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参議院本会議における藤田幸久の質疑議事録2015年05月20日
参議院本会議における藤田幸久の質疑議事録
活動報告
2015年05月20日
参議院本会議における藤田幸久の質疑議事録
○藤田幸久君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました防衛省設置法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
まず初めに、戦後我が国の防衛政策を一貫して支えてきた文民統制についてお尋ねします。
一九九六年、私が衆議院議員に初当選し、最初に取り組んだのが対人地雷全面禁止条約、いわゆるオタワ条約への日本の参加に向けた働きかけでした。NGO出身議員として、私は、「地雷ではなく花をください」という絵本を国会議員に買っていただき、一冊千五百円の本から六百円の利益を地雷除去に充てる活動を始めるとともに、超党派の対人地雷全面禁止推進議員連盟を立ち上げました。
半年間で数千冊が売れ、野党各党の議員は続々賛同してくれたものの、与党自民党の議員は、対人地雷なくして日本列島は守れないとの政府の政策から、誰も参加できませんでした。そんな中、自民党から最初に参加してくれたのが自民党国防部会長であった現在の防衛大臣、中谷元議員でした。陸上自衛隊の出身で地雷担当であった中谷議員は、PKOで行ったカンボジアで女性や子供など市民の被害の悲惨さを見て、対人地雷の残虐性に大きな刺激を受けたのです。
中谷議員に続いて多くの自民党議員も加わり、小坂憲次議員を会長とする議員連盟が三百八十八人まで広がりました。この間、橋本龍太郎総理が指示した対人地雷に代わる代替兵器の開発を防衛庁の制服組が受け入れ、最後まで抵抗した内局を説得してくれました。一九九七年十二月、小渕恵三外務大臣がオタワ条約に調印したのです。
私は、この経験から、現場の状況を知る制服組は、政治の指示さえ的確であれば柔軟に政策転換を果たす能力があることを実感しました。また、私自身、東日本大震災やスマトラ地震での自衛隊の人道援助活動や、ハイチやネパールでのPKO活動の現場を見てきました。自衛官の皆さんの不眠不休の活躍ぶりは筆舌に尽くせません。
そこで、中谷大臣に、オタワ条約の経験も踏まえ、制服組の能力と適応性についての見解を伺います。
次に、我が国の文民統制、シビリアンコントロール下における防衛省内の文官統制あるいは文官優位性と呼ばれる背広組と制服組の関係について伺います。
文官統制は、別名ビューロクラティックコントロールとも言われ、内局の過度な介入をイビリアンコントロールとやゆする人もおります。
衆議院の質疑では、文官統制あるいは文官優位性に関する歴代総理の答弁が引用されました。佐藤栄作元総理の、自衛隊のシビリアンコントロールは、国会の統制、内閣の統制、防衛庁内部における文官統制、及び国防会議の統制による四つの面から構成されているという答弁、中曽根康弘元総理の防衛庁長官時代における、私は内局による統制というのは必要だろうと思っているんですとの答弁や、竹下登総理の答弁もあります。しかし、中谷大臣は、総理の方々の答弁については全く答えず、これら総理による文民統制との言葉尻を引用して文官統制はなかったと強弁しています。
答弁逃れをするのではなく、歴代総理の文官統制あるいは文官優位性についての具体的発言そのものの事実確認と評価について正々堂々たる答弁を求めます。
中谷大臣、そもそも文官統制や文官優位性という実態を認めなければ、この設置法第十二条を変えねばならないという立法事実が消滅するのではないですか。
同様に、外交防衛委員会における福山哲郎議員の、防衛省が行ったシミュレーションで設置法十二条を改正しなければならない問題点や具体的事象があったかとの質問に対して、特段の問題点は明らかになっていないと答えており、立法事実は存在しないのではないですか。
仮に、この設置法十二条が改められ、背広組と制服組との両方が防衛大臣を補佐する関係になった場合、軍事的見地からの答弁が求められれば制服組による国会答弁が行われるのか、お答えください。
七十年前の大戦に軍部の独走があったばかりではなく、近年も制服組の暴走が後を絶ちません。二〇〇八年には、当時の田母神航空幕僚長が、日本が侵略国家であったというのはぬれぎぬである、村山談話は言論統制の道具である、我が国は専守防衛を旨とする国防の態勢を維持しているが、防御のみを考えていては効果的な防御態勢はできない、相手国への攻撃について徹底的に考える人たちが必要であるなどと発言しました。田母神氏がこうした言動を自衛隊関係の機関誌等で頻繁に行っていたにもかかわらず、防衛省内でチェックができなかった体質が問題です。
省内のチェック体制や自浄能力、さらには、こうした暴走を止める再発防止策について中谷大臣に伺います。
次に、本改正案で新設される防衛装備庁について質問します。
今回の改正では、防衛産業基盤の育成のため、防衛省が予算を獲得し、多くの契約企業や研究機関にも軍事予算が行き渡ります。これに集団的自衛権行使を含む新たな安保法制の整備が加わると、軍事的組織と兵器産業の結合関係を意味する軍産複合体形成に至ると思われますが、中谷大臣の見解を伺います。
軍産複合体に早くから警鐘を鳴らしたのは、軍人であるアイゼンハワー・アメリカ大統領で、一九六一年に、軍産複合体が我々の自由や民主主義的な手続を脅かすことのないようにしなければならないと述べています。その意味でも、防衛装備庁による憲法や各種法律の遵守と、高い透明性や説明責任の実行とが重要と思われますが、中谷大臣の見解を伺います。
防衛装備品等の調達には極めて高い専門性が求められます。調達に当たり、米国を始めとする外国政府や国内外の企業に対して交渉力を高め、装備品の適正価格を見極めるためには、装備品の構想から開発、運用、廃棄に至る全過程を視野に入れた、いわゆる調達のプロを育成する必要があると考えます。アメリカでは、国防取得大学、DAUなどで専門的な教育を行っているが、防衛省はどのように調達のプロを養成していくのか、中谷大臣に伺います。
我が国の防衛調達行政は、残念ながら過去に談合事件、背任事件を繰り返しています。衆議院の質疑において、防衛調達に関する不祥事の類型として、職員による背任事案、企業と職員による談合、企業による過大請求事案を挙げ、その原因として、随意契約が多い、閉鎖的な人事管理、法令遵守意識の欠如、企業の赤字回避対策を挙げています。こうした類型と原因に対してどのような対策を講じているのか、類型別に中谷大臣にお答えいただきたい。
次に、防衛装備庁の新設に伴う技術研究本部の廃止についてお伺いします。
自衛隊が使用する車両、船舶、航空機、誘導武器や、重点的に取り組む統合先進技術に関する研究開発を行う技術研究本部は、平成二十六年度で約千五百億円の年間予算があります。防衛産業にとっては、技術研究本部と装備品の共同開発を行えば、研究開発費が確保できる上、受注も確実となるなどのメリットがあります。しかし、それゆえ、過去には技術研究本部と防衛産業との癒着が問題になりました。
本改正案により、技術研究本部が防衛装備庁に吸収された場合、規模が増大する研究開発費の使途が不透明になるのではないかとの懸念があります。研究開発費の透明性、公平性を高めるための政府の方策について伺います。
次に、新日米ガイドラインと安全保障法制との関係について岸田外務大臣に質問します。
五月十二日の外交防衛委員会において、私が、安保法制が国会で否決された場合、新ガイドラインはどうなるのかと質問したのに対し、岸田大臣は、我が国の現段階の法令にガイドラインが従うということ、これは当然であると答弁しました。
ということは、安保法制が国会で否決された場合、ガイドラインの立て付けからして、新ガイドラインから四月二十七日以前の前のガイドラインに自動的に戻るのか、それとも、新ガイドラインを維持しつつ、現段階の法令に従って、活用できない部分を除外するのか、また、それはどの部分に当たるのか、明確な答弁を求めます。
平成二十四年十二月の第二次安倍内閣発足後、国家安全保障局、NSCの設置、新防衛大綱、中期防の策定、特定秘密保護法の成立、武器輸出三原則の見直し、新日米ガイドラインの策定、また、五月十五日の集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法案の提出と、我が国が戦後歩んできた平和国家の歩みを根本的に変更する暴走が加速しています。
しかも、これらの決定プロセスは、強行採決や憲法の解釈変更といった、国民の代表である国会の無視や軽視の連続です。その極め付けが、国会の審議を経ていない安全保障法制と集団的自衛権行使の運用を定めたガイドラインを日米両国政府間で合意したこと、そして、提出すらされていない安全保障法制の夏までの実現を安倍総理が米国の議会で約束してしまったことです。
中谷防衛大臣は、私は、国会というのは最大のシビリアンコントロールである、原点であると思っていますと発言しています。また、文民統制の原点が憲法九条であると答弁しておりますが、安倍総理も中谷大臣も、この文民統制を自ら破ってしまったのではないですか。その中谷大臣に防衛省設置法案を提案して文民統制の在り方を問う資格はないと思いますが、答弁を求めます。
二〇〇八年、田母神前空幕長が参考人として出席した参議院外交防衛委員会の冒頭で、北澤俊美委員長は以下のように発言しました。昭和の時代に、文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い命が失われました。国家が存亡のふちに立った最初の一歩は、政府の方針に従わない軍人の出現と、その軍人を統制できなかった政府・議会の弱体化でありました。
また、同じ二〇〇八年の北京オリンピックに、当時戦争状態にあったロシアとグルジアの射撃競技の女性選手たちが一緒に出場し、表彰式でメダルを受け取った後、抱き合ってお互いの健闘をたたえ合い、次のように述べました。戦争を起こすのも戦争を止めるのも政治家だと。幾ら文民統制を厳格に運用しても、政治が暴走してしまっては意味がないということです。
例えば、海外で自衛隊による歯止めのない武力行使を推進する国のトップが君臨し、その下で過去の戦争責任を否定する制服トップが出現する。また、同じ時期に、その同盟国に、大量破壊兵器がないにもかかわらず戦争を仕掛けるような大統領が出現することの蓋然性、すなわち、こうしたトリオがトップを占めると暴走が止められない蓋然性を中谷大臣はどう想定しますか。
恐らく、良識ある自民党や公明党の議員の方々も内心は懸念している、そうした蓋然性を想定せずに今回の法改正や安全保障法制を推進することが本当に日本の安全と平和を守ることにつながるとお考えか、真摯にお答えいただきたい。
かつて、自民党国防部会長でありながら対人地雷禁止の英断を下したように、今、日本国民と自衛隊員とその家族の命と安全を守るために政策転換を行う英断のお気持ちがないかをただして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中谷元君登壇、拍手〕
○国務大臣(中谷元君) 藤田議員にお答えいたします。
まず、自衛官の能力と適応性についてお尋ねがありました。
防衛省においては、防衛大臣が的確な判断を行うため、官房長及び局長による政策的見地からの大臣補佐と各幕僚長による軍事専門的見地からの大臣補佐が、言わば車の両輪としてバランスよく行われることを確保しております。
御指摘のオタワ条約への参加などの課題においても、官房長及び局長による大臣補佐と各幕僚長による大臣補佐とが適切に連携してなされたものと承知しており、また、東日本大震災等への対応においても、現場における自衛官の活躍はもとより、各幕僚長は官房長及び局長とともに適切に大臣補佐を行ったものと承知をいたしております。
今後とも、文民統制の主体である防衛大臣として、自衛官の有する軍事専門的知見を生かしつつ、防衛省・自衛隊に関わる様々な課題へ的確に対応してまいります。
次に、歴代総理大臣の文官統制、文官優位性に関する発言についての事実確認と評価についてお尋ねがありました。
文民統制とは、民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味するものであり、文民統制における内部部局の文官の役割は、防衛大臣が文民統制を行う際の補佐です。防衛省設置法第十二条は、官房長及び局長が防衛大臣を補佐する旨を明確に規定をしています。
一般に、補佐の意味は、部下が上司を助けることであり、他人の行為の消極的な制限又は禁止、あるいは積極的な下命という意味である統制を補佐者として行うことはできません。
また、佐藤総理大臣も、昭和四十七年三月十六日の参議院内閣委員会において、文民統制は政治の優先である旨答弁しており、中曽根防衛庁長官も、昭和四十五年五月十二日の参議院内閣委員会において、文民優位とは政治家や国会が軍事を掌握することである旨答弁しております。さらに、竹下内閣総理大臣も、昭和六十三年二月二十三日の衆議院予算委員会において、防衛政策を立案する際に文官と自衛官が話し合う旨答弁しています。
こうしたことを踏まえれば、政府として文官が部隊を統制するなどの文官統制の考え方は取っていないことは明らかであり、御指摘の過去の答弁についても、内部部局の文官の補佐を受けて行われる大臣による文民統制の趣旨であると理解されます。
このように、これまでの質疑においても、私は、過去の様々な答弁等を踏まえて御指摘の答弁の趣旨についてお答えをしてきたところであり、私が、御指摘の答弁については全く答えず、文官統制はなかったと強弁しているとの御指摘は全く当たらないものと考えます。
次に、防衛省設置法第十二条の改正に係る立法事実についてお尋ねがありました。
防衛省設置法第十二条は、官房長及び局長による防衛大臣の補佐に係る規定であり、いわゆる文官統制や文官優位を定めたものではありません。また、官房長及び局長による政策的見地からの大臣補佐と各幕僚長による軍事専門的見地からの大臣補佐の調整、吻合という同条の趣旨を変更する必要性が生じているわけではありません。
他方、今般、防衛省改革の一環として、統合幕僚監部の改編や防衛装備庁の新設を予定しており、防衛省設置法第十二条についても、従来の趣旨を変更しないままで新たな組織構成に適切に対応した規定とする必要があります。
具体的には、大臣補佐の主体に防衛装備庁長官を加えること、政策的見地からの大臣補佐の対象となる事項について限定的に掲げている現行規定を改め、当該補佐が防衛省の所掌事務全般にわたることを明確化すること、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐の調整、吻合という趣旨をより明確化することが必要であるため、同条を改正するものであります。
次に、防衛省設置法第十二条の改正と自衛官の国会答弁との関係についてお尋ねがありました。
防衛省設置法第十二条の趣旨は、官房長及び局長による大臣の補佐と各幕僚長による大臣補佐が、言わば車の両輪としてバランスよく行われることを確保するものであり、今般の改正によってもその趣旨は変わりません。自衛官の国会答弁の必要性については、あくまで国会において御判断される事項であると考えます。
その上で申し上げれば、各幕僚長を始めとする自衛官は、引き続き防衛大臣を軍事専門的見地から補佐する者として部隊運用等の隊務に専念すべきであることから、各自衛隊の隊務に関する国会答弁についても、従前と同じく、官房長や局長に、また改編後の統合幕僚監部にあっては、運用政策総括官といった文官に行わせる方針であります。
次に、田母神元航空幕僚長に係る事案を踏まえた防衛省内でのチェック体制等についてお尋ねがありました。
防衛省内のチェック体制については、同事案を踏まえ、大臣通達等を発出し、隊員が部外へ意見発表を行う際、職務上の上級者に文書で届け出る内容を明確化するなど、適切な手続を取るように周知徹底を図っております。
また、自浄能力については、高級幹部としての自覚を徹底させるための将官への昇任時における研修の実施や、適切な任命だけでなく、幹部自衛官の視野を広げるため、自己研さんについても適切に指導しています。
現在、これらの取組を再発防止策として実施しているところであり、国民の更なる信頼を得られるよう引き続き努力をしてまいります。
次に、防衛装備庁の設置や平和安全法制の整備が軍産複合体の形成につながるのではないかとのお尋ねがありました。
防衛装備庁は、防衛装備品の開発、生産のための基盤の強化を図りつつ、研究開発や調達の適正かつ効率的な遂行を任務としています。これは、我が国を取り巻く厳しい財政事情や、防衛装備品の高度化、複雑化といった防衛装備品を取り巻く環境の変化に適正かつ効率的に対応することを目的とするものです。
また、平和安全法制の整備は、国民の命と平和な暮らしを守り抜くとともに、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献することを目的としています。
自衛隊の装備については、一昨年末に決定した防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づき、着実に整備を行っているところであり、今回の法改正や平和安全法制の整備によってこうした防衛力整備の仕組みを見直すことは考えておりません。
以上から、これらの施策が軍産複合体の形成に至るとの御指摘は当たらないと考えております。
次に、防衛装備庁における法令遵守や説明責任についてお尋ねがありました。
議員の御指摘のとおり、防衛装備庁の新設に当たっては、各種法令の遵守や高い透明性の確保、説明責任の実行が重要だと考えております。
このため、まず第一に、監察・監査機能の強化を図っていくこととしております。第二に、教育部門の充実による職員への法令遵守教育の徹底を図ることとしております。第三に、装備品のライフサイクルを通じた一元的かつ一貫した管理を通じ、コスト管理や適正な取得方式の決定を行うことで、装備品の取得に関するより一層の透明性を確保し、説明責任を果たしてまいります。
次に、防衛装備品等の調達プロの養成についてお尋ねがありました。
防衛装備庁では、高い専門性を有するとともに、バランスの取れた人材の養成が必要となります。そのため、職員のキャリアパス形成の一環として、調達の制度やプロジェクト管理の手法など、装備品の取得に関する教育や研修を実施することにより、専門的な知識に通じたプロフェッショナルを養成するため、教育部門の充実にも努めてまいります。
次に、防衛調達をめぐる不祥事の再発防止策についてお尋ねがありました。
防衛省としては、防衛装備をめぐる不祥事を踏まえ、事案に応じ原因を分析し、対策を講じてまいりました。
具体的には、職員による背任事案を受け、相互牽制が働く組織体制の整備、防衛調達審議会の設置、随意契約の透明性の向上、職員の法令遵守の強化等を図ってまいりました。また、企業と職員による談合事案を受け、閉鎖的な人事管理体制の見直し、防衛監察本部の設置、法令遵守教育の徹底を図ってまいりました。さらに、企業による過大請求事案を受け、違約金の見直し、抜き打ち調査の導入、企業の法令遵守の強化、契約制度の見直し等を図ってまいりました。
防衛装備庁の設置に当たっても、過去の教訓を真摯に省み、こうした再発防止策を引き続き厳格に実施してまいります。
次に、防衛装備庁における研究開発費の透明性、公正性を高めるための方策についてお尋ねがありました。
技術研究本部においては、陸自UHX事案の教訓、反省を踏まえ、これまでも事業者との接触の適正化を徹底するとともに、企業からの情報収集の透明化などの方策を講じてまいりました。
防衛装備庁においても、これらの方策を引き続き厳格に実施するとともに、監察・監査機能の強化や教育部門の充実による法令遵守教育の徹底といった措置により、業務の一層の透明性、公正性を確保してまいります。
次に、文民統制における国会の重要性についてお尋ねがありました。
文民統制とは、民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味するものであり、我が国においても、自衛隊が国民の意思によって整備、運用されることを確保するため、国民を代表する国会や、国会に対して連帯して責任を負う内閣が自衛隊を統制する責務を負うこととし、各レベルでの厳格な文民統制の制度を採用しております。
新ガイドラインの下で行われる取組が各々の憲法及びその時々において適用のある法令に従うことは当然であり、また、本法案についても、平和安全法制についても、その中身については国会において適切に御審議いただく所存です。したがって、安倍総理や私が、国会を軽視し、文民統制を破っているとの御指摘は当たりません。
最後に、政治が暴走する蓋然性についてのお尋ねがありました。
我が国においては、自衛隊が国民の意思によって運用、整備されることを確保するため、各レベルでの厳格な文民統制の制度を採用しており、国民を代表する国会が、自衛官の定数、主要組織などを法律、予算の形で議決し、また防衛出動などの承認を行うこととされております。さらに、憲法において、議院内閣制の下、国会が内閣監督の機能を果たすことが規定をされております。
このように、我が国においては、国民を代表する国会が自衛隊を統制しており、御指摘のようないわゆる政治の暴走は想定されません。本法案においても、平和安全法制についても、その中身について国会において適切に御審議をしていただく所存でございます。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸田文雄君) 平和安全法制と新ガイドラインとの関係についてお尋ねがありました。
新ガイドラインに明記されているとおり、新ガイドラインの下で行われる取組は、自国の憲法及びその時々において適用のある法令に従って行われるものです。
そのことを前提として、新ガイドラインのうち、例えば日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動の部分で記述された日米協力については、平和安全法制に係る法案が御承認いただける場合に実施可能となるものです。
いずれにせよ、平和安全法制については今後国会での御議論に委ねることとなりますが、政府として、広く国民や与野党に御理解いただき、幅広い支持が得られるよう、分かりやすく丁寧な説明を心掛けてまいります。
なお、新ガイドラインの下での取組は、その時々において適用のある法令に従って行われるものであり、今後、旧ガイドラインに自動的に戻るということはありません。(拍手)
まず初めに、戦後我が国の防衛政策を一貫して支えてきた文民統制についてお尋ねします。
一九九六年、私が衆議院議員に初当選し、最初に取り組んだのが対人地雷全面禁止条約、いわゆるオタワ条約への日本の参加に向けた働きかけでした。NGO出身議員として、私は、「地雷ではなく花をください」という絵本を国会議員に買っていただき、一冊千五百円の本から六百円の利益を地雷除去に充てる活動を始めるとともに、超党派の対人地雷全面禁止推進議員連盟を立ち上げました。
半年間で数千冊が売れ、野党各党の議員は続々賛同してくれたものの、与党自民党の議員は、対人地雷なくして日本列島は守れないとの政府の政策から、誰も参加できませんでした。そんな中、自民党から最初に参加してくれたのが自民党国防部会長であった現在の防衛大臣、中谷元議員でした。陸上自衛隊の出身で地雷担当であった中谷議員は、PKOで行ったカンボジアで女性や子供など市民の被害の悲惨さを見て、対人地雷の残虐性に大きな刺激を受けたのです。
中谷議員に続いて多くの自民党議員も加わり、小坂憲次議員を会長とする議員連盟が三百八十八人まで広がりました。この間、橋本龍太郎総理が指示した対人地雷に代わる代替兵器の開発を防衛庁の制服組が受け入れ、最後まで抵抗した内局を説得してくれました。一九九七年十二月、小渕恵三外務大臣がオタワ条約に調印したのです。
私は、この経験から、現場の状況を知る制服組は、政治の指示さえ的確であれば柔軟に政策転換を果たす能力があることを実感しました。また、私自身、東日本大震災やスマトラ地震での自衛隊の人道援助活動や、ハイチやネパールでのPKO活動の現場を見てきました。自衛官の皆さんの不眠不休の活躍ぶりは筆舌に尽くせません。
そこで、中谷大臣に、オタワ条約の経験も踏まえ、制服組の能力と適応性についての見解を伺います。
次に、我が国の文民統制、シビリアンコントロール下における防衛省内の文官統制あるいは文官優位性と呼ばれる背広組と制服組の関係について伺います。
文官統制は、別名ビューロクラティックコントロールとも言われ、内局の過度な介入をイビリアンコントロールとやゆする人もおります。
衆議院の質疑では、文官統制あるいは文官優位性に関する歴代総理の答弁が引用されました。佐藤栄作元総理の、自衛隊のシビリアンコントロールは、国会の統制、内閣の統制、防衛庁内部における文官統制、及び国防会議の統制による四つの面から構成されているという答弁、中曽根康弘元総理の防衛庁長官時代における、私は内局による統制というのは必要だろうと思っているんですとの答弁や、竹下登総理の答弁もあります。しかし、中谷大臣は、総理の方々の答弁については全く答えず、これら総理による文民統制との言葉尻を引用して文官統制はなかったと強弁しています。
答弁逃れをするのではなく、歴代総理の文官統制あるいは文官優位性についての具体的発言そのものの事実確認と評価について正々堂々たる答弁を求めます。
中谷大臣、そもそも文官統制や文官優位性という実態を認めなければ、この設置法第十二条を変えねばならないという立法事実が消滅するのではないですか。
同様に、外交防衛委員会における福山哲郎議員の、防衛省が行ったシミュレーションで設置法十二条を改正しなければならない問題点や具体的事象があったかとの質問に対して、特段の問題点は明らかになっていないと答えており、立法事実は存在しないのではないですか。
仮に、この設置法十二条が改められ、背広組と制服組との両方が防衛大臣を補佐する関係になった場合、軍事的見地からの答弁が求められれば制服組による国会答弁が行われるのか、お答えください。
七十年前の大戦に軍部の独走があったばかりではなく、近年も制服組の暴走が後を絶ちません。二〇〇八年には、当時の田母神航空幕僚長が、日本が侵略国家であったというのはぬれぎぬである、村山談話は言論統制の道具である、我が国は専守防衛を旨とする国防の態勢を維持しているが、防御のみを考えていては効果的な防御態勢はできない、相手国への攻撃について徹底的に考える人たちが必要であるなどと発言しました。田母神氏がこうした言動を自衛隊関係の機関誌等で頻繁に行っていたにもかかわらず、防衛省内でチェックができなかった体質が問題です。
省内のチェック体制や自浄能力、さらには、こうした暴走を止める再発防止策について中谷大臣に伺います。
次に、本改正案で新設される防衛装備庁について質問します。
今回の改正では、防衛産業基盤の育成のため、防衛省が予算を獲得し、多くの契約企業や研究機関にも軍事予算が行き渡ります。これに集団的自衛権行使を含む新たな安保法制の整備が加わると、軍事的組織と兵器産業の結合関係を意味する軍産複合体形成に至ると思われますが、中谷大臣の見解を伺います。
軍産複合体に早くから警鐘を鳴らしたのは、軍人であるアイゼンハワー・アメリカ大統領で、一九六一年に、軍産複合体が我々の自由や民主主義的な手続を脅かすことのないようにしなければならないと述べています。その意味でも、防衛装備庁による憲法や各種法律の遵守と、高い透明性や説明責任の実行とが重要と思われますが、中谷大臣の見解を伺います。
防衛装備品等の調達には極めて高い専門性が求められます。調達に当たり、米国を始めとする外国政府や国内外の企業に対して交渉力を高め、装備品の適正価格を見極めるためには、装備品の構想から開発、運用、廃棄に至る全過程を視野に入れた、いわゆる調達のプロを育成する必要があると考えます。アメリカでは、国防取得大学、DAUなどで専門的な教育を行っているが、防衛省はどのように調達のプロを養成していくのか、中谷大臣に伺います。
我が国の防衛調達行政は、残念ながら過去に談合事件、背任事件を繰り返しています。衆議院の質疑において、防衛調達に関する不祥事の類型として、職員による背任事案、企業と職員による談合、企業による過大請求事案を挙げ、その原因として、随意契約が多い、閉鎖的な人事管理、法令遵守意識の欠如、企業の赤字回避対策を挙げています。こうした類型と原因に対してどのような対策を講じているのか、類型別に中谷大臣にお答えいただきたい。
次に、防衛装備庁の新設に伴う技術研究本部の廃止についてお伺いします。
自衛隊が使用する車両、船舶、航空機、誘導武器や、重点的に取り組む統合先進技術に関する研究開発を行う技術研究本部は、平成二十六年度で約千五百億円の年間予算があります。防衛産業にとっては、技術研究本部と装備品の共同開発を行えば、研究開発費が確保できる上、受注も確実となるなどのメリットがあります。しかし、それゆえ、過去には技術研究本部と防衛産業との癒着が問題になりました。
本改正案により、技術研究本部が防衛装備庁に吸収された場合、規模が増大する研究開発費の使途が不透明になるのではないかとの懸念があります。研究開発費の透明性、公平性を高めるための政府の方策について伺います。
次に、新日米ガイドラインと安全保障法制との関係について岸田外務大臣に質問します。
五月十二日の外交防衛委員会において、私が、安保法制が国会で否決された場合、新ガイドラインはどうなるのかと質問したのに対し、岸田大臣は、我が国の現段階の法令にガイドラインが従うということ、これは当然であると答弁しました。
ということは、安保法制が国会で否決された場合、ガイドラインの立て付けからして、新ガイドラインから四月二十七日以前の前のガイドラインに自動的に戻るのか、それとも、新ガイドラインを維持しつつ、現段階の法令に従って、活用できない部分を除外するのか、また、それはどの部分に当たるのか、明確な答弁を求めます。
平成二十四年十二月の第二次安倍内閣発足後、国家安全保障局、NSCの設置、新防衛大綱、中期防の策定、特定秘密保護法の成立、武器輸出三原則の見直し、新日米ガイドラインの策定、また、五月十五日の集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法案の提出と、我が国が戦後歩んできた平和国家の歩みを根本的に変更する暴走が加速しています。
しかも、これらの決定プロセスは、強行採決や憲法の解釈変更といった、国民の代表である国会の無視や軽視の連続です。その極め付けが、国会の審議を経ていない安全保障法制と集団的自衛権行使の運用を定めたガイドラインを日米両国政府間で合意したこと、そして、提出すらされていない安全保障法制の夏までの実現を安倍総理が米国の議会で約束してしまったことです。
中谷防衛大臣は、私は、国会というのは最大のシビリアンコントロールである、原点であると思っていますと発言しています。また、文民統制の原点が憲法九条であると答弁しておりますが、安倍総理も中谷大臣も、この文民統制を自ら破ってしまったのではないですか。その中谷大臣に防衛省設置法案を提案して文民統制の在り方を問う資格はないと思いますが、答弁を求めます。
二〇〇八年、田母神前空幕長が参考人として出席した参議院外交防衛委員会の冒頭で、北澤俊美委員長は以下のように発言しました。昭和の時代に、文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い命が失われました。国家が存亡のふちに立った最初の一歩は、政府の方針に従わない軍人の出現と、その軍人を統制できなかった政府・議会の弱体化でありました。
また、同じ二〇〇八年の北京オリンピックに、当時戦争状態にあったロシアとグルジアの射撃競技の女性選手たちが一緒に出場し、表彰式でメダルを受け取った後、抱き合ってお互いの健闘をたたえ合い、次のように述べました。戦争を起こすのも戦争を止めるのも政治家だと。幾ら文民統制を厳格に運用しても、政治が暴走してしまっては意味がないということです。
例えば、海外で自衛隊による歯止めのない武力行使を推進する国のトップが君臨し、その下で過去の戦争責任を否定する制服トップが出現する。また、同じ時期に、その同盟国に、大量破壊兵器がないにもかかわらず戦争を仕掛けるような大統領が出現することの蓋然性、すなわち、こうしたトリオがトップを占めると暴走が止められない蓋然性を中谷大臣はどう想定しますか。
恐らく、良識ある自民党や公明党の議員の方々も内心は懸念している、そうした蓋然性を想定せずに今回の法改正や安全保障法制を推進することが本当に日本の安全と平和を守ることにつながるとお考えか、真摯にお答えいただきたい。
かつて、自民党国防部会長でありながら対人地雷禁止の英断を下したように、今、日本国民と自衛隊員とその家族の命と安全を守るために政策転換を行う英断のお気持ちがないかをただして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中谷元君登壇、拍手〕
○国務大臣(中谷元君) 藤田議員にお答えいたします。
まず、自衛官の能力と適応性についてお尋ねがありました。
防衛省においては、防衛大臣が的確な判断を行うため、官房長及び局長による政策的見地からの大臣補佐と各幕僚長による軍事専門的見地からの大臣補佐が、言わば車の両輪としてバランスよく行われることを確保しております。
御指摘のオタワ条約への参加などの課題においても、官房長及び局長による大臣補佐と各幕僚長による大臣補佐とが適切に連携してなされたものと承知しており、また、東日本大震災等への対応においても、現場における自衛官の活躍はもとより、各幕僚長は官房長及び局長とともに適切に大臣補佐を行ったものと承知をいたしております。
今後とも、文民統制の主体である防衛大臣として、自衛官の有する軍事専門的知見を生かしつつ、防衛省・自衛隊に関わる様々な課題へ的確に対応してまいります。
次に、歴代総理大臣の文官統制、文官優位性に関する発言についての事実確認と評価についてお尋ねがありました。
文民統制とは、民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味するものであり、文民統制における内部部局の文官の役割は、防衛大臣が文民統制を行う際の補佐です。防衛省設置法第十二条は、官房長及び局長が防衛大臣を補佐する旨を明確に規定をしています。
一般に、補佐の意味は、部下が上司を助けることであり、他人の行為の消極的な制限又は禁止、あるいは積極的な下命という意味である統制を補佐者として行うことはできません。
また、佐藤総理大臣も、昭和四十七年三月十六日の参議院内閣委員会において、文民統制は政治の優先である旨答弁しており、中曽根防衛庁長官も、昭和四十五年五月十二日の参議院内閣委員会において、文民優位とは政治家や国会が軍事を掌握することである旨答弁しております。さらに、竹下内閣総理大臣も、昭和六十三年二月二十三日の衆議院予算委員会において、防衛政策を立案する際に文官と自衛官が話し合う旨答弁しています。
こうしたことを踏まえれば、政府として文官が部隊を統制するなどの文官統制の考え方は取っていないことは明らかであり、御指摘の過去の答弁についても、内部部局の文官の補佐を受けて行われる大臣による文民統制の趣旨であると理解されます。
このように、これまでの質疑においても、私は、過去の様々な答弁等を踏まえて御指摘の答弁の趣旨についてお答えをしてきたところであり、私が、御指摘の答弁については全く答えず、文官統制はなかったと強弁しているとの御指摘は全く当たらないものと考えます。
次に、防衛省設置法第十二条の改正に係る立法事実についてお尋ねがありました。
防衛省設置法第十二条は、官房長及び局長による防衛大臣の補佐に係る規定であり、いわゆる文官統制や文官優位を定めたものではありません。また、官房長及び局長による政策的見地からの大臣補佐と各幕僚長による軍事専門的見地からの大臣補佐の調整、吻合という同条の趣旨を変更する必要性が生じているわけではありません。
他方、今般、防衛省改革の一環として、統合幕僚監部の改編や防衛装備庁の新設を予定しており、防衛省設置法第十二条についても、従来の趣旨を変更しないままで新たな組織構成に適切に対応した規定とする必要があります。
具体的には、大臣補佐の主体に防衛装備庁長官を加えること、政策的見地からの大臣補佐の対象となる事項について限定的に掲げている現行規定を改め、当該補佐が防衛省の所掌事務全般にわたることを明確化すること、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐の調整、吻合という趣旨をより明確化することが必要であるため、同条を改正するものであります。
次に、防衛省設置法第十二条の改正と自衛官の国会答弁との関係についてお尋ねがありました。
防衛省設置法第十二条の趣旨は、官房長及び局長による大臣の補佐と各幕僚長による大臣補佐が、言わば車の両輪としてバランスよく行われることを確保するものであり、今般の改正によってもその趣旨は変わりません。自衛官の国会答弁の必要性については、あくまで国会において御判断される事項であると考えます。
その上で申し上げれば、各幕僚長を始めとする自衛官は、引き続き防衛大臣を軍事専門的見地から補佐する者として部隊運用等の隊務に専念すべきであることから、各自衛隊の隊務に関する国会答弁についても、従前と同じく、官房長や局長に、また改編後の統合幕僚監部にあっては、運用政策総括官といった文官に行わせる方針であります。
次に、田母神元航空幕僚長に係る事案を踏まえた防衛省内でのチェック体制等についてお尋ねがありました。
防衛省内のチェック体制については、同事案を踏まえ、大臣通達等を発出し、隊員が部外へ意見発表を行う際、職務上の上級者に文書で届け出る内容を明確化するなど、適切な手続を取るように周知徹底を図っております。
また、自浄能力については、高級幹部としての自覚を徹底させるための将官への昇任時における研修の実施や、適切な任命だけでなく、幹部自衛官の視野を広げるため、自己研さんについても適切に指導しています。
現在、これらの取組を再発防止策として実施しているところであり、国民の更なる信頼を得られるよう引き続き努力をしてまいります。
次に、防衛装備庁の設置や平和安全法制の整備が軍産複合体の形成につながるのではないかとのお尋ねがありました。
防衛装備庁は、防衛装備品の開発、生産のための基盤の強化を図りつつ、研究開発や調達の適正かつ効率的な遂行を任務としています。これは、我が国を取り巻く厳しい財政事情や、防衛装備品の高度化、複雑化といった防衛装備品を取り巻く環境の変化に適正かつ効率的に対応することを目的とするものです。
また、平和安全法制の整備は、国民の命と平和な暮らしを守り抜くとともに、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献することを目的としています。
自衛隊の装備については、一昨年末に決定した防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づき、着実に整備を行っているところであり、今回の法改正や平和安全法制の整備によってこうした防衛力整備の仕組みを見直すことは考えておりません。
以上から、これらの施策が軍産複合体の形成に至るとの御指摘は当たらないと考えております。
次に、防衛装備庁における法令遵守や説明責任についてお尋ねがありました。
議員の御指摘のとおり、防衛装備庁の新設に当たっては、各種法令の遵守や高い透明性の確保、説明責任の実行が重要だと考えております。
このため、まず第一に、監察・監査機能の強化を図っていくこととしております。第二に、教育部門の充実による職員への法令遵守教育の徹底を図ることとしております。第三に、装備品のライフサイクルを通じた一元的かつ一貫した管理を通じ、コスト管理や適正な取得方式の決定を行うことで、装備品の取得に関するより一層の透明性を確保し、説明責任を果たしてまいります。
次に、防衛装備品等の調達プロの養成についてお尋ねがありました。
防衛装備庁では、高い専門性を有するとともに、バランスの取れた人材の養成が必要となります。そのため、職員のキャリアパス形成の一環として、調達の制度やプロジェクト管理の手法など、装備品の取得に関する教育や研修を実施することにより、専門的な知識に通じたプロフェッショナルを養成するため、教育部門の充実にも努めてまいります。
次に、防衛調達をめぐる不祥事の再発防止策についてお尋ねがありました。
防衛省としては、防衛装備をめぐる不祥事を踏まえ、事案に応じ原因を分析し、対策を講じてまいりました。
具体的には、職員による背任事案を受け、相互牽制が働く組織体制の整備、防衛調達審議会の設置、随意契約の透明性の向上、職員の法令遵守の強化等を図ってまいりました。また、企業と職員による談合事案を受け、閉鎖的な人事管理体制の見直し、防衛監察本部の設置、法令遵守教育の徹底を図ってまいりました。さらに、企業による過大請求事案を受け、違約金の見直し、抜き打ち調査の導入、企業の法令遵守の強化、契約制度の見直し等を図ってまいりました。
防衛装備庁の設置に当たっても、過去の教訓を真摯に省み、こうした再発防止策を引き続き厳格に実施してまいります。
次に、防衛装備庁における研究開発費の透明性、公正性を高めるための方策についてお尋ねがありました。
技術研究本部においては、陸自UHX事案の教訓、反省を踏まえ、これまでも事業者との接触の適正化を徹底するとともに、企業からの情報収集の透明化などの方策を講じてまいりました。
防衛装備庁においても、これらの方策を引き続き厳格に実施するとともに、監察・監査機能の強化や教育部門の充実による法令遵守教育の徹底といった措置により、業務の一層の透明性、公正性を確保してまいります。
次に、文民統制における国会の重要性についてお尋ねがありました。
文民統制とは、民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味するものであり、我が国においても、自衛隊が国民の意思によって整備、運用されることを確保するため、国民を代表する国会や、国会に対して連帯して責任を負う内閣が自衛隊を統制する責務を負うこととし、各レベルでの厳格な文民統制の制度を採用しております。
新ガイドラインの下で行われる取組が各々の憲法及びその時々において適用のある法令に従うことは当然であり、また、本法案についても、平和安全法制についても、その中身については国会において適切に御審議いただく所存です。したがって、安倍総理や私が、国会を軽視し、文民統制を破っているとの御指摘は当たりません。
最後に、政治が暴走する蓋然性についてのお尋ねがありました。
我が国においては、自衛隊が国民の意思によって運用、整備されることを確保するため、各レベルでの厳格な文民統制の制度を採用しており、国民を代表する国会が、自衛官の定数、主要組織などを法律、予算の形で議決し、また防衛出動などの承認を行うこととされております。さらに、憲法において、議院内閣制の下、国会が内閣監督の機能を果たすことが規定をされております。
このように、我が国においては、国民を代表する国会が自衛隊を統制しており、御指摘のようないわゆる政治の暴走は想定されません。本法案においても、平和安全法制についても、その中身について国会において適切に御審議をしていただく所存でございます。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸田文雄君) 平和安全法制と新ガイドラインとの関係についてお尋ねがありました。
新ガイドラインに明記されているとおり、新ガイドラインの下で行われる取組は、自国の憲法及びその時々において適用のある法令に従って行われるものです。
そのことを前提として、新ガイドラインのうち、例えば日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動の部分で記述された日米協力については、平和安全法制に係る法案が御承認いただける場合に実施可能となるものです。
いずれにせよ、平和安全法制については今後国会での御議論に委ねることとなりますが、政府として、広く国民や与野党に御理解いただき、幅広い支持が得られるよう、分かりやすく丁寧な説明を心掛けてまいります。
なお、新ガイドラインの下での取組は、その時々において適用のある法令に従って行われるものであり、今後、旧ガイドラインに自動的に戻るということはありません。(拍手)
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