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  • 【2006年9月3日】

    内に強権、外に大国のロシア

    毎日新聞
    2006年9月3日

    前衆議院議員・藤田幸久

     船長を除く乗組員はようやく帰国したが、8月16日に北方四島海域で日本漁船がロシアの警備局の銃撃を受け、甲板員一人が死亡した。ロシア当局の拿捕(だほ)による死亡事件は日ソ国交回復後の半世紀で初めてのことだ。G8サミットのホストも務めた「先進民主主義国」ロシアがなぜ銃撃まで、という怒りが日本中を走った。

     プーチン政権は「内には警察国家、外には大国主義」を強めている。私は最近モスクワで、警察国家の乱暴な現場に遭遇した。それは、プーチン大統領の強権政治に反対するロシアの民主主義団体や知識人、政治家などがサミット直前の7月11日から開催した「もう一つのロシア」という国際会議でのことだ。

     初日、ホテル会議場の私の目の前で、4人の参加者が公安警察に拉致された。これを撮影したドイツ人カメラマンも拘束された。会議に向かう国会議員が何者かに殴打され、地方の参加者が空港で逮捕されたりして出席を阻まれた。それでも、全国から500人ほどが“命がけで”出席した。人権活動の母アレクセーバさんやカシヤノフ元首相などが「官僚のロシアから市民のロシアに」「無法状態のロシアから法の支配へ」などと強権政治の実体を訴えた。

     プーチン政権は近年、政府に批判的な新聞の廃刊、編集者の解雇、3大テレビ局の支配などのマスコミ弾圧を強化している。「国境なき記者団」の「プレスの自由ランキング」(04年)では、ロシアは167カ国中140位。また、「ロシア情報公開擁護財団」によると、ここ6年間に128人のジャーナリストが死亡や、行方不明となっている。ある日本人記者もロシア外務省から「政府批判の記事」の訂正を求められた。断ると「法に基いて、ビザを剥奪(はくだつ)することもできる」と脅されたという。

     また、NGO規制強化法が今年導入された。約45万のNGOが、税務当局と連邦登録局の両方への年次会計報告を義務づけられ、政府が「国益に反する」と認定すればNGOの処分も可能だ。

      こうした警察国家の手法に反外国感情が加わり、外への大国主義となっている。国民に嫌われた共産主義のソ連政府とは異なり、好景気と国民の高い支持率を誇るプーチン政権は、今後もこうした動きを加速化すると思われる。

     警察国家ロシアへの可能な対策は、ロシアの市民社会への支援である。前述の会議の前に、ロシア政府は他のG8諸国に対して「出席すれば、ロシアに対して非友好的とみなす」と圧力をかけた。しかし、それにも屈せず米国の国務次官補、英国とカナダの大使、日本の公使などが出席した。英国大使は「言論の自由や環境などに取り組むロシアのNGOを支援し、それを大使館のホームぺージに公開する」と演説した。

     各国の政府、市民、マスコミなどの連携によるこうした支援が、市民が警察国家による弾圧から生き残る「命綱」である。

     今回の拿捕事件の本質は、小泉外交が放置した北方領土問題だ。拉致問題と同様、あらゆる国際舞台で主張を展開すべきだ。一方、安全操業に関しては、両国による銃撃自制や密漁取締り協力など非公式の取り決めに代わる、本格的な合意を目指すべきだ。目先の利益追求は国益や命すら失いかねない。

     豊かになったロシアには、かつてのような援助外交は通用しない。手ごわいプーチン政権に対峙(たいじ)するには、命がけで警察国家と戦うロシア市民のような、腰の据わった対応が必要だ。ロシアが先進民主主義国としての責任を果たすように、諸外国との連携を強化すべきだ。これはロシア自身のためでもある。

     

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