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「慰安婦」問題に関する質問主意書に対する答弁書2014年05月20日

活動報告

「慰安婦」問題に関する質問主意書に対する答弁書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第九七号

内閣参質一八六第九七号
  平成二十六年五月二十日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 山 崎 正 昭 殿

参議院議員藤田幸久君提出「慰安婦」問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤田幸久君提出「慰安婦」問題に関する質問に対する答弁書

一について

 稲田国務大臣より、平成二十五年五月二十四日の記者会見において、お尋ねのような発言があったことは承知しているが、政治家個人としてのものであり、政府としてお答えする立場にはない。

二から五まで及び七について

 慰安婦問題については、政府としては、これまで、関係省庁において誠実に調査を行い、平成四年七月六日と平成五年八月四日の二度にわたり、その調査結果(以下「調査結果」という。)を発表している。調査結果は、政府として全力を挙げて誠実に調査した結果を全体的に取りまとめたものであり、調査結果において、慰安婦や慰安所の実態が明らかになったが、これらの法規上の位置付けや御指摘の「娼妓取締規則」におけるこれらの取扱いについては明らかになっておらず、これらに対して御指摘の「娼妓取締規則」等が適用されていたことを前提とするお尋ねについてお答えすることは困難である。

六について

 御指摘の「慰安婦制度」の「公表」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

八について

 慰安婦問題の調査については、二から五まで及び七についてで述べたとおりであるが、調査結果において、御指摘の「國外移送誘拐被告事件に関する長崎地方裁判所刑事部昭和十一年二月十四日判決」に係る判決書、「控訴審長崎控訴院第一刑事部昭和十一年九月二十八日判決」に係る判決書及び「同上告審の大審院判決(昭和十二年三月五日第四刑事部)」に係る判決書を入手したことは確認できない。
 また、長崎地方検察庁において現在保存されているこれらの判決に係る判決書の内容を確認したところ、それぞれの要旨は、被告人ら十名が、雇入れに係る婦女をして中華民国上海駐屯の帝国海軍軍人を顧客として醜業に従事させる営業のための婦女雇入れに際して専ら醜業に従事するものであることの情を秘し単に女給又は女中と欺罔して勧説誘惑して上海に移送することを共謀し、昭和七年、長崎市内等において、十五名の婦女に対し、行き先は食堂であるなどと虚言を構えて誘惑するなどし、長崎港出帆の船に乗船させて誘拐し、上海に上陸させて、もって被拐取者を帝国外に移送したことを理由に、被告人三名を各懲役三年六月に、被告人二名を各懲役二年六月に、被告人二名を各懲役二年に、被告人三名を各懲役一年六月に処するとともに、懲役一年六月に処する被告人三名に対しては、三年間その刑の執行を猶予するというもの、長崎地方裁判所が懲役三年六月に処した被告人三名を各懲役二年六月に、同裁判所が懲役二年六月に処した被告人二名及び懲役二年に処した被告人二名を各懲役二年に処し、同裁判所が懲役一年六月に処するとともに三年間その刑の執行を猶予した被告人一名を懲役一年六月に処するとともに三年間その刑の執行を猶予するというもの及び上告はいずれも棄却するというものであった。

九について

 明治四十年に制定された刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百二十六条第一項は、昭和二十二年に改正されるまで、「帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス」と規定し、同条第二項は、同年に改正されるまで、「帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買シ又ハ被拐取者若クハ被売者ヲ帝国外ニ移送シタル者亦同シ」と規定していた。
 所在国外移送目的略取及び誘拐罪については、刑法等の一部を改正する法律(平成十七年法律第六十六号)による刑法の改正後、同法第二百二十六条が、「所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。」と規定している。
 お尋ねの「質的に異なる」の趣旨が必ずしも明らかではないが、所在国外移送目的略取及び誘拐罪については、日本国内から日本国外に移送する目的に限らず、人が所在する国からその国外に移送する目的で、その人を略取し、又は誘拐した者を罰する旨を規定している点で、大日本帝国憲法下の日本国内から日本国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者を罰する旨を規定していた前記の刑法第二百二十六条第一項の罪とは構成要件が異なる。