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参議院国際経済・外交に関する調査会における藤田幸久の質疑議事録2017年02月08日
活動報告
2017年2月8日
国際経済・外交に関する調査会における藤田幸久の質疑議事録
○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国際経済・外交に関する調査会を開会いたします。
国際経済・外交に関する調査を議題といたします。
本日は、「アジア太平洋における平和の実現、地域協力及び日本外交の在り方」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
本日は、政策研究大学院大学長白石隆参考人、杏林大学名誉教授馬田啓一参考人及び青山学院大学特別招聘教授榊原英資参考人に御出席いただいております。また、公益社団法人日本中国友好協会会長丹羽宇一郎参考人は、後ほど御出席いただく予定となっております。
この際、一言御挨拶を申し上げます。
各参考人、先生方におきましては、御多用のところ本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
それぞれの先生から忌憚のない御意見を頂戴いたしまして、今後の調査の参考にいたしたく存じております。よろしくお願い申し上げます。
本日の議事の進め方でございますが、まず、白石参考人、馬田参考人、榊原参考人、丹羽参考人の順でお一人十五分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、白石参考人から御意見をお述べいただきます。白石参考人。
○参考人(白石隆君) ありがとうございます。
それでは、申し上げます。
お手元に資料があると思いますので、このとおりに申し上げますが、まず最初に、現在の世界の趨勢というものを簡単に押さえておきますと、世界経済は、二〇〇〇年から二〇一五年までで三十三兆ドルから七十五兆ドルに拡大しております。
その中で大きく三つ、富の分布については変化がございます。一つは、G7が地盤沈下し、新興国が台頭した。二番目に、欧米、北アメリカとそれからヨーロッパが地盤沈下し、アジアが台頭したと。で、アジアの中では、日本が地盤沈下し、中国が台頭した。これが一つでございます。
もう一つは、それに伴いまして、力のバランス、これは、ここでは指標として軍事費を見ておりますけれども、アメリカの軍事費を一〇〇としますと、中国の軍事費というのは、一九八九年にはアメリカの三十分の一でございましたが、二〇一四年には三分の一に拡大していると。ソ連、ロシアは、冷戦の最後のときで大体アメリカの三分の二でございましたけれども、これがいっとき、一九九八年には六%まで下がりまして、最近では一六%程度まで回復していると。日本、オーストラリアは、経年的に下がってきております。
三番目に、期待と現実ということで、一九九六年から二〇〇五年までの十年間と二〇〇六年から二〇一五年までの十年間に一人当たりの実質の国内所得がどのくらい伸びたかを見ますと、日本は最初の十年間が六%、次の十年間が四%で、ある意味では低空飛行しておりますが、アメリカ、イギリス、フランスなどは、最初の十年間に非常に順調に所得が伸び、次の十年間に所得が伸びなかったと。その結果、国民の期待が膨らんだところで、この期待に応えられなくって国民が怒り、ポピュリズムが今現れていると言っていいと思います。
それに対しまして、アジアは、最初の十年にも非常に、実は中国の場合なんかは二倍以上に所得が伸びておりますし、それ以外のところも大体が二桁の伸び率ですけれども、それ以上に最近の、次の十年間に所得が伸びております。これは国民の期待が非常に膨らんでいるということでございますので、これからの十年、この期待に応えられないとアジアは不安定化する可能性が高い、こういうのが大きな傾向でございます。
次に、世界システムと地域システムの特徴について申し上げます。
現在の世界システムというのは、原理的には大きく五つの制度の上に成り立っているというふうに言っていいだろうと思います。一つはアメリカの平和、これが国際的な安全保障の仕組みでございます。二つ目が、国際経済としてはドル本位制とWTOでございます。三番目に、国内政治体制としては自由民主主義、国内経済体制としては市場経済。こういう五つの制度の上に現在のシステムというのは基本的につくられていると。
ただし、世界中こうなっているとは申しません。現在の東アジアについて申しますと、安全保障のシステムというのはアメリカの平和でございますけれども、アメリカを中心とするハブとスポークスの安全保障システムが、これが制度的には基盤になっており、日米同盟というのはこの地域的な安全保障システムの基軸になっております。国際金融では、ドル本位制が基本でございますが、これがチェンマイ・イニシアティブ等によって補完されていると。貿易システムは、WTOに加えて地域的なバイ、マルチのFTA、これはASEANプラスのFTAであるとか現在交渉中のRCEPというようなものがございます。それから、TPPもこういう試みでございました。国内政治的には、自由民主主義と権威主義のミックスになっております。経済的には、市場経済と中国のような社会主義市場経済、これは最近英語では国家資本主義というふうに言われるようになっておりますけれども、こういうもののミックスになっております。
次に、アメリカの政策というものをざっくりと、過去三十年あるいは三十五年くらいで見ますと、冷戦終結以降、特にレーガン政権の第二期以降ですね、アメリカの大戦略というのは、封じ込め戦略が終わって、ブッシュ、先代のブッシュ大統領が一九九一年に使った言葉を使いますと、新国際秩序というのが言わば大きな国際秩序のビジョンになっております。
これはどういうものかと申しますと、先ほど申しました世界システムの大きな五つの原理を踏まえてこの原理を強化していこうというのが、これが基本的な考え方だというふうに言っていいだろうと思います。つまり、アメリカの平和ということで、唯一の超大国としてのアメリカの地位を守る、これが一つでございます。
それから二番目に、グローバル化戦略としましては、国境を越えた資本移動の自由化を進める、通商の自由化を進める、民主主義を推進する、あるいはグッドガバナンスを行うと。それから、マルチラテラリズムで、みんなでできる限りルールを作ると。みんなで作っても、アメリカが一番力が強いですからアメリカに有利なルールができると、こういうものでございます。
これを受けまして、地域戦略としましては、オバマ大統領の下で八年間にわたってはリバランシングということが行われてまいりました。これは、軍事的には太平洋、大西洋、五対五で置いていたアメリカの軍事的なアセットを太平洋六、大西洋四に少し軸足を移す、これが軍事的なリバランスでございます。政治的には同盟国、パートナー国との政治的連携を推進し、ASEANプラスの様々のプロセス、つまりこれは東アジア・サミットであるとかRCEPだとかあるいは、あっ、ごめんなさい、これRCEPじゃございません、ASEAN地域フォーラムでございます。それから、ASEANの防衛大臣会合プラス、こういうふうなものを強化していく。それからTPPをつくると。それから、同盟重視で、G2ということで中国を重視するのではなくて同盟を中心にしてアジア外交を組み立てると。それから、対中政策としては関与と抑止の両にらみでアプローチすると。
これがオバマ政権下の地域政策でございましたが、トランプ政権になりまして、どうもこれまで、まだ二週間ちょっとでございますけれども、これをひっくり返し、壊そうと、そういう非常に大きな衝動があるように思います。ただし、現在のところ、まだ政策決定のプロセスは極めて不確定でございまして、確定的なことを申し上げるというところには来ておりません。ただ、これまでの大統領等の方々の発言を見ておりますと、以下のようなことは、およそ、かなり大きい確率で言えるのではないだろうか。
一つは、アメリカ・ファーストということで、アメリカとしてできる限り大きな行動の自由を維持しながらアメリカの国益を追求する。そのときにはマルチラテラリズムよりもバイラテラリズム、二国間の交渉の方がはるかに自分たちの意思が通りますので、バイラテラリズムを重視すると。そうしますと、まずアメリカの平和については、アメリカの平和ということで世界全体にコミットするのではなくて、むしろバイの同盟を重視すると。通商についてもTPPのようなマルチではなくてバイを重視すると。
通貨、金融は、これまでのところよく分かりませんし、ナショナル・エコノミック・カウンシルはまだ現在のところ音なしでございますが、為替政策が通商政策の一環になるかもしれない。これは非常に警戒する必要があるんだろうと思います。国内政治体制としては自由民主主義、人権には恐らく全く関心がないと。
それから、国内市場経済につきましては、市場経済にはもちろん賛成だけれども、過度の規制には反対であるし、競争条件は平準化しなきゃいかぬということで、EUはどうも好きではなさそうですし、中国の国家資本主義に対してもかなり批判的な立場を取っていると。つまり、ごく簡単に申しますと、強引にアメリカの市場経済のルールを他国に押し付けてくる可能性が強いのではないかと思います。
地域政策としましては、こういうことを踏まえまして、同盟重視といって一番重視されるのは日本であり、恐らく次にオーストラリア、インドでございますが、韓国は韓国の国内の政治の事情もありまして、どうなるかはよく分からない。中国については、恐らくこれまでの関与と抑止ではなくて、関与よりも抑止に相当傾いた対中政策になるのではないかと。ASEANについてはどうなるか全く分かりません。それから最後に、TPPには参加しないと。
こういうことを全部踏まえますと、どうも大きい趨勢としては、安全保障、通商いずれにおいてもバイを強調し、アメリカを中心とするハブとスポークスのシステムをもう一度つくっていこうとするのが基本的なアプローチになるんではないだろうかと思います。
次に、中国につきましては、習近平政権は中国の夢ということを言っておりますが、経済的には既に経済成長が減速し、そういう中で膨らんだ期待にどう応えるかというのが、これが非常に大きな国内政治課題になっております。
と同時に、今年に限って申しますと、その党大会に向けて党国家の中枢のリーダーシップをどう編成するのかということが非常に大きな課題になっていると。
そういう中で、恐らく確実に言えますことは、もう現在の政権は韜光養晦ということはもう言わなくなりまして、中国の夢というふうに言っておりますけれども、この中国の夢というのが、英語で申しましてチャイナ・ドリームなのかチャイニーズ・ドリームなのか。中国の私の同業者のような研究者に聞きますと、これは両方いまだに追求しているんだと申しますけれども、だんだんと国の資源が厳しくなってきたときにどちらを選ぶんだろうかという問題が一つ。そういう中で、安全保障では既にアジア新秩序観ということで、アジアの安全保障はアジアでというふうに言っておりますし、一帯一路ということで、これは国際公共投資であると同時に、オバマ政権時代のリバランシングに対抗するカウンター・リバランシングであり、同時にインフラの分野ではそれぞれの事実上のスタンダードを取りに行くものでもあるというふうに言えると思います。
ということを全部踏まえますと、本音のところではやはりアジアの盟主を目指しているというふうに考えざるを得ないと。ただし、現在のところ国内的にいろんな課題がありますので、アメリカ、トランプ政権とは正面から対立したいとは思わないんではないかと想像しますが、一つの中国という原則は譲れませんので、なかなかこれから緊張が厳しくなっていく可能性は十分あると思います。
その中で、それではアジア地域のダイナミズムというのはどうなるかと。一言で申しますと、アジアの地域協力の特徴というのは、その時々の大きなリスクをどうヘッジするかにございます。
一九九七年、九八年の経済危機のときには、アメリカが幾つかの国に介入して、アメリカが非常に大きなリスクと意識されるようになりました。そのときにはアメリカを外した地域協力ということで東アジアが重要になりましたが、二〇〇〇年代の半ばから中国が南シナ海等でリスクとして意識されるようになると、ASEANプラス3に加えてASEANプラス6ができ、このASEANプラス6がASEANプラス8になって、アメリカを入れて中国というリスクをヘッジするようになったと。
もう一遍アメリカがリスクになったらどうなるかと。私は、そのときには中国の出方次第だと思いますが、一帯一路あるいは南シナ海の中国の行動次第によっては、もう一度アメリカを抜いた地域協力という可能性はあるだろうと。これは、例えばドゥテルテ・フィリピン大統領の現状凍結のようなものを中国が事実上やるかどうかに相当懸かっているとも言えます。
こういうことがなければそれぞれの国は勝手にいろんなことを始めるようになるだろうと。そうしますと、人権とかあるいは民主主義ということをアメリカ政府が言わなくなりますと、例えばタイのプラユット首相であるだとかフィリピンのドゥテルテ大統領だとか、あるいはマレーシアのナジブ首相のような人たちがもっとやりたいようにいろんなことをやり始める可能性もあるということでございます。
それでは最後に、もう時間がございません、日本の外交の在り方について申し上げます。
念頭に置いておくべきことは七点ございます。これだけ申し上げます。
一つは、日本は超大国ではございませんが、決して小国でもございません。日本が右往左往することほどこの地域を不安定化させるという危険はあります。ですから、右往左往しない、これが非常に重要だと思います。
二番目に、日本は世界システムから非常に恩恵を受けた国であるが、同時に外から見ると模範国でもある。
三番目に、アメリカと中国の力が拮抗するようになればなるほど日本の戦略的価値は上がる。
四番目に、日本は予測可能性の高い信頼される勢力なのだと。これはアメリカの予測可能性が落ちれば落ちるほど日本の安定勢力としての価値は上がるということでもございます。
五番目に、アメリカ・ファーストということを言うアメリカ政府に日本がアジアで追随すると、あるいは同じことを、アメリカと同じことだけやると日本の存在感は薄れます。
六番目に、アメリカ・ファーストという戦略がこれからトランプ大統領以降にもずっと定着するかどうかというのは、これは分かりません。私は、アメリカ人という人たちはそういう人たちではないんではないかという感覚は持っております。
最後に、中国の夢というのは次第にチャイナ・ドリームに傾斜していくんではないだろうかと考えております。
そういう中で、日本の外交、もう時間がございませんのでやめますが、一点だけ、日本の外交というのは日米同盟基軸であるが、同時にマルチの様々の動きをする必要があるだろうと。つまり、バイとマルチの組合せで、外交については、アジアについては日本でかなり独自の取組もした方がいいというのが私が申し上げたいことでございます。
どうもありがとうございます。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
次に、馬田参考人から御意見をお述べいただきます。馬田参考人。
○参考人(馬田啓一君) 馬田でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、「トランプ・ショックとアジア太平洋の新通商秩序の行方」という、こういうタイトルで意見を述べさせていただきたいと思います。
お配りしました資料ですけれども、これはパワーポイントで作成したものでありますけれども、十五分という非常に短い時間でございますので、後半の方の特に日本のTPP絡みの通商戦略については、議論の中でより詳しく御説明していくという、そういう意味で資料程度にとどめておかせていただければというふうに思います。前半のFTAAP、アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けて、アメリカがTPP離脱を表明してどうなるんだろうという、そういう非常に暗雲が漂っておる状況であります。このTPPが完全に葬り去られれば、その延長線上につくられているFTAAPがどうなるか、アジア太平洋の新しい秩序がどうなるかと、非常に大きな問題がここに存在しておりますので、そのアジア太平洋、新しい秩序の問題について私見を述べさせていただきます。
FTAAPというのは、御存じのとおり、アメリカが言い出しっぺでございます。東アジア共同体構想が出たときに、アメリカを締め出すと、こういうふうなことでアジアの地域主義に非常に不安を持った当時のブッシュ政権が、二〇〇八年に、APECをベースに、APECの加盟国を参加国とするFTAAP、アジア自由貿易圏構想を打ち出しました。しかし、APECは御存じのとおり、非拘束の原則に基づくAPEC内でのFTAAP交渉ということ、非原則に基づく組織でございますので、APEC内でのFTAAP交渉は非常に難しいというふうにアメリカは判断し、方向転換し、二〇〇八年、APECの外のTPPに参加し、TPPの拡大を通じてFTAAPの実現を目指すことになったわけでございます。
TPPの意義につきましては、改めて言うまでもなく、高いレベルの包括的な二十一世紀型のFTAモデルと言われますように、他のメガFTA交渉のひな形となるであろうと。さらには、将来、WTOルールに進化していくことも期待されております。
そういった高い自由化と、そして包括的なルールを目指しているものでありますけれども、TPPの長期的な意義は、これは中国が最終的なターゲットであるということであります。中長期の視点で見れば、TPPの最大のターゲットは中国。TPP参加国を増やし、そして中国包囲網を形成し、さらに外堀、内堀を埋めるような形で、中国に対してTPPに参加せざるを得ないような状況をつくり、そして、中国がTPPに参加したいときに、今の体制、国家資本主義という、この体制を変えろ、さらには国際的なルールに従えというふうに中国に迫る、これがアメリカのこれまでの通商戦略のシナリオでありました。これがトランプのTPP離脱によって、どぶに捨てるような形で葬り去ってよろしいのかという、そういう問題がございます。
アメリカ主導のTPPを警戒した中国は、RCEP、東アジア地域包括的経済連携に肩入れし、国家資本主義の体制を維持しながらメガFTA締結を目指しておるところであります。
ですから、アジア太平洋に、一方でアメリカが主導するTPP、もう一方は中国が非常に肩入れするRCEP、このTPPとRCEPをめぐり米中の確執が強まってまいりましたけれども、米国のTPP離脱でまさに中国が不戦勝というふうな形になるような状況になってきております。それでよろしいのかというふうなことで、今注目が集まっているというふうに思います。
アジア太平洋における主導権をめぐる力学が変わろうとしているわけでありますけれども、二〇一〇年にAPEC、日本で行われまして、横浜ビジョンが採択されました。それはFTAAP実現への道筋を提示しましたけれども、TPPルートかあるいはRCEPルートかについてはいまだ不確定な状況であります。
このため、二〇一四年の中国で行われたAPEC北京会合におきましては、FTAAP実現に向けて具体的な道筋を示そうと、中国は北京ロードマップの策定を議題といたしました。しかし、その狙いはどこにあるかといえば、TPPを牽制し、TPP以外の選択肢もあるのだということを示すことによってアジアの国々にTPP離れを促すと、こういうふうなことをもくろんだわけであります。
習近平は、北京ロードマップを歴史的一歩というふうに自画自賛いたしましたけれども、しかし、TPPルートを重視する、TPPの延長線上にFTAAPを実現しようと思っているアメリカがこの北京ロードマップを骨抜きにしたと、こういうふうなことは否めないと思います。
今後の展開につきましては、TPPによりFTAAPを実現するというふうな大方の見方があったわけですけれども、それが完全に崩れ、トランプ・ショックでまさかの事態になったわけでありますけれども、去年、二〇一六年十一月に、APECリマ会合ではリマ宣言が打ち出されました。発効に向けて協調を演出した形でありますけれども、TPP参加国はTPPの国内的な承認手続を完了せよと、一方でRCEP交渉については早期にその合意を得ると、こういうふうな声明が出されました。
しかしながら、トランプがFTAAPに対してどういうふうな対応を示すか、TPPを否定し、さらにはその先に位置付けられるFTAAPも冷淡になるのか、予断は許されない状況であります。TPPが日の目を見ないようなことになる、最悪の事態がある場合には、APECの中でFTAAPの問題をしっかりと議論していく、そういうAPECの出番も場合によっては必要になるかもしれません。
日本が今なすべきことは、アジア太平洋のリーダーとして、形を変えてでもTPPの生き残りに向けて最大限の外交努力をすべきかと考えます。
RCEPかTPPか、どういう形でFTAAPができるか。TPPルートよりもRCEPルートであれば、決して、高いレベルの包括的なメガFTAになる可能性は非常に薄いものがあります。中国は、中国の国家資本主義とうまく相入れるようなメガFTAを実現しようとしているわけであります。
それに対して日本は、それをよしとしないと、こういうことであれば、何とか、TPPが脱線しても、その脱線したTPPをFTAAPに向けて同じレールに持っていくことができなくても、FTAAPだけで違うレールに、元に戻すような、そういう積極的な対応がアジアのリーダー国として必要ではないのかなというふうに思われます。
アメリカを抜きにしたTPPの案も、今オーストラリアとかニュージーランド、あるいは中南米から出ています。しかし、日本はそのアメリカ抜きのTPP11の案に乗るべきではない。あくまでもアメリカが参加するような形で、修正されてもTPPを実現に向けてアジア太平洋諸国の間を調整していく、それが今、日本がやらなければいけない役割ではないだろうかと思います。
そういう意味で、アメリカをもう一度、あのトランプをもう一度TPPの方に顔を向けさせるために日本は今何をすべきか。一つは、RCEPが早期に合意されれば、アメリカはアジアの地域主義における新しい経済統合体の実現に非常に警戒心を持つであろうということで、TPPに対するまた見直しが始まるだろうという意味で、RCEP交渉をできればこの二〇一七年、年内にまとめるというふうな努力を日本も積極的にしていく必要があろうかと思います。
TPPの頓挫が、その危機がRCEPにどういうふうな影響を与えるか。加速させるのか、それとも停滞の方向に持っていくのか、意見は、見方は二つに分かれております。RCEPはASEANプラス6の枠組みで十六か国によって交渉がされていますけれども、ASEANが議長国であります。ASEANセントラリティーを尊重する形でASEANが運転席に座ってハンドルを握っているはずですが、どこまでしっかりそのハンドルを握っているのか。調整役がなかなか存在感を示しきれない中でRCEPの交渉をどう今年中にまとめるか、それには裏技の折衷案も日本から提案すべきである。
その折衷案は何か。今、TPPをこれまでてこにして日本、オーストラリア、そしてニュージーランド、高いレベルのRCEP、一方で、インドとか中国は低いレベルの自由化、緩い枠組みでRCEPをつくろうという、その二つの、高いか低いかの利害対立が非常に激しくなり、溝が埋まっていない状況であります。その溝をどういうふうに埋めるのか、これは溝を埋めようとすると二〇一七年中にはまとまりません。
そこで、ASEAN経済共同体は二〇一五年末に発効しました。AEC二〇一五、そして、百点満点で八十五点でありますけれども、その残された十五点は残り十年間で埋めていこう、AEC二〇一五と二〇二五と上手に使って、二段階方式でASEAN経済共同体を発足しています。
そのASEANのやり方をRCEPも取り入れるべきである。ASEANが議長国であり、今年二〇一七年、ASEANが創設して五十周年という記念すべき節目の年であります。その節目の年に議長国ASEANがRCEPをまとめる。そういうふうなことが可能なチャンスなんです。日本がそういうふうな二段階方式で、AEC方式で、ASEANがそれを言えばそれなりの重みがあると、こういうふうな捉え方ができますので、日本はASEANとともに年内にRCEPをまとめる、それがひいてはTPPの生き残りにつながるのであろうと、こういうふうに考えるところであります。
トランプはTPP離脱によって本当に墓穴を掘るのか。墓穴を掘る、そのとばっちりは日本が受けることになるわけです。日本はTPPをどんな形であるにせよ、これを葬り去るというふうなことはさせずに、何とか生き残る方法を粘り強く積極的に進めていくべきだろうと思います。そのために、TPPの修正案をいいタイミングでトランプに主張する、それが大事だろうと思います。
日米首脳会談が二月十日に行われます。その場でそれを言うかどうかは安倍首相の判断でありますけれども、最もいいタイミングで、アメリカが、TPPに対してその意義と、そしてアメリカにとってもプラスだと、そしてアジア太平洋にとっても必要なルールだと、こういうふうな認識を持ってもらうために、修正案というふうな、現行のTPPではない修正案という形でアメリカの方にうまく説得していく、そういう姿勢が大事であろう、こういうふうに思います。
待てば海路の日和ありという言葉がございます。待てば海路の日和あり、いずれは太平洋の荒波も収まるだろう、トランプの話もやむであろう、時間を掛けてでもTPP修正案を何とかまとめ上げ、そしてその延長線上にFTAAPを実現していくという、そういうふうな積極的な日本の取組が必要であろうというふうなことで、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
次に、榊原参考人から御意見をお述べいただきます。榊原参考人。
○参考人(榊原英資君) 私の方は、アジア経済の現状と、経済的な日本とアジアの関わり合いというようなことを中心にお話ししたいと思います。
一九九八年にアンドレ・グンダー・フランクという、これはドイツ生まれのアメリカ人ですけど、これが「リオリエント」という本を書きまして、二〇〇〇年には邦訳されておりますけれども、これは、要するに世界の経済の中心がオリエント、アジアに戻ってくると。オリエントというのは方向性を変えるという意味がありますから、二重の意味でリオリエントという言葉を使ったわけでございますけれども、欧米が一時中心だった世界経済がアジアに戻ってきているというような話をしたわけでございます。
実は、一八二〇年、十九世紀の初めでございますけれども、このときの世界のGDPをアンガス・マディソンという経済史の専門家が推計しておりますけど、このとき、世界のGDPの二九%が中国、一六%がインドということでございますから、中国とインドで世界のGDPのほぼ半分を占めていたと。これに日本とか韓国とかASEANを加えますと、大体五二%がアジアのGDPだったということでございますから、十九世紀初めまで、非常にアジアの比重が多かったと。さらに、それを一五〇〇年とか一六〇〇年に遡りますと、さらに中国、インドの比重が多くなってまいります。大体一五〇〇年、一六〇〇年では中国とインドで世界のGDPの六〇%、アジア全体では七五%というようなことでございまして、まさに長い二〇〇〇年の世界の歴史を見ますと、そのほとんどの時代、アジアが経済の中心だったということが言えるわけでございます。
アジアが衰退しますのは、十九世紀の半ばから欧米によるアジアの植民地化が行われたということでございます。アジアの国の中で実質的に植民地にならなかったのは実は日本だけでございます。タイが形式的な独立を保っていますけれども、これもイギリスの支配下にあったものですから、そういうことで、アジアが植民地化によって衰退するということが実は十九世紀の半ばから起こったわけでございます。
一八四二年には香港と九龍半島がイギリスの植民地になると、あるいは六三年には上海が事実上英米の租界になるというふうなことがありましたし、それからインドも一八七七年にはイギリスの植民地になるというようなことがあって、これでアジアが衰退するということが起こったわけでございますけれども、第二次世界大戦後、アジアの国が次々と独立するわけでございます。
一九四六年のフィリピンの独立から始まりまして、日本も一九五二年には占領が終了するということで、大体五〇年代の初めまでにはアジアの国々が次々と独立していったということでございます。
そういうことでアジアが次々と独立した後で、非常に高い成長率をアジアが達成するわけでございますけれども、まず日本が高度成長、これは一九五六年から七三年、平均成長率九・一%ですから極めて高い成長率ですね。日本に次いで韓国、台湾、香港、シンガポールというところが成長率を高め、それにまたASEANが続いたということでございます。それから、一九九〇年代になりますと、インドと中国が計画経済から市場経済に移行するということが実は起こってくるわけでございまして、ここで一九九〇年代以降は中国とインドが極めて高い成長率を達成するということでございます。
資料の四十四ページにも書いてございますけれども、一九七九年から二〇八〇年の三十年間、成長率のトップテンは全てアジアの国でございます。中国が九・八%とほぼほぼ一〇%に近い成長率を達成したわけでございますけれども、中国に次いでシンガポール、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、韓国、台湾、インドというようなことで、アジアの国が第二次世界大戦後、独立後、極めて高い成長率を達成するわけでございます。ちなみに、七九年から二〇〇八年のアメリカの成長率は二・九%、日本の成長率は二・四%ですから、エマージングアジアがこの間にいかに高い成長率を達成したかということが分かるわけでございます。
現在のもうGDPでございますけれども、購買力平価ベースでは、GDPでは中国がアメリカを抜いているわけでございますね。これは計算にもよりますけれども、若干中国がアメリカを抜くというようなことでございます。それから、二〇三〇年、二〇五〇年ということになりますと、これは推計でございますけれども、プライスウォータークーパースというアメリカのコンサルティングファームが推計しているわけでございますけれども、二〇五〇年には実はインドがナンバーツーになる、インドのGDPがアメリカのGDPを抜くというような推計をしております。中国がナンバーワンで、二〇五〇年、六十一兆七百九十億ドル、インドがナンバーツーで四十二兆二千五十億ドルということで、アメリカが四十一兆超でございますから、中国とインドがGDPの二大大国になるということでございます。
中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル、メキシコということで、大体日本が第七位ぐらいというようなことになるわけでございます。ですから、これから二〇五〇年にかけて、グンダー・フランクが言ったリオリエント現象、要するに世界経済の中心がアジアに戻ってくると、中国とインドが中心でございますけど、そういうことが起こってくるわけでございます。
二〇五〇年のGDPの大きさでトップセブンというのをプライスウォーターハウスクーパースが推計しておりますけれども、トップが中国、二番目がインド、三番目がアメリカ、四番目がインドネシアということでございまして、その次、ブラジル、メキシコ、日本と続きますけれども、トップセブンのうち、日本を含めてアジアの国が四か国というようなことでございまして、非常にアジアの国が今後大きく伸びてくるというようなことが予想されているわけでございます。
二〇一五年から二〇五〇年の平均成長率というのも、これもプライスウォーターハウスクーパースが推計しておりますけれども、最も高いのが実はナイジェリアで五・四%、その次がベトナム、バングラデシュ、インドということで、アジアの国が続くわけでございます。それから、フィリピン、インドネシア、パキスタンというようなことで、二〇一五年から二〇二〇年の成長率のトップテンのうち、アジアが七か国ということでございますから、これから極めて高い成長率をアジアの国が達成するというようなことでございます。
世界の総GDPに占める中国のシェアというのは、大体二〇一五年辺り、今から十年弱先でございますけれども、このときには中国が世界のGDPの二割、二〇%に達するというふうに考えられております。まあ、大体二〇%ぐらいで安定するのではないかと。現在、インドは世界のGDPの七%ですけど、これは二〇五〇年に向けて一四%まで増えていくということでございまして、先ほど申し上げましたように、二〇五〇年にはインドのGDPがアメリカを抜くというようなことが予測されているわけでございます。二〇五〇年には、中国とインドで世界のGDPの三四%を占めると。一八二〇年には四五%でしたから、一八二〇年には及びませんけれども、中国とインドが世界の二大経済大国になっていくということが今後実現されてくるわけでございます。
それから、人口から申し上げましても、御承知のように、中国が最大の人口、現状では十三億七千六百五万人、その次がインドで十三億一千百万人程度でございまして、中国がトップ、インドが二番目、インドネシアが四番目ということで、アジアの国が人口でも非常に大きいわけでございます。
実は二〇五〇年になりますと、中国は一人っ子政策なんかを取りましたから、実は人口がピークを打って減っていく可能性があるわけですね。ですから、二〇五〇年には中国の人口は今と余り変わらない、あるいは若干減少する、それから老齢化ということも起こってくるということでございますけれども、実はインドは今後ともずっと人口が増えるということでございまして、二〇五〇年にはインドが人口でトップになって、十六億六千万人というようなことになるというふうに言われております。しかも、インドは今人口構成が若くて、二十五歳以下の人口が五割以上を占めておりますから、これからインドの人口増加というのは生産年齢人口の増加ということにつながっていくわけでございまして、こういうことでインドの成長率はかなり高く維持されるだろうというふうに考えられるわけでございます。
実は、インドと中国の成長率が二〇一五年に逆転しているんですね。中国は、先ほど申し上げましたように、一九八〇年から二〇一一年までは一〇%弱の成長を達成したわけでございますけれども、二〇一二年辺りから成長率が落ちて七%台、現在は六%台まで落ちているわけでございますね。今後、恐らく二〇五〇年にかけて中国の成長率というのは三%ぐらいまで落ちていくだろうということが予測されているわけでございます。人口が減る、老齢化が起こるということで六%ぐらいに減っていくわけでございますけれども、インドはしばらくの間七%の成長を続けるというふうに考えられております。
二〇一六年の数字ですと、中国の成長率が六・五九%と、インドの成長率は七・六二%でございますから、まだGDPの絶対的な大きさからいうと、インドは中国の三分の一ぐらいでございますから、その意味ではまだまだ伸びる余地があるということでございまして、恐らく今後、二〇五〇年まで六、七%の成長を維持するということが考えられるわけでございます。
そういうことでアジアの成長が非常に高いんですけど、中でもインドが非常に高い成長率を今後とも維持していくと。また、インドネシアも大体五%ぐらいの成長を今遂げているわけでございますけれども、これも中国、インドに次ぐ人口を持っている国でございますね、アジアの大国でございますけれども、インドネシアもポテンシャルとしては五%前後の成長率を維持していくということが考えられるわけでございます。
日本との関係ということでいいますと、日中関係とか日韓関係というのは時々ぎくしゃくするわけでございまして、これは戦前から戦時中の日韓、日中のその関係からそういうことでございますけれども、日本とインドというのはずっと極めて良好な関係、外交関係を維持しているんですね。というのは、日本が戦時中からインドの独立を支援したわけですね、日本は英米と戦ったわけでございますから。逆に、インドの人たちの一部、インドの国民会議派の例えばチャンドラ・ボースなんという人がいますけれども、チャンドラ・ボースとかビハリー・ボースとかいう人は、これは日本に亡命しまして、日本と一緒になってインドの独立を達成しようというふうにしたわけでございます。
実際に一九四四年にはチャンドラ・ボースが義勇軍を組織して、日本軍と一緒にインパール作戦というのをやって、たしかあれはビルマで英国と戦っているわけでございますね。
そういうことで、その時期から国民会議派の左派といわれる人たち、国民会議派の中心にいたネルーとかガンジーはどちらかというとイギリスとも友好な関係を維持し続けようというふうに考えていた節がありますけれども、チャンドラ・ボースとかビハリー・ボースとか国民会議派の左派の人たちは、むしろ日本と組んでイギリスと戦うということを選んだわけでございます。
そういうこともあって、日印関係というのは戦時中から極めて良好でございまして、現在も非常に良好な関係を維持しているわけでございますね。たしか、日本とインドの間には、一年ごとに両国の首相が相互訪問するということが制度化されております。恐らく来年は安倍さんが向こうに行く番ですかね、ナレンドラ・モディが今首相でございますけれども、そういうことで、両方の首相が交互に訪問するということが制度化されていると。もちろん、首脳の訪問というのはいろいろあるわけでございますけれども、交互の訪問というのが制度化されているのは日本とインドだけでございます。そういうことで、日本とインドというのは外交関係も良好ですし、対日感情あるいは日本のインドに対する感情も非常に良好ですから、今後やはりインドというのは日本にとって非常に重要な国になっていくということでございます。
それからまた、先ほど申しましたように、成長率も非常に高いまま維持されるということになりますから、非常に重要な市場になっていくと。日本の自動車会社というのはほとんどが今インドに進出しておりますけれども、バンガロールか何かに工場を持って進出しておりますけれども、これから例えば自動車の販売量とか、あるいは耐久消費財の販売量というのはインドは急速に増えていく可能性があります。そういう意味で、市場としてインドを見た場合に、日本の企業にとって極めて有望な市場ということになっておりまして、自動車とか自動車部品の企業がインドに進出しておりますけれども、今後とも日本企業のインドに対する進出は続いていくんだというふうに考えております。
そういうことで、今後の日本の外交ということを考えた場合に、やはりアジアとの外交というのが非常に重要になってくる、特に経済的にはアジアとの外交が極めて重要になってくると。安全保障の面では日本の最大のパートナーはアメリカでございますけれども、実は経済ということに限っていうと、日本の最大のパートナーは中国なんですね。日本の貿易ということ、例えば輸出ということを考えましても、日本の輸出の一五%弱がアメリカでございますけれども、もう中国への輸出は日本の輸出の二〇%になっていると。それに香港、台湾などを加えますと、中国圏への輸出は日本の輸出の三〇%を超えているわけでございますね。あるいは、アジア全体ということでいいますと、日本の輸出の六〇%はアジア全体に対する輸出ということでございますから、これからやはり経済的にはアジアというのが非常に重要な日本の相手、パートナーになってくるということでございますから、これは今後の日本の外交政策を考える上で極めて重要ということでございますね。
既に日本の企業というのは相当中国に進出しておりますけれども、今はインド進出というのが一つの流れになっておりまして、多くの日本の企業はインドに次々に進出をしているということでございまして、インドは実はスズキ自動車が非常に強いんですね。スズキが、インドの国民車をつくるというその要望に応えて、スズキ・マルチという合弁会社をつくって、インド国民車の製造に協力したわけですね。ですから、実は今インドの自動車市場の六割をスズキ・マルチが占めているということでございまして、元々はインドがマジョリティーシェアを持っておりましたけれども、今やスズキ、日本がマジョリティーシェアを持っておりますから、恐らく、正確な数字を持っておりませんけれども、スズキの自動車というのは日本よりもインドで売れているんじゃないかと、台数が多いんじゃないかというふうに思われますけれども。
そういうことで、スズキが典型でございますけれども、今やトヨタもホンダも、あらゆる自動車企業がインドに進出してインドの今後のポテンシャルということを生かそうというふうに考えております。
そういうことで、アジア全体の成長率が非常に高いんですけれども、中国は次第に減速していきますけれども、インドは相当高い成長率を今後二十年、三十年にわたって維持する可能性が極めて高いわけでございますから、インド市場ということを重視していかなきゃいけないということと、日本のアジア外交ということからいいましても日印外交というのが非常に重要になってきます。現在、既に非常に良好でございますけれども、これを良好のまま維持して、例えば総理の相互訪問などということを続けていくということが非常に重要ではないかと思っております。
一応時間になりましたので、私の話はこのくらいにさせていただきます。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
次に、丹羽参考人から御意見をお述べいただきます。丹羽参考人。
○参考人(丹羽宇一郎君) 残り五分のようでございますけれども、十五分でよろしゅうございますか。
○会長(鴻池祥肇君) どうぞ。
○参考人(丹羽宇一郎君) 私、少し切り口を変えまして、二十一世紀の半ばに向かって世界はどのように変わるだろうか、あるいはアジアはどうだ、あるいは日本の国の姿はどう変わっていくであろうかというようなことを念頭に置きながら、世界のグローバリゼーションの潮流はどうなるか、あるいは、その中でも非常に重要なのは、戦後のレジーム体制の変革の時期が来ているのではないかということで世界の警察官不在の時代というふうに書いたわけでありますが。三つ目は、やはり日本のこれからの姿、その中で外交をどのように展開していくべきか、基本的な問題は何だろうかと。私は中国に二年半大使として行っておりましたので、この外交という問題につきましてもなかなか新聞等では出ないような話もあるかと思います。その一端でも少し触れながら、これからの日本の外交はどうあるべきかと、基本的な問題を少しお話ししたいと思います。
最初に、グローバリゼーションが世界の潮流であると。まあ、これにさおを差す動きが少し出ているようでございますけれども、特にトランプ大統領がツイートで動いておりまして、私の毎朝もこのトランプさんのツイートで始まる日々でございましてですね。そういう中での一つが先ほどから出ておりますアメリカンファースト、それから保護主義支持者、あるいは反グローバリズムという極めて身勝手な政策が最近出ておりまして、QアンドAなしの百四十語のツイートで世界に混乱のつぶやきを、さえずりをばらまいているというのが現在の姿で、どの国も大変に迷っていると思います。
安倍さんだけではなく、世界の各国が、この百四十字の言葉で、しかも中学生が理解できるような英語で分かりやすくこれを表すことは大変に難しい。皆さん、そのツイート、トランプさんのツイートを英語で御覧になっている方もおられると思いますが、非常に日本語に翻訳するのが難しい。裏と表でやはり英語を理解していかなきゃいけない部分があると思います。これをどのように日本語に訳して新聞が報道しているか、あるいはまた欧州の各国にどのように伝わっているか、大変に判断に迷うところがあると思います。そういう意味で、最近のスマホもインターネットもそうでございますが、真実はどこなんだ、ポストトゥルースという話が最近出ておりますけれども、やはりそういう目であらゆる情報をよく見ていく必要があるだろうということではありますけれども、どうも間違いなくグローバリゼーション、アンチグローバリズムというのが一つ入っているようでございます。
それから、アメリカンファーストといいますけど、チャイニーズファーストといってアメリカの大統領が言うことはありませんね。日本の首相がアメリカンファーストと言うこともありませんね。こんなものはごく当たり前のことでございまして、なぜこのフレーズがこれほど世界に広がって新聞の一面を飾るんだと、私にとってみますと極めて疑問であります。日本の首相がジャパニーズファーストと言って新聞の一面になりますかね。というふうに考えますと、アメリカンファースト、それは、重商主義だとかあるいは保護主義だといいますけど、こんなものは別に今に始まったことではなくて、どの国も自分の国益が第一であることは疑いのないことでありまして、これをもってトランプはアメリカンファーストでアンチグローバリズムだというふうに片付けるとか保護主義だとして片付けるというのは、やはりちょっと過剰反応ではないかと私は思っております。
したがいまして、最初に申し上げたグローバリゼーションというのは避けられない世界の動きでありまして、なぜかと。これは過去、例えば江戸の時代から人口の増加というのは非常に顕著に続いてきているわけですね、これは世界的に見まして。
例えば、江戸幕府の開幕のときに世界の人口はどれぐらいあったかといいますと、三億人でした。そして、一七〇〇年になって六億人になりました。一八〇〇年、マルサスの「人口論」が出る少し後、この頃になりますと九億人。それで、マルサスは何を言ったかというと、幾何級数的に人口が増える、算術級数的には増えない、例えば食料とかいろんなものは二〇%、三〇%アップで来るでしょうけど人口は違うんだと言いました。そして、一九〇〇年になりましたら十六億人になった。なるほど、マルサスの言うとおりかと。それじゃ、一九〇〇年はそうでしたが、二〇〇〇年になったらどれぐらいになるか。六十四億人になりました。そうか、人口はその勢いで増えるのか。
それじゃ、国連もいろいろ調べましたけれども、世界は二十一世紀の半ばに何億人になるだろうか。今、大体、平均的に見ますと百億人です。そこまで地球は耐えられるだろう。どういうことか。水と食料、自然現象、環境問題からいって百億ぐらいがいいところではないかと。誰も正確な数字は分かりません。という姿を我々は頭に入れて考えなきゃいけない。資源は有限であります。これはローマ・クラブをまつまでもなく、依然として地球で続く問題です。
人口はこのように大きく、江戸幕府のとき三億人が今や七十二億人になってきた。二〇〇〇年から二〇一七年までの間に大体毎年六千万とか七千万人増える。アフリカはこれから三十年で、今十億でありますが二十億人になるだろう、アジアの人口も増えるでしょう。ということを考えますと、世界のこれからの姿というもので何が一番大事なんだということは、やはり食料が安定するか、あるいは世界の水は大丈夫かということを我々は念頭においてこのこれからの姿を考えなきゃいけないだろうと。
その中で、日本というのはどういう立ち位置に今世界の中であるか。人口問題、水問題、人、物、金、これは人間が止めようとしても、トランプが止めようとしても絶対に止まらない。人口がこれだけ増えたからグローバリゼーションの動きは大変な勢いで進んでいるわけです。これを止めるわけにはいかない。人も金も物も、幾ら止めても、人は穴を掘ってでもモグラのようにメキシコから日本へ入ります。空からも来るでしょう、海からも来るでしょう。
したがいまして、トランプさんがメキシコとアメリカの間の不法移民を帰すとか柵を造ると言っております。これは、私もアメリカに十年いまして、そんなものは昔からあるよと。アメリカも移民を停止したり廃止したり反対したりしていますけれども、アメリカの国家理念というのは移民統一国家です。移民があってあの国はこのように発展をしてきたわけでありまして、この移民を止めるということはアメリカの国家理念を壊す、私はそんなことはできないと思います。そうやってアメリカが発展してきたことは、経済の歴史であろうと政治の歴史であろうと見れば分かるわけでありまして、大統領一人でこれを止めることはできないと思います。
したがって、今動いているトランプ大統領のいろんなつぶやきも、やはり時間を掛けて、もう少し冷静に物を見ていく必要がある。株式市場のように翌日すぐ反応する。千ドル上がって千ドル下がるとか、千円ですか、上がって下がるとか、為替も飛んだり跳ねたりすると。私は経済界に長くいますから分かりますけれども、冷静に物を見なさい。一日、二日で世界は変わらない。一日、二日で政策は実行できない。そうすると、三日、四日、一か月、二か月待ちなさい。そうして、よく冷静に数字を見て、実際の行動を見て、各国の反応を見て動きなさい。それを一番やっているのはドイツのメルケルでしょう。あるいは習近平でしょう。じっとしていますね。アメリカへ行ってゴルフやるとか、アメリカへ行ってトランプさんと遊ぶとか、そういうことをやっている国はどこにあるかと。やはり冷静に見なきゃいけない。もし、あれがアメリカ国民の非難を相当浴びるようになると、日本は一体何なんだということになります。
私は、国の姿を考えるときに、日本はグローバリゼーションから離脱することはできません。グローバリゼーションがあって初めて、日本の平和、日本の生活は守られているわけです。人、物、金が動かなくなったら、江戸の鎖国時代と一緒で、皆さん方は、鎖国時代、今、日本は生きていけないんです。あらゆるものが世界のどこかの国とつながっています。ボタンを押すと連続的につながっているわけです。
そういうふうに考えたときに、日本の国是としては、やはりこの四海、海に囲まれて、あらゆる面から見て日本は世界のどの国とも仲よくしなきゃいけない。どの国とも平和で付き合っていかなきゃいけない。どの国とも自由に貿易できるような体制に持っていかなきゃいけない。根本のところはここです。したがって、あらゆる政策は、中国でもロシアでも、イーブン北朝鮮とでも、いずれはやはり仲よくやっていくということが、日本の地政学的にもあるいは経済的にも政治的にも絶対に離れられない国是なんですよ。マストなんです、これは。けんかをやっていいことは日本の国としてはあり得ません。今、全てのものを自給自活できるのは、アメリカとオーストラリア、ロシアぐらいです。資源がなくてはできない。そして、経済制裁とかけんかをして、日本は立ち位置ありません。
また、もう一つの問題は、資源の有限と知って、私が申し上げましたけど、アメリカでさえも、今地球上で未開発の資源はどこにあると思われますか、北極海です。北極海を支配しているのは誰ですか、ロシアです。だから、トランプさんがティラーソンを、ロシアに非常に近いティラーソンを国務長官にしたと。全く理にかなっていると私は思っています。もしそうであるならばですよ、中国の習近平も恐らくロシアとは面と向かっては戦えないでしょう。しかも、太平洋を中国から欧州へ行けば四十日掛かります。北極海を行けば多分半分以下でしょう。その間の経済的な利益は大変なものであります。
そういうことも頭に入れて、二十一世紀の半ば、果たして世界はどのように変わるか。そして、日本は、立ち位置は平和と自由でしょう。平和と貿易でしょう。これなくしてはあり得ない。イーブン中国も日本と立ち位置はほとんど変わりません。これだけの十四億近い人口をどのようにして安定した国民の生活に持っていくか。彼らの今の資源の使い方からいえば、日本以上に平和と自由貿易が国是になるはずです。彼らもいずれ気が付くでしょう。
というのがこれからの世界の立ち位置で、全ての議論はその立脚点に立って物を考えていく必要があるという、難しいことは分かります。しかしながら、それをやっていくのが政治の仕事です。軍人の仕事とか経済界の仕事ではない。その国の姿勢を、基本をどのように維持していくかを考えるのが私は政治の仕事だと思っているんです。
ということで、グローバリゼーションは日本の国是というのは、まさに今、私が申し上げた点でお分かりいただけるだろうと思いますが、中国の一番の経済的な問題は水です。
これは、人口は世界の大体五人に一人、中国人です。水はどうだと。世界の大体二〇%を占める人口が今、水においては世界の八%です。つまり、それだけ一人当たりの淡水の占有量というのが少ない。一人当たりで見ると百八位。経済的には第二位である。しかし、人間が使う水の、淡水の一人当たりの占有量というのは八%にすぎない、世界の百八位だと、ということなんですね。全体で八%、しかしながら、一人当たりにすれば八%と。
そして、世界の中で、大都市で、普通の都市の四割近いところが水で大変に問題があるということです。重化学汚染を受けている可能性がある、あるいは農業の水はどうするかというようなことを考えると、中国においてもグローバリゼーションは避けて通れないだろうということがお分かりいただけると思います。
それじゃ、二つ目の、こういう中で習近平体制、中国体制、特に日本、アジアにとって中国はどんな存在なんだ。潰れるだろうか、あるいは経済的に波乱が起きるであろうか、起こしてはいけないということなんです。起きるのは勝手ですが、日本の国益を考えなければ、まあ勝手にしたらいいじゃないのと。共産党の世界がどうなろうとわしの知ったこっちゃない。しかし、それじゃ済まないから我々は心配をしているわけですね。中国の経済が崩壊したら日本の経済も崩壊すると思います。それほど中国の経済の位置は大変に強いし、中国の力自身が大変に今や強いということなんですね。
それはどういうことかと申しますと、あるいは軍事力においても、経済力においても、あるいは科学者の数においても、留学生の数においても、貿易の総額においても世界第二位以上の地位を占めている。特に軍事力においては、一兆七千億ドル世界全体であるとしても、アメリカが三三%、中国は一〇%強、日本は二・五から二・六%です。何倍かの力をもう持っている。
それから、科学者の数も、最近OECDが調査をして発表しました。これも私は、去年の夏ですかね、発表しましたが、まず中国のRアンドDの科学者の数は百四十八万人ぐらいいると。アメリカが百二十五万人である、日本は六十六万、ロシアが四十四万、韓国が三十二万というように、科学者の数においてもかなり出ているんです。
それから、四百四万人という留学生が四十年間で海外に出ている、そのうちの五〇%が中国に戻ってきているということを考えると、我々が今まで思っているように、中国はあほやばかやうそつきだという時代はもう過ぎた。つまり、それだけ教育受けた連中が、今や政府の中枢なり国有企業の中枢に入ってきているというふうに考えなくてはいけません。もちろん、中には変なのはいっぱいおります。日本の十倍ばかもいるし、賢い人もいるということを考えると、中国は世界第二位だというのは、科学者の数、留学生、あるいは軍事力から見てもそうである。
経済的にはどうかと。
ここで、ちょっと、今日お配りした資料に、先ほどから出ておりますRCEPとASEANというものの国、あるいはアジア二十四か国というのは、どういう国があってどれぐらいのGDPの規模かというのが出ております。
これを見ていただきますと、中国、日本、インド、韓国、この四か国でアジア二十四か国の九〇%を占めているんです、GDPでは。ということは、あと二十か国で一割しか占めていない。そして、今から三十年前、中国のGDPはここにありますタイの三千九百五十億ドル、〇・四兆ドルぐらいでした。今、十一兆ドルに近い。二十五倍だ。
日本はその頃どうであったか。日本は、先ほど榊原さんから出ました一九五三年から七三年の第一期の高度、戦後最大の日本の好景気のときですね、時間が来ていますね、の頃、やはり日本は経済成長率が九・一%でございました。その頃、中国が〇・四兆ドルの頃、日本は三兆ドルでした。その頃の、三十年前は三兆ドルです。現在は、名目でいいますと、ドルで直しますと、やはり、為替にもよりますけれども、二〇一五年ベースにすると大体四兆一千か二千億ドル。僅か一・数倍にしかなっていない。
ところが、中国は今や十一兆ドル。〇・四が十一兆ドル、これはちょうど今のタイと同じであります。二十五倍になっている。貿易総額においても中国が、二〇一六年はかなり落ち込んでおりますけれども、やはり三兆六千か七千億ドルぐらいあるでしょう。そして、世界全体が三十六、七兆ドルになっています。アメリカが第二位です。そういうような状況の中で、中国がいろんな面から見てももう第二位という地位を固めているというふうに思った方がいいと思います。
アメリカはもう今や世界の警察官ではあり得ないというふうに言っておりますが、トランプの発言を聞いてもその傾向はうかがえます。じゃ、そういう中で日本の外交上の将来はどうなんだということであります。
これは、私が見る限り、一番大きなものは情報管理です。サイバーアタックです。サイバーアタックについて、日本ほど無防備で弱い国はありません。それはなぜでしょう。これは政治家の皆さんに是非お願いしたい。日本の縦割り組織がこうしているんです。何とか省何とか省で、各々がサイバーアタックを受けていても、簡潔におまとめ願いますですが、そういうことであります。
したがって、日本のこのサイバーアタックに対する防衛の形は全くと言っていいほどできておりません。それは、そういった、今申し上げたようなこと、縦割り行政というものがそういうふうになっているということ。
もう一つは、サイバーアタックを受けた企業が必ず報告の義務付けがなされていない。欧米はされている。ところが、日本の場合には、民間企業にしても、サイバーアタックを受けたことを言うと、あの会社がだらしない、あの会社が情報が盗まれているという、隣を意識したことでなかなか報告が行われていないということは、国としてのサイバーアタックがどの程度あるか皆さん御存じないということでありまして、しかも、漢字の世界は英語に訳さなくても恐らくスパイ行為はかなりイージーにできるだろう。
そこで申し上げたいのは、一月二十七日に公開されました映画「スノーデン」、覚えておられる方はおられると思うが、元CIAのエドワード・スノーデンの国際情報スパイの実話と言われておりますのが映画になっております。是非御覧いただきたい、政治家の皆さんは。そして、日本の情報管理がいかにいいかげんかをちょっと考えていただく必要がある。
それから、戦後レジーム体制の刷新というのは、実を言いますと、戦勝国中心の戦後のレジーム、英、米、仏、ロシア、中国。どうしてドイツと日本が入らないか、国連の安全保障理事会の常任理事として。もう一つは、G7の中にどうして世界ナンバーツーの中国を入れないんだ。
つまり、G7じゃなくて、先ほども出たインドも入れればG10にすべきだ。そして、常任理事国にドイツと日本を入れるべきだ。これを動くのは、ドイツと日本がよく話合いをして、そしてアメリカとかほかの先進国を動かすことです。こうすることによって、インターナショナルバリューを中国なりロシアなりに自覚をさせるという方向でいかないと、軍事対軍事、力対力では世界は解決できないんだということで、取りあえず終わりたいと思いますが、また御質問があればお受けいたします。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。これより質疑を行います。
本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言いただくようお願いいたします。
まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただきたいと存じます。
委員の一回の発言時間は答弁を含め十五分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願い申し上げます。
それでは、質疑のある方は挙手を願います。藤田幸久君。
○藤田幸久君 民進党の藤田幸久でございます。
参考人の皆さん、ありがとうございます。
時間の関係で、主に榊原先生と丹羽大使に質問をさせていただきたいと思っております。
時間の関係がありますので、幾つか質問させていただきますので、手短に御回答いただければ有り難いと思っております。
まず、榊原先生ですが、チャンドラ・ボースの話が出ました。私の理解では、戦争中に渋沢敬三さんのお宅に滞在しておられて、それが今財務省の三田公館になっていると、そういう縁もあるかと思っておりますが、いい話を伺いました。
それで、今日はインドと中国の話伺いましたが、一昨年、中国に行ったときに、習近平さんから、アジアインフラ投資銀行と一帯一路のお話、十五分、二十分ぐらい超党派の議員で伺いました。
今日お話しになったことは、ある意味では戦後、欧米列強がアジアを分断していったと思っています、インドとパキスタン等々でございますが。それを逆に言いますともう一度統一をする話でもありますし、と同時に、よく需要と供給といいますか、大きな需要を起こさなければ戦争が起きてしまうと。戦争に代わる需要をしっかり起こしていくというのがアジアインフラ開発銀行と一帯一路。
かつ、これがシルクロード全体でという話になっていますので、単にGDPがこのアジア、リオリエントとするばかりではなくて、需要喚起による戦争回避、平和構築という流れでもあるのではないかと思いますけれども、そういう観点から申しますと、サンフランシスコ講和条約が一九五二年に発効したわけですが、実は日本にとっての隣国でありますところの中国、ロシア、北朝鮮、韓国はサインをしておりません。そことの関係改善ということと需要を起こしていくということが平和の基本ではないかというふうに思っておりますが、そのことと今日おっしゃっていただいたこととの関連でコメントをいただければ有り難いと思います。
○参考人(榊原英資君) 先ほども申し上げましたけれども、日本の経済面での最大のパートナーは中国なわけでございますね。ですから、中国とは、まあ戦前、戦中、いろいろぎくしゃくありましたけれども、ここの関係を良好に保っておくというのはこれは極めて重要なことでございます。ですから、中国外交というのは、安全保障では日米外交が主軸でございますけれども、それをベースに置きながら、経済面では中国と極めて友好的な関係を維持するということが重要だと思いますので、その辺が日本外交の一つのポイントになるのではないかと思います。
それから、ロシアも、日ロ関係は今非常に改善しておりますし、特にシベリア開発なんかで日本が協力できる余地が相当ございますから、この日ロ関係の改善というのはプーチン、安倍さんでかなり進んでいくんだろうと思います。また、日ロ関係の改善にアメリカが異議を唱えるような状況ではございませんよね。トランプ政権は割にロシアと接近しようというふうにしておりますから。やっぱり日ロ関係を改善していろんな形で経済協力を進めるというのも日本にとって非常に重要なことだというふうに思います。
ですから、今後やっぱり日本にとって極めて重要なのは、別に日米外交が重要でないと申し上げるつもりはございませんけれども、アジア外交、特に対中、あるいは対インド、あるいは対ロシアと、そういうところがポイントになってくると思いますし、そこにいかに注力していくかということが重要ではないかというふうに思っております。
○会長(鴻池祥肇君) 丹羽参考人ですよね。いいんですか。
○藤田幸久君 丹羽参考人に別の質問をします。今のは榊原先生への質問でございまして。
○会長(鴻池祥肇君) 藤田君、どうぞ。
○藤田幸久君 次に丹羽大使に。
先ほどティラソン国務長官のお話されまして、先週ちょっと、簡単でございますがある会議で御挨拶をしてまいりました。よく、ある意味では外交の素人が国務長官という負担はありますが、とんでもない話で、逆で、これは四十年間、五十数か国と、ある意味じゃアメリカ外交を実質仕切ってきたような方が国務長官に直接来たような気もいたしまして、ただ、いわゆるヨーロッパのロイヤルダッチシェルとかロスチャイルドの自然化学エネルギーの転換に対して、エクソンは化石エネルギーで、そちらの分野で負けたけれども、ロシアと今はよりを戻したと。
ですから、これからある意味では化石エネルギーと天然エネルギーと、争いの中核に行くような面もあると思うんですけれども、そんな中で、アメリカは決していわゆる撤退していくというよりも、そういう面では、かなり厳しいヨーロッパと中国との連合軍に対してアメリカが戦いを挑んでいくという面もあると思うんですけれども、その辺、商社の御経験も含めて、どういうふうに御覧になっているかお答えいただきたいと思います。
○参考人(丹羽宇一郎君) 大変厳しい質問だと思いますね。
特に、先ほど申し上げましたけど、今地球上、世界で残っている最大の資源で、いずれこの再生エネルギーというのはやはり限界がありまして、コスト的にも今かなり競争力が世界的に付いております。日本だけが再生エネルギーについてはかなりビハインド、遅れておりますけれども、いずれ再生エネルギー出てくると思いますが、依然として主役はやはり先ほどあった化石燃料だと思うんですね。
そういう中で、ティラーソンというの、私もお会いしていますけれども、大変にしっかりしたバランス感覚の取れた人だと思います。したがって、トランプさんとの意思の疎通といいますか、調整というのはこれから恐らく行われるんではないだろうかというふうに私は期待しているわけですね。
トランプさんがどの程度、このCOP21につきましても彼はオバマ・レガシーの一つとして否定しているわけですね。あれは、地球環境問題は中国の仕掛けなんだということで言っておりますけど、ティラーソンさんはそう思っていないと思うんですね。ティラーソンさんは、やはり基本的には私が申し上げた北極圏の資源に目が相当行っているだろうと思います。
それで、中国と欧州の問題がありますけれども、欧州はある意味ではそれはもう頭に入れて、ロイヤル・ダッチ・シェルも含めて、やはりロシアとのこの問題についてはティラーソンさん以上に注目をしているというふうに思いますので、最終的には欧州とアメリカのこの北極圏をめぐるロシアとの協調というもの、争いになるだろうと。それをどのように外交的に詰めていくかというのは、ティラーソンさんの大きな、トランプから恐らく言われている役割じゃないかと思うんです。
したがいまして、日本はその中でどのような対応をしていけるかということなんでしょうけれども、圧倒的な力が、やはりエクソンとロイヤル・ダッチ・シェルというようなところとは力の差がありますから、日本はちょっと、やはりアメリカのティラーソンさんと協力しながらその部分についても一つの役割を持つべきじゃないかというふうに思います。
エクソンは、やはり日本の、我々ともシベリアの開発で一緒に動いておりましたから、そういう意味からいっても、やはり欧州というよりも、日本はアメリカと一緒にロシアの北極圏についても何らかの役割を持てるようにしていくのが外交上はいいんではないかと。だから、ティラーソンさんとできるだけ意思の疎通を民間も併せてやっていくことが大事ではないかというふうに思っております。
中国と欧州の間もそういういろんな問題ありますけど、資源からいいますと、やはり中国はロシアとダイレクトにいろんな動きをするだろうというふうに思いますね。
○藤田幸久君 ありがとうございました。
榊原先生にもう一つ。
先週、トランプ大統領に近い方に何人かお会いした中で、いわゆるカレンシーマニピュレーションを日本はやっているんじゃないかと非常に気にしておりました。
今、日銀がある意味では財務省に代わって支えているような部分があって、それで今までの低金利から金利が変わってくる流れになってきて、こういうときに、トランプさんのツイッターでぱっと来たときに今までのように日銀と財務省で管理ができない、瞬間的にいろんな局面が起こり得るんだろうと思うんですけど。つまり、金利の問題で、いわゆる国債の問題でかなり瞬間的に危機的な状況が起こり得るんだろうと思うんですけれども、それに対して未然にどういう対応ができて、今どういうふうな危険水域というふうに思っていらっしゃってどういう対応が可能なのかについてミスター円にお答えをいただきたいと思います。
○参考人(榊原英資君) まず、為替の話ですけれども、トランプが、カレンシーマニピュレーションをしているという批判に対しては、これはもう堂々と反論すればいいと思うんですね。要するに、日銀の金融緩和というのは当然為替に跳ねてきて為替が安くなるということになるわけでございまして、日銀がドメスティックなその目的を達成するために緩和をしていると、それで円安になっているということでございますね。
これはアメリカも同じようにやったことでございまして、二〇〇九年から二〇一二年にかけて、三度にかけて量的緩和というのをやったわけですね、QE1、QE2、QE3と。このときはドル安になっているわけですね。それで、ドル・円はたしか八十円前後まで円高になっているということでございますから、カガのその金融政策のスタンスによって為替が影響を受けるというのが近年の為替の動きの大体大きなファクターでございますから、それをきちっと言って、日銀が金融緩和していることによって円安というのはもたらされているんだということを言うべきだと思います。
ただ、今後の動きは、そのトランプの圧力だけではなくて、どちらかというと円高に推移する可能性が高いと思います。二つぐらい要因がありまして、一つは、アメリカの利上げは予想されていたよりも恐らく回数が少ないと。一年ぐらい前は、今年三回か四回利上げをするんじゃないかというふうに言われておりましたけれども、恐らく一回か、せいぜい二回で終わるというふうに考えております。これは、予想ということとの兼ね合いで言いますと、ドル安要因でございますね。
それから、日本銀行の金融緩和というのはずっと円安要因になってきたわけでございますけれども、日本銀行の金融緩和もそろそろ最終局面に入ってきたという認識がマーケットにあるわけでございます。これも円安要因が消えるということでございますから、円高ということでございまして、トランプの主張と一緒に考えますと、恐らく今後、円が百十円を切って百円を目指す展開になってくると思います。
ちょっと大胆な予測でございますけれども、私はパブリックに、今年中に百円を切っても不思議じゃないと、切るということではありませんけど、切っても不思議じゃないというふうに言っておりまして、恐らく緩やかな円高が今後も進んでいくんだろうというふうに思います。
○藤田幸久君 ありがとうございました。
最後の質問、丹羽大使に伺いますが、最近、資料にもございますが、アメリカの沖縄における米軍基地、それよりも、例えば国連機関の招致とか、それからいわゆる経済のためには基地よりも別の方法というようなことをおっしゃっておられますが、実際にいろいろ資料を見てみましても、むしろ基地がない方が沖縄経済にとってはいいというようなこともかなり出ておりますが、その沖縄の問題、それから、沖縄の民意を尊重してというようなことをおっしゃっておられますが、そのことについてコメントをいただければ幸いでございます。
○参考人(丹羽宇一郎君) 私、実は数日前も沖縄に行っておりまして、沖縄の方ともお話をしていますが、やはり一番の問題は沖縄の県民の安定した生活ということでしょうかね。あるいは、漁業の問題についてもそうだと思いますね。
実は、軍事ジャーナリストの有名な方とちょっと最近もお話をちょっとお聞きしたんですけれども、対中国に力と力でいった場合に絶対に負けるだろうと言うんですね。それは、私はよく分かりませんけれども、要するに、軍事対軍事ということになると、制空権は完全に中国に握られているんではないかというふうに言っておりましてですね。
そうすると、沖縄の基地の存在というのは一体どうなんだというようなことをそのときの議論になったわけでありますけれども、基本的にはやはり日米同盟というものがあって初めて現在の北東アジアの平和の安定というものがあるんではないかという前提に立って考えますと、急激に今その基地を全部なくしてというようなことはあり得ないですよね。基地を少なくしてどうするんですかと。
というと、今や、やはり肉弾戦ではなくてロケット、まあ中国もロケット軍というのをつくりましたけれども、ロケットという、あるいはミサイルというものがやはりこれから日中の間にしても、あるいは米中の間にしても主流を占めていくんではないかということからいって、沖縄の基地をやはり平和な機関で使えるようにしていった方がいいんではないか。
だから、沖縄の基地で返還されている部分がありますけど、そこにやはり、国連に対する寄与度からいうと日本は結構高いんですよね。ところが、アジアに国連の主要な機関はほとんどないんです。ほとんど欧米にあるんですね。ということからいいまして、できるだけアジアに、その中の中心のところに平和的な国連の機関を誘致する、あるいはそれを日本の国としてもお金の面においても多少な支援をしていくというような方向にやはり日本も動いていったらどうなんだというふうに思って、私はその沖縄の人ともちょっとお話をしたわけでありますが、政治としてもそういう方向に少しかじを切っていくような時期に来ているのではないかというふうに思っております。
○藤田幸久君 馬田先生と白石先生には質問できずに申し訳ございませんでしたが、四名の先生方にありがとうございました。
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