察を行いました。選挙人名簿は顔写真付きで、身分証明書と照合するなど、かなり厳密な投票システムと感じました。投票の仕方も図解入りで詳しく示されています。偶然、国家選挙管理委員会のスポークスマンと一緒になりました。
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僧侶も投票に来ていました。投票箱はジュラルミンでてきた日本製。投票人名簿は写真入り。青い服の青年達はフン・セン首相の三男が代表のNGOで選挙監視を行っています。前回は各政党が選挙監視が出来たのに対し、今回は、実質的に人民党だけしか監視が出来ないとの批判もあります。
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カンボジアでは投票が終わり次第、そこが開票所に変わり、全国で集計するという方法を取っています。
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フン・セン首相の人民党の票が圧倒的に多いものの、野党が解党された一方的な選挙に反発してバツ印などをつけた棄権票の多いのも目立ちます。また、少数政党も少しずつ票を得てきています。日本製の投票箱が開けられ投票用紙が出されました。赤いビンに指を入れ投票を済ませたことを証明します。
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上のフェイスブック記事(『野党が解党された一方的な選挙に反発してバツ印などをつけた棄権票の多いのも目立ちます。』)に投票用紙の写真を掲載したところ、900人近くの方々がシェアし、500人近くの友達申請がありました。多くがカンボジア人のようです。彼らは自身で投稿や掲載が出来ないので、私のものを拡散しているようです。
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【7月30日】 「駐カンボジア、EU、アメリカ、日本大使を訪問」 カンボジア総選挙の翌日30日は、カンボジア駐在のエドガーEU大使とヘイド米国大使、堀之内日本大使を訪問し、意見交換しました。 欧米は、125議席の全議席を与党人民党が獲得するという流れの総選挙の結果を批判する声明等を出しています。EUは関税の優遇措置の撤廃を検討しており、これが実行されると欧米への輸出依存度が高い繊維産業などに大きな打撃を与えることになります。アメリカでは、先週下院がフン・セン首相などに対する入国制限などの制裁法案を可決ました。今回の選挙は「自由でも公正でもない欠陥的な選挙である」とのホワイトハウスの声明をヘイド大使から直接受け取りました。日本政府は、今回の選挙の正当性に対する懸念から選挙監視団の派遣は取りやめたこともあり、敢えて声明は出さない決定をした模様です。一党独裁的政権への対応の仕方が問われることになります。
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