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参議院本会議における藤田幸久の質疑議事録2018年06月01日

活動報告

2018年06月01日

参議院本会議における藤田幸久の質疑議事録

○議長(伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。藤田幸久君。
   〔藤田幸久君登壇、拍手〕
○藤田幸久君 国民民主党・新緑風会の藤田幸久です。
 私は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求むる件について質問いたします。
 私は、いよいよ安倍晋三総理の終えんのときが到来したと感じております。歴史家は、安倍内閣を、国会審議と行政の基本である公文書を隠蔽、改ざんし、法治主義から人治主義、つまり身びいき主義へと政治手法を改悪し、解釈で憲法を変えるという禁じ手を行使して、民主主義と行政に対する国民の信頼を失ったという評価を下すと思います。
 この政治手法の原点が、自民党が政権に復帰した二〇一二年の総選挙でした。当時の自民党の公約は、聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加に反対でした。ある候補は、うそつかない、TPP断固反対というポスターで選挙を戦い、後に農水大臣に就任しました。安倍総理は、その数か月後にTPP加盟を決定しました。安倍内閣のうその始まりです。
 安倍総理の答弁に対する茨城新聞の投書があります。昔からうそは泥棒の始まりと言われ、うそをつく人は世間から相手にされなくなる。まして一国一城のあるじが国会でうそを並べては、教育上も決して良くない。これは国民多くの思いと思います。
 昨日、大阪地検は、佐川元財務省理財局長の不起訴を決定しました。検察までも政治にそんたくしているといった疑念を国民に与えないことを望みます。
 とはいえ、森友、加計問題は、国民にとっては余り直接的な被害者意識を持てない問題であるのに対し、今回の条約、いわゆるTPP11は、国民生活に大きな打撃を与える大問題です。
 その本質は、グローバル企業の一部の経営者だけがもうかり、賃金が下がり、失業が増え、国家主権が侵害され、食の安全が脅かされることです。この言葉は、二年前にアメリカ国民と全ての大統領候補がTPPに反対した理由でした。
 以下、質問します。
 TPP12からアメリカが脱退後、日本はTPP11を先頭に立って推進してきました。TPP11発効後、日本政府は、日米FTAなどによって米国からのより厳しい要件を受け入れることを想定してきたのではないですか。つまり、日本の農業などがTPP12以上の打撃を受けることは想定済みではないですか。河野外務大臣の答弁を求めます。
 八千ページに及ぶこの協定全体の内容は、保護主義と闘う自由貿易協定というよりも、投資家保護協定ではないですか。また、アメリカのハッチ上院議員が製薬会社から五億円の献金をもらい、ジェネリック医薬品を作れないように新薬のデータ保護の二十年延長を推進したと言われていることを御存じですか。まさにお友達への便宜供与です。河野大臣、併せてお答えください。
 国家戦略特区に象徴される規制改革が加計学園に便宜供与する国家の私物化と言われるのに対し、TPP型協定に象徴される自由貿易は、国境を越えたグローバル企業に便宜供与する世界の私物化ではないですか。答弁を求めます。
 国家よりも企業を優先するのがISDS条項です。TPP十一か国中七か国がISDSについて除外ないし慎重な立場を取っています。トランプ政権はISDSを否定する方向にかじを切ったと言われ、日欧EPAでは、EUはISDSを死んだものとさえ述べています。言わば死に体のISDSになぜ日本だけが固執するのでしょうか。答弁ください。
 こうしたグローバル企業の窓口役が規制改革推進会議ではありませんか。その対極とも言える共助・共生システムの共同体である生協、農協、漁協などを既得権益、岩盤規制と攻撃し、ドリルで壊して市場を奪って自らの既得権益にしようとするウォール街は、郵貯のマネーに続き、貯金、共済のJAマネーにも手を伸ばそうとしています。こうしたマネーゲームの動きが日本の国民を幸せにすると本当にお考えですか。外務大臣、お答えください。
 TPP12で米国市場へのアクセスとの引換えで受け入れていた条項を凍結したいという項目を各国が八十も挙げたのに対し、日本は何も提出しませんでした。つまり、アメリカの要求を全て受け入れるという意思表示ではないですか。外務大臣、お答えください。
 TPP12で、日本は、農産物の関税撤廃で過去最悪の約束を受け入れました。日本政府がTPP11で凍結要求をしなかったことで、オーストラリア、ニュージーランドなどは、米国分を含めて日本が譲歩した乳製品の輸入枠を全部使えることになり、国内農業は更に大きな打撃を被ると思われますが、大臣の認識を伺います。
 国益として乳製品関税を死守したカナダを見習うべきと思いますが、いかがですか。
 酪農はトリプルパンチと言われています。日欧EPAとTPP11の市場開放に加えて、改正畜安法、畜産経営の安定に関する法律によって、バター不足の理由とされた酪農協の弱体化が進められています。EUでは牛乳生産者団体の組織化と販売契約の明確化による取引交渉力の強化が進められているのとは真逆の対応と思われますが、農水大臣の答弁を求めます。
 牛乳生産の減少が加速しており、バター不足の解消どころか、牛乳が消える事態が生じることになるのではありませんか。農水大臣の現状認識と対策を求めます。
 消費者は、欧州産チーズが安くなると言っていると国産牛乳が飲めなくなる危機を認識すべきです。酪農版マルキンといった所得の下支え対策も必要と思われますが、答弁を求めます。
 グローバル企業に屈したのが種子法の廃止です。米や麦の優良な種を国と県が安く提供する種子法を廃止し、種の情報をグローバル種子企業に差し出すことにしたのです。これら企業は、払下げで手に入れた種をベースに遺伝子組換え種子にして特許化して独占するため、農家はそれを買い続けない限り米の生産が継続できなくなり、価格もつり上げられます。この重大な危機にどう対応するのか、答弁を求めます。
 製薬会社に有利な特許期間の延長の規定やバイオ医薬品の保護データ期間などの条項が凍結されたことは歓迎されますが、あくまでアメリカ復帰までの暫定措置にすぎません。長期的なジェネリック医薬品取得に向けた対策について、厚生労働大臣に伺います。
 日本の自動車産業の主要輸出国はアメリカです。しかし、そもそも既に二・五%という低い関税率で、十五年後に初めて関税を引き下げ、二十五年も掛けてゼロになるものです。アメリカ抜きのTPP11で、日本の自動車、半導体、鉄鋼等の主要輸出産業はどれほどの輸出増を見込んでいるのか、どの産業が何年後にどれ程度の恩恵を受けるのか、経産大臣は数値を示してお答えください。
 政府は、テレビなどで関税撤廃による消費者利益の大きさを強調する一方で、生産者の損失に関する政府試算を過小評価している印象を禁じ得ません。農水大臣の答弁を求めます。
 農産物輸出国は対日輸出の大幅増加を見込んでおり、政府試算の妥当性には大きな疑問があります。豚肉については、カナダだけで日本の生産減少見込額の二倍以上、牛肉についてもほぼ見込額に相当します。日本の国内生産の減少を政府試算の範囲内とすることは無理ではないですか。答弁を求めます。
 国民の命、健康、生活、雇用、食料を守ることが国政の最大の課題ではないでしょうか。とりわけ、どんなときにも安全、安心な食料や医療を安定的に国民に供給することです。世界が不安定な状況を増している今、国家安全保障の要として、国として農林水産業を支え、食料自給率を維持するのは、独立国家としての最低条件ではないでしょうか。農水大臣の答弁を求めます。
 私は根っこからの自由貿易論者でありますが、TPP11が、トランプ大統領などが指摘する、グローバル企業の一部の経営者だけがもうかり、賃金が下がり、失業が増え、国家主義が侵害され、食の安全が脅かされるものであるならば反対せざるを得ないことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(河野太郎君) TPP11発効後の国内農業への影響についてのお尋ねがありました。
 我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、様々な機会を捉え、米側に対して説明してきました。その立場を踏まえ、引き続き、米国との議論に臨んでまいります。
 我が国としては、引き続き、自由貿易の旗頭として、自由で公正なルールに基づく経済圏を世界に広げていく考えであり、いかなる国とも、農業分野を含め、国益に反するような合意を行うつもりはありません。
 新薬のデータ保護期間及びTPP11協定の意義についてのお尋ねがありました。
 自由で公正な投資ルールを維持発展させていくことは、世界経済、ひいては日本経済全体の成長につながると考えます。こうした考え方の下、我が国は、投資家の保護に関するルールを含む経済連携や投資協定を積極的に推進してきており、TPP11は投資家のみを保護するものとの御指摘は当たらないと考えます。
 また、医薬品のデータ保護期間については、交渉経緯を承知しているかを含めお答えすることは差し控えますが、TPP12協定においては、生物製剤とそれ以外の医薬品の保護期間について、それぞれ八年間及び五年間と規定されております。これは、新薬の開発の促進、新薬の安全性の確保、医薬品への迅速なアクセスのバランスの観点から、柔軟性のある適切な水準の規範であると考えております。
 さらに、自由貿易はグローバル企業のみを利するものではないかとの御指摘ですが、例えば、TPP協定では、中小企業章を設けるなど、中小企業及び地方産業のグローバルサプライチェーンへの参加を積極的に後押しする規定が導入されており、御指摘は当たらないと考えます。
 ISDSについてのお尋ねがありました。
 ISDS制度は、投資家にとって、海外の投資先の国におけるビジネスへのリスクを軽減できるツールであり、海外投資を行う日本企業を保護する上で有効な制度であると考えています。また、ISDS条項は、公共の福祉に係る正当な目的のために、必要かつ合理的な規制措置を差別的でない態様で講ずることを妨げるものではありません。
 我が国としては、ISDS条項が有する意義を踏まえて、投資家の保護と国家の規制権限との適切なバランスの確保等に努めつつ、我が国が締結する投資関連協定にISDS条項が盛り込まれるように取り組んでいきます。その上で、ISDSへの懸念についても耳を傾けつつ、ISDS改革に関する議論にも建設的に貢献していく考えです。
 TPPと規制改革についてのお尋ねがありました。
 TPP11協定の投資章の規定は、投資受入れ国が正当な目的のために、必要かつ合理的な規制措置を差別的でない態様で講ずることを妨げるものではなく、このことは投資章の複数の規定において確認されています。
 また、我が国は、TPP11協定等の投資関連協定において必要な例外規定を置くなど、国内法との整合性を確保しています。また、ISDS手続で仲裁廷が裁定で命じることができるのは損害賠償又は原状回復のみで、国内法の改正を求めることはできません。よって、TPP協定によって我が国の生協、農協、漁協といった仕組みが影響を受けることは想定されません。
 日本が凍結項目を提出しなかったことについてのお尋ねがありました。
 我が国としては、今回凍結されることとなった二十二の項目全てを含め、TPP12協定全体について、幅広い分野において二十一世紀型の自由で公正なルールを作り出すものであり、今後の経済連携協定のスタンダードになるものと考えています。このような考えに基づき、我が国から凍結提案は行いませんでした。
 このように、我が国がアメリカの要求を全て受け入れる意思表示をしたものではありません。
 TPP11協定における乳製品の関税割当て枠についてのお尋ねがありました。
 TPP11においては、元々のTPP12の特徴であるハイスタンダードを維持するという観点から、米国不在であっても協定の内容自体は維持した上で、ごく一部のルール分野の適用の停止のみを行うことで合意したものです。
 御質問の乳製品を含むいわゆるTPPワイドの関税割当てについては、カナダなど、我が国と同じ制度を持っている状況にある国が幾つかある中で、現時点では修正を行わず、発効後必要と判断した時点で、TPP11協定第六条に従い、見直しを行うということで合意したものです。
 政府としては、総合的なTPP等関連政策大綱を踏まえ、農家の皆さんの不安や懸念にもしっかり向き合い、十分な対策を講じてまいります。(拍手)
   〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕
○国務大臣(齋藤健君) 藤田議員の御質問にお答えをいたします。
 改正畜産経営安定法の趣旨及び生乳生産量の減少に対する現状認識と酪農対策についてのお尋ねがございました。
 近年、飲用牛乳需要が減少傾向にある一方で、乳製品の消費は今後も増加が見込まれておりまして、酪農家が消費者ニーズに応えて創意工夫を生かせる環境の整備が重要な課題であると考えております。
 こうしたことを踏まえまして、改正畜産経営安定法により、加工原料乳生産者補給金の交付対象を拡大し、指定生乳生産者団体が条件不利地域における集送乳を今後も安定的かつ確実に行う体制を整備したところでございます。
 また、近年、生乳生産量は減少傾向にあるものの、平成二十九年度の二歳未満の乳用牛の飼養頭数が前年に比べて増加するなど、生産基盤の回復の兆しが見え始めたところであります。
 農林水産省としては、この動きを確固たるものとし、農業者が安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、収益力、生産基盤の強化を進めるとともに、経営安定対策において、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金の対象に追加するなどの見直しを協定発効に先立って実施をしたところでございます。
 引き続き、農業者の不安や懸念にしっかり向き合い、新たな国際環境においても消費者への牛乳、乳製品の安定供給が図られるよう、万全の対策を講じてまいります。
 種子法の廃止についてのお尋ねがございました。
 主要農作物種子法は、戦後、食糧増産のために制定され、全ての都道府県に種子生産の奨励を義務付けてきましたが、米の供給不足の解消や消費者ニーズの変化等を踏まえ、法律による義務付けを廃止し、民の力も活用して多様なニーズに応じた種子が供給されるよう措置したものです。
 また、一般に、大ロットで種子を販売する外資系企業は、小ロットで地域ごとの品種が必要な我が国種子市場にほとんど参入しておりません。そして、そもそも種子法には外資系企業の参入防止規定がなかったわけでありますので、種子法の廃止を機に外資系企業が種子供給を席巻することは想定されません。
 農林水産省としては、引き続き、良質な種子の安定供給のために必要な施策を責任を持って講じてまいります。
 TPP11の影響試算についてお尋ねがございました。
 TPP11の農林水産物の生産額への影響につきましては、まず、重要品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、国家貿易の維持や長期の関税削減期間等も獲得したという合意内容を踏まえて定性的な影響分析を行いました。
 その上で、それでもなお残る農林水産業者の不安を受け止め、安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき万全の対策を講じていくこととしております。
 その結果、関税削減等の影響で、価格低下によりまして約九百億円から千五百億円の生産額の減少が見込まれるものの、体質強化対策による生産コストの低減、品質向上や、経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量は維持されるものと見込んだところでございます。
 このように、TPP11の影響試算は様々な要素を考慮しながら個別品目ごとに試算を積み上げた結果であり、国内生産の減少額を意図的に過小評価しているということはございません。
 食料自給率についてのお尋ねがございました。
 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、国家の国民に対する最も基本的な責務の一つであります。世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有している中で食料の安定供給を図るためには、食料自給率目標を掲げ、国内生産の増大を図ることが重要であると認識しています。
 他方、我が国の農林水産業は、人口減少に伴うマーケットの縮小や、農林漁業者の減少、高齢化の進行、耕作放棄地の増大など、大きな曲がり角に立っていると認識しております。
 このような中、我が国の農林水産業に活力を取り戻し、魅力ある成長産業にしていくためには、消費者ニーズに応えた付加価値の高い農産物の生産、販売や、成長著しい海外マーケットの開拓を進めるとともに、農林水産業の構造改革を進めていく必要があります。
 このため、安倍内閣においては、米政策改革や輸出促進、農地集積バンクの創設など、農政全般にわたる改革を精力的に進めるとともに、林業や水産業の改革にも着手いたしました。
 今後とも、農林水産業を産業として強くするための施策を積極的に進め、食料自給率の向上と食料安全保障の確立を図ってまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕
○国務大臣(加藤勝信君) 藤田幸久議員より、医薬品のデータ保護期間等とジェネリック医薬品についてお尋ねがありました。
 米国が参加していたTPP協定では、生物製剤に八年間以上のデータ保護を与える等の規定が設けられていましたが、TPP11ではこの規定は凍結をされました。
 我が国の制度では、生物製剤を含む医薬品に実質八年間のデータ保護期間を付与しています。また、特許期間の延長規定についても既に国内措置が講じられております。このため、仮に凍結が解除されたとしても、現行の国内制度を変更する必要はなく、現状と比較してジェネリック医薬品の承認が遅れることはありません。
 厚生労働省としては、引き続きジェネリック医薬品の品質確保、そして使用促進に努めてまいります。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕
○国務大臣(茂木敏充君) 藤田議員にお答えをいたします。
 TPP11によります主要産業への効果とその時期についてお尋ねがありました。
 TPP11の経済効果については、GDP押し上げ効果が七・八兆円、四十六万人の雇用増と、大きな効果が見込まれております。この効果分析を行いました内閣府のGTAPモデルでは、個別の産業に与える影響については分析を行っておりませんが、TPP11協定では、工業製品輸出の九九・九%について関税が撤廃をされます。二〇一七年の我が国のTPP域内向けの工業製品輸出額は約九・四兆円であり、この輸出額に対して関税の撤廃効果が及ぶと考えられます。
 これらの効果が実際に生ずる時期については、一概に言えない面もありますが、日本の工業製品輸出額の約九割の関税が即時撤廃をされるなど、TPP11発効直後から大きな経済効果が見込まれると期待をいたしております。(拍手)